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ヌーヴォー・ニヒリズム

パリに本社を構える世界的マーケティング・リサーチ会社イプソス(Ipsos)は、世界各国のトレンド調査を10年以上に亘って実施しており、先頃2025年度版のGLOBAL TRENDSを発表した。その中で新しい時代の潮流として「ヌーヴォー・ニヒリズム(新・虚無主義)」を挙げている。
世界の主要国では政治家や政治体制への不満が限界に近づき、大衆に露骨なニヒリズムが台頭、経済的ストレスによって夢の実現が長期的に阻害され、より悦楽主義的な「今を生きる」精神が溢れ 「個人主義への逃避」というトレンドが顕著に現れてきていると指摘している。民主主義の力では次々と荒廃する世界の状況を変えられないという意識の下、自分流の生き方を重視して自分だけでコントロールできるものを大切にしようという動きに繋がって来ていると分析しているのだ。同時に発表された世界の「ブランド志向調査」に各国のこうした「個人主義への逃避」レベルが見えてくるので面白い。中国人のブランド志向(信仰)は過去10年間に9%増加した結果81%と世界一高くなり、日本は逆に横這いで34%と世界最低で安定している。因みに世界平均は13%増の52%である。
ヨーロッパ圏でもブランド志向は総じて高くなっていて、フランスやイタリアもこの10年で20%以上上昇している。「世界中で個人主義への逃避が強くなりブランド志向を生んでいる」と総括されている。
日本と現代中国の間にはそもそも対極的な価値観の違いが存在するが、それだけ相互の考え方に齟齬が生じやすいということでもある。先般の高市首相の台湾有事発言を受けて、中国政府は経済制裁として“自国民”に最も人気の旅行先“日本”への渡航制限を発動した。自国内向けには日本の治安悪化を理由に挙げたが、ピンと来ないまま割を食ったのは中国の団体旅行客と中国系旅行代理店だけだったようだ。個人旅行を手配する富裕層にはほとんど影響が無く、日本経済には一過性のダメージが予想されるだけだったからである。
日本人のブランド志向の特徴として、「無印良品」「ユニクロ」「ニトリ」「ダイソー」といった究極まで無駄を省くという「侘び寂び」に通じる?発想がある。この「侘び寂び」の原点は実は宋時代の中国に日本が影響を受けた思想だが、すでに現代中国人はこれを失って久しい。そして日本人は世界と乖離した価値観を持つと理解した方がよい。
本来歴史的に近似性をもった両国だが、共産党一党支配の現代中国とは「ヌーヴォー・ニヒリズム」を常に意識しながら付き合っていく必要があるだろう。

| 25.12.26

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