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ヤンキー的消費

Hondaの「N BOX」シリーズの2013年上半期(2013年1月~6月)の販売台数が11万8,303台となり、軽四輪車新車販売台数No.1を獲得した。
2011年冬に「ニュー・ネクストニッポン・ノリモノ」のキャッチコピーで発売された「N BOX」は、軽最大級の室内長218㎝と室内高140㎝を誇る広々快適な室内空間に、ドライビングの楽しさをミックス。そのパッケージングでスズキのワゴンR、ダイハツのタントをしのぎ、自動車業界に衝撃をもたらした。Hondaの開発チームによると、彼らが研究したのは、いわゆる『ヤンキー文化』と呼ばれる地方都市の若者たちのテイストだったそうだ。Kカーの重要なユーザーである彼らが求めるデザインとは、「自転車を簡単に載せられること」だったという。最初にそれに着目していたダイハツのタントを意識して、より積み安くなったことを強調している。テレビCMでは、「クルマの床をあえて斜めにする新発想。ユニバーサルブリッジがまた一つスモールカーの世界を新しくしました。」、「いろんなものをかんたんに載せて出かけられるこの一台があなたの世界を大きく広げます。」と続く語りのあと、ユニバーサルブリッジを使って、自転車がするりと「N BOX」に吸い込まれていくシーンが圧巻だ。US版Autoblogの記者も、「日本語が分からなくても見て楽しく、思わずこの車が欲しくなる」、一見の価値ありとイチ押しするほどだった。(もちろん北米での販売は期待できないが・・・)これまでKカーは、一人1台の車として「小さくて安ければ良い」という、車が必需品の地方における需要を満たしてきた。しかしKカーをファーストカーにするマーケットにおいて、「N BOX」でHondaが本気モードになった証拠だ。
ヤンキーとはそもそも何か?上昇志向をあまり持たず年収も高くないが、地元を愛し仲間と絆を愛する新保守層のことを指すというのが定説になりつつある。今やこうしたヤンキーがリードする「ヤンキー的消費」が、日本の文化と消費を背負う一大勢力となり、日本を支えているという声もある。同級生と結婚し、地元にしっかり根をおろし、家業を継ぎ、子供の数も多く、絆LOVE、祭LOVEの保守的ライフスタイルは若い世代に広がってきている。そのマーケットのファーストカーとして「N BOX」は徹底的にマーケティングされたのだ。
大企業はこうした地元族の新しい消費をとらえきれていないとも指摘されている。長らく主役不在だった地方新保守層の消費シーンに、Honda が「N BOX」で正面から切り込んでいる。

| 13.10.25

豆乳飲料

紀文豆乳・秋冬限定テイストの「豆乳飲料焼きいも」が、さつまいもではなく「焼き芋」のネーミング効果もあってか人気だ。マロンやおしること合わせてシリーズ化されており、特に女性からの人気が高い。開発担当者の、アツアツ焼きいもと冷たい豆乳の組み合わせがあまりにもおいしかったので何とか紙パックで再現したいという思いから着手された商品だ。後味に香ばしさを感じるようにと、原料には本物の焼きいもを使用しているそうだ。
豆腐自体も、スイーツ感覚で食べられる新商品が次々に売り出されている。さとの雪食品より発売された「リラックマごゆるり絹とうふ」は、腸内のビフィズス菌や乳酸菌を活性化させる働きのある"オリゴ糖"を配合した、ほんのりとした甘みのある豆腐だ。男前豆腐から販売された「チョッパー豆腐」や「特濃ケンちゃん」は、蜂蜜、きな粉と黒蜜、メープルシロップ等などと合わせて、スイーツとして様々な食べ方が提案されている。 日本人の食品開発にかける情熱には本当に敬意を表したい。
しかし、そうしたスイーツ挑戦をしている豆腐だが、生産量は145万トン程度の横ばいで推移している。総務省の家計調査では、2012年の2人以上世帯が豆腐を購入する支出額は平均5,614円と10年前の2割減で、豆腐離れが進んでいる。一方、豆乳生産料は2012年には25万6000トンで、およそ5000トンだった1977年に比べると、35年間で約50倍に膨れ上がってきている。・・とは言うものの、2012年農水省がまとめた世界の豆乳消費量から見ると、日本の一人当たり年間消費量2リットルに比べ、タイの10.2リットル、韓国5.2リットル、マレーシア4.4リットル、そして、オーストラリアの3.6リットル、カナダの2.7リットルと、大豆との付き合いが長い日本にしては情けない数字だ。
日本の食品がアジアの中でも突出していかに西洋化しているかが分かる。しかし、日本にとっては出だしの遅い食品であった豆乳だが、関連食品のラインナップに見られる豊かなバリエーションや食材としての利用範囲の広さなど、日本発の新しい食べ方開発の可能性からも、豆乳ベース食品のアジアでのポテンシャルは相当に高いと思われる。車やデジカメばかりでなく豆乳や豆腐関連食品で世界ブランドを作り出し、是非とも世界に打って出て欲しいものだ。
アジアで世界に通用する「コーヒーとミルク」の関連商品の開発と、「お茶と豆乳」の商品開発が同時に行える器用な国は日本だけなのだから。

| 13.10.18

グランピング

昔からあったハイエンドのキャンプスタイル「Glamping(グランピング)」が、今改めて注目されている。「グランピング」とは、グラマラス(glamorous)とキャンピング(camping)を掛け合わせた造語。キャンプならではの自然環境のなかで高級ホテル並みの快適さやサービスを体験するという、贅沢なキャンピングスタイルのことだ。
古くはアラブの王族や欧米の富裕層が、シェフや家具などをともなってアフリカの砂漠やサファリなどで優雅なキャンプをしたことに始まり、現代の英国では音楽フェスで、自前のテントやギアを持たずとも快適に滞在できるように考案されたキャンプスタイルや、F1チームの豪華な移動用トレーラーなど、最近徐々に人気となっている。グランパー(グランピングをする人)たちが優雅に仮設住宅(?)を楽しみ尽くすスタイルが注目されているが、日常がグラマラスな人がキャンプする時に使われる言葉で、庶民が間違って使うとみじめになるので考えない方がよさそうだ。
「Go Glamping (http://goglamping.net/)」では、世界中のグランピング施設をピックアップし紹介している。たとえば、アメリカの広大な砂漠でティピに宿泊できる「Moab Under Canvas (http://www.moabundercanvas.com/)」などだ。中でもアマングループが提供するインドネシア・モヨ島のテント「AMANWANA (http://www.amanresorts.com/amanwana/home.aspx)」やインド・ラージャスターン州にある「Aman-i-Khas (http://www.amanresorts.com/amanikhas/home.aspx)」は、ベンガル虎やナマケグマの生息する国立自然公園内で最上級のテントライフを提供する。現代の究極のグランピングと言えそうだ。
ただし何度も言うが、普通の生活を送る庶民の頭でグランピングを考えるのは難しそうだ。グランピングの人気の背景には、世界に存在する巨大な格差社会がある。英米が主導する莫大な金融緩和とあふれるマネーサプライ。それを扱える金融資本からは蚊帳の外の庶民生活。今やイスラム世界が人口のマジョリティーを占める中、テロとの戦いをリードしている米国も国家予算は払底し、次第に巨大な貧困に飲み込まれていく。「Glamping(グランピング)」の人気は、アッパーミドルによる世界の貧困化への“抵抗”だろうか?

| 13.10.11

マドリスト

住宅の間取りを見て楽しむ人を“マドリスト”、実際に間取りを作っちゃう人を“マドラー”と呼ぶそうで、そんな間取り図大好きな人間が増えている。
最近、実在する変な間取り図ばかりを紹介するブログやサイト、書籍までもが存在し、“間取り図オフ会”まで開催されているという。今やすっかり間取りは面白カテゴリーになっているのだ。現在13万人ものメンバーがいるmixiの「間取り図大好き!」コミュニティでは、“マドリスト”たちが集まって、間取りを楽しむ鑑賞イベントなどが開かれている。実在しうるヘンな間取り図を収集して、その生活を想像・批判したり、感動したりするのが主な活動だが、回を重ねる毎に参加人数が増えて、「間取り図大好き!」(扶桑社)として書籍化もされた。
また、「クローゼットはもう少し広い方がいい」とか、「リビング脇の部屋は壁を壊して広くしたい」など、不動産屋のチラシを手に夢想する時間は、“マドラー”達にとっては至福のひと時であると同時に苦悩の時だ。今ではWebでフリーにダウンロードできる簡単間取り図設計ソフトを使って、間取りを改造したり、自作の間取り図を作ったりもできる。しかも入力した間取り図を元に3次元描画でリアルに再現し、理想の住まいをシュミレーションできるものまであるのだ。
“マドリスト”や“マドラー”の出現の背景として、マンションの耐久性は100年近くになろうとする中で、実際の物件所有年数は平均15~20年でしかないという現実がある。今や中古物件のリフォームが主流なのだ。限られた国土で、特に都心の矮小住宅事情の中で、中古物件の間取りを工夫して少しでも広く暮らしたいという気持ちから、間取り図がもはや癒しの存在になっているようだ。一方で、やっと日本もマンション業者の建築条件のお仕着せではなく、自らの住宅ライフスタイルをユーザーから創り上げようとする時代になったとも言える。
戦前ある種の完成をみた日本住宅様式は、戦後完全に破壊されたのだが、70年を経てやっと独自のライフスタイルを取り戻しつつあるのだろう?

| 13.10.04

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