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映画『女子カメラ』

オリンパス、パナソニック、ニコン、ソニーなどで、今や最激戦区となっているミラーレス一眼カメラ市場に、遅ればせながら9月にキヤノンが「EOS M」を投入して参入した。ミラーレス一眼は、被写体の像をセンターで受けるミラーをなくし、センサーで代替することで、機械式一眼レフカメラと同等の機能でありながら、小型・軽量になった優れもの。従来のコンパクトカメラとさほど変わらない大きさで、ハンドバックに入ってしまう為、多くの“カメラ女子”から人気を集めている。街角の風景やその日の食事、友人との楽しいひと時の模様など、個人がそれぞれのプライベートを情報発信する現在。投稿を重ねるうちに、携帯電話のカメラ機能を利用して撮影することに飽き足らず、本格的に写真の魅力に引き込まれる女性が増えている。
国内ではすでにシェア20%、2400万人以上のスマホユーザーがいると言われている中、スマホには1000万画素クラスのデジカメを内蔵しているモデルも多く、今さらコンパクトデジカメなんていらない…という声も多い。だが、「もうちょっといい写真をアップしたい」とか、「ズーム撮影したい」と、スマホ内蔵カメラに限界を感じつつあるカメラ女子たちに向けて、“Wi-Fi内蔵デジカメ”も各社から登場している。
そうしたハイスペックかつコンパクトで、おしゃれなデジカメを片手に写真撮影を楽しむカメラ女子の姿を描いた映画『女子カメラ』が、11月24日に公開される。写真家でもある向井宗敏監督にとって、最近カメラを手にする女性が増え、彼女たちの撮る「リア充」※な作品に何かパワーを感じ魅かれるものがあった、というのが、今回の映画製作のきっかけとなったそうだ。
プロ並みの高級カメラを抱えた中高年のアマチュアカメラマンとは違い、カメラ女子が撮りたいのは、カレンダーになるような写真ではなく、あくまでも「日常」。彼女たちの写真は、「ステキと思った瞬間をそのまま写したい」と90%感性寄りで、写真をブログに載せて「かわいい!」と「リア充」な共感を得られるのが至福なのだ。
※リアル(現実)な生活の充実感「リア充」は、今や日本の消費のキーワードになっている。

| 12.10.26

ペアレンティングホーム

“シェアハウス”という新しい住まい方が、首都圏を中心に若者の間で急速に広がりつつある。以前は留学生などの外国人が住んでいるといったイメージが強かったが、近年は単に「居住空間」をシェアするだけでなく、「暮らし」や「趣味」「体験」といったソフト価値をシェアする形態へと変化している。中でも、ユニークなコンセプトを持った物件が増加していることは注目に値する。
農園がついたシェアハウス「元麻布農園レジデンス」は、「スクール菜園と36区画のレンタル菜園」、「36畳のコミュニティラウンジ」、「17戸の農園付住居」からなり、これら3つの場所で自然と人がつながり、地域交流さらには地方との交流のきっかけになることを目指している。横浜市では、1957年築の共同住宅「第一共同ビル」の中に、アーティストのためのシェアハウスが誕生した。ビルの2階にある宴会場を、スケルトン・スタイルのモダンな空間にリノベーションし、総面積約100平方メートルの中に、台所と風呂場、トイレ、プチ・アトリエといった共有部分と約4畳の個室が6部屋ある。同ビル1階には、芝居小屋「十六夜(いざよい)吉田町スタジオ」もでき、アーティストたちが、お互いに刺激し合いながら暮らせる空間になっている。
さらに、シングルマザー専用のシェアハウス「ペアレンティングホーム」も注目を集めている。シェアハウスサービス「colish(コリッシュ)」が運営する、シングルマザーを応援するための「ペアレンティングホーム高津」は、母親が働いている間の保育を行うのはもちろんのこと、母親が帰宅した後のチャイルドケアを行うことで、シングルマザーの精神的・体力的なケアを行うという、保育施設併設型シェアハウスだ。他にも、単身高齢者とシングルマザー世帯のシェアハウスをサポートする会社が誕生している。株式会社ナウいが行うIGHシェアハウスソリューション (Inter Generation Houseの略) 事業は、単身高齢者とシングルマザー(母子家庭)の共同生活を組成する日本初のサービスだ。ひとり暮らしのシニア世代の家にシングルマザーが引っ越してくる形態で、世代横断型のシェアハウスを提案している。
さまざまな人の境遇を上手にサポートしてくれるシェアハウスの暮らしは、近所付き合いが希薄化している現代だからこそ生まれたシステムだ。家族ほど近くはなく、他人ほど遠くはない。甘え過ぎたり、わがままを言い合ったりはしないけれど、人としては助け合う。そうした適度な距離感を保った、緩やかな同居人関係は、都市化、核家族化、2世帯化を経て、新しい社会構造を模索している。

| 12.10.19

復活バンド

デビュー40周年を記念して、5年ぶりに全国ツアーをスタートさせた「TULIP(チューリップ)」が先週末、東京国際フォーラムホールでの2DAYS公演を開催し、「心の旅」「虹とスニーカーの頃」等をはじめとする大ヒット曲や名曲の数々をアンコール含め計28曲熱唱した。この現象をどう捉えたらいいのだろうか?イベントとしては成功だが、すでに新曲がない限りアーティストとは言えないからだ。
ここ数年の音楽シーンは、まさに“再結成” ブームだった。海外ではレッド・ツェッペリンやMR.BIG、国内でもX‐JAPAN、SPEEDなど再スタートを発表するバンド、グループが続々と登場した。また、去年から今年にかけてのバンドの復活は、あきらかに震災がきっかけとなっており、解散後ソロで活動していたメンバーが、ソロで募金を集めるよりバンドの方が集まる額が大きいという理由からだった。復興・復旧支援の為に、歌ものロックのジャンルを作った「BOOWY~COMPLEX」、パンクロックバンド「Hi-STANDARD(ハイ・スタンダード)」に続き、再結成を期待する声が最も高かった「プリンセスプリンセス」も1年間限定で復活した。
そうしたレコード会社の要請で復活するバンドが続く中、2009年に再結成したロック・バンド「ユニコーン」は少し違っていた。80年代後半から90年代前半におけるバンドブームを牽引し、シングル「大迷惑」、「働く男」など数々のヒット曲を発表し、1993年の解散から16年という長い時間を経て戻ってきた彼らに、「復活バンドとしてではなく、新しい伝説を作って欲しい」との声も多かった。以前の活動をリアルタイムで観ていない若年層からも支持を受けたということは、現代に生きるアーティストとして評価されたことを実証している。
反面、今回の同窓会的な「TULIP(チューリップ)」のツアーは、音楽ファンの高年齢化が指摘されるとおり、コンサート会場には中年世代の姿が目に付く。懐かしさから往年の曲をライブで聴きたいと思うファンの気持ちは理解できるものの、今の復活バンドブームは、音楽シーンに何かを生むということはない。復活=過去の曲を歌っているだけなら、レコード会社の商業目的の単なる余興でしかないからだ。
表現活動を時代と対峙して行おうとする「アーティスト」と、商業主義にのった「タレント」を区別してこそ、真の復活バンドを見つけることになるのではないだろうか?

| 12.10.12

食べられる映画館

2010年に始まった「東京ごはん映画祭」が今年も10月2日からスタートしている。 青山のシアター・イメージフォーラムをメイン会場に、東京ごはん映画祭実行委員会主催で「おいしい映画」を一堂に集め、単に映画を観るだけでなく、おいしい食事やおいしいライブも同時に体験しながら、五感をフルに使って映画を楽しむことのできる複合型イベントだ。年々、食やカルチャーに関心のある女性たちを中心に人気を集めている。これまでは恵比寿を拠点に開催してきたが、今回は青山を中心に表参道や渋谷も巻き込んでさらにパワーアップしている。
今回、上映されるのは食にちなんだ15作品。
「食べるラー油」を全国的な知名度に押し上げた「辺銀(ペンギン)食堂」の夫婦をモデルに、国際結婚、離島への移住、帰化申請など、「食べるラー油」誕生の裏に隠された夫婦の絆を描く『ペンギン夫婦の作りかた』。
「世界で最も革新的なシェフ」と賞賛された「エル・ブリ」の料理長フェラン・アドリアの、食への飽くなき探究心に迫るドキュメンタリー『エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン』、など、おいしい映画が揃っている。
さらに、本映画祭のきっかけとなった作品、フードディレクター野村友里が「食べるということこそ、生きること、人生とは食べる旅」をテーマに、食の原点を辿っていく『eatrip』の上映では、作品のテイストにマッチした渋谷のフレンチ「Bistro Maffick」で、旬のベジタブルコースを食べながら映画を鑑賞できる。「ごはん付上映会」という形式で、他の映画もそれぞれに適した店でいくつか上映されている。
このように食と映画を組み合わせた取り組みとしては、ロンドンでも今年5月に、映画の中に出てくる食べ物がその場で食べられるという“食べられる”映画館「edible cinema」が登場した。エレクトリックシネマが始めた「edible cinema」の仕組みは、まず上映前に番号のついたスナックやドリンクのセットを観客に配る。そして、上映中に特定のシーンになると、スタッフが大きなプラカードを掲げ、観客はその番号のものを食べる、というもの。まさに同時進行で主人公と同じものを食べて映画を体感出来るというわけだ。
映画と食べ物の組み合わせによって、五感をフルに活用し体感する映画エクスペリエンスは、Smell-o-Vision と呼ばれ、50年も前から言われていた考え方だとか。主人公と同じものを食べているというだけで、まるで自分も映画の中に居るような感覚になり、一体感をもって映画を鑑賞できるというわけだ。スマホの普及などで、映画館ばなれが浸透してきた今、改めて行きたい“映画館”になりそうだ。

| 12.10.05

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