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ペアレンティングホーム

“シェアハウス”という新しい住まい方が、首都圏を中心に若者の間で急速に広がりつつある。以前は留学生などの外国人が住んでいるといったイメージが強かったが、近年は単に「居住空間」をシェアするだけでなく、「暮らし」や「趣味」「体験」といったソフト価値をシェアする形態へと変化している。中でも、ユニークなコンセプトを持った物件が増加していることは注目に値する。
農園がついたシェアハウス「元麻布農園レジデンス」は、「スクール菜園と36区画のレンタル菜園」、「36畳のコミュニティラウンジ」、「17戸の農園付住居」からなり、これら3つの場所で自然と人がつながり、地域交流さらには地方との交流のきっかけになることを目指している。横浜市では、1957年築の共同住宅「第一共同ビル」の中に、アーティストのためのシェアハウスが誕生した。ビルの2階にある宴会場を、スケルトン・スタイルのモダンな空間にリノベーションし、総面積約100平方メートルの中に、台所と風呂場、トイレ、プチ・アトリエといった共有部分と約4畳の個室が6部屋ある。同ビル1階には、芝居小屋「十六夜(いざよい)吉田町スタジオ」もでき、アーティストたちが、お互いに刺激し合いながら暮らせる空間になっている。
さらに、シングルマザー専用のシェアハウス「ペアレンティングホーム」も注目を集めている。シェアハウスサービス「colish(コリッシュ)」が運営する、シングルマザーを応援するための「ペアレンティングホーム高津」は、母親が働いている間の保育を行うのはもちろんのこと、母親が帰宅した後のチャイルドケアを行うことで、シングルマザーの精神的・体力的なケアを行うという、保育施設併設型シェアハウスだ。他にも、単身高齢者とシングルマザー世帯のシェアハウスをサポートする会社が誕生している。株式会社ナウいが行うIGHシェアハウスソリューション (Inter Generation Houseの略) 事業は、単身高齢者とシングルマザー(母子家庭)の共同生活を組成する日本初のサービスだ。ひとり暮らしのシニア世代の家にシングルマザーが引っ越してくる形態で、世代横断型のシェアハウスを提案している。
さまざまな人の境遇を上手にサポートしてくれるシェアハウスの暮らしは、近所付き合いが希薄化している現代だからこそ生まれたシステムだ。家族ほど近くはなく、他人ほど遠くはない。甘え過ぎたり、わがままを言い合ったりはしないけれど、人としては助け合う。そうした適度な距離感を保った、緩やかな同居人関係は、都市化、核家族化、2世帯化を経て、新しい社会構造を模索している。

| 12.10.19

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