trendseye

コモン・センス

選挙権年齢を「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げる改正公職選挙法が成立した。来年夏の参院選で18、19歳の約240万人が新有権者となる。来年の参議院選挙が楽しみだ。思わぬ結果になるかもしれない。そして当然、最高裁で違憲判決が出ている一票の格差はそれ迄に是正されると期待している。
米国から押し付けられた憲法を日本国民が自主的に制定し直すことによって、初めて戦後レジームから脱却できるのだという安倍総理の論理は、今回の安全保障関連法案を巡って憲法解釈を曲げてでも成立させようという自らの発言と矛盾する。憲法学者から総スカンを食らっても正当化しようとしている、憲法を形骸化させてまで暴走する権力が、新たな憲法を作ると言っても、国民は合意出来ないだろう。アメリカから早期成立を命令され、憲法を改正して臨む時間がないので、無理やり成立させざるを得ないのですと素直に認めれば同情する人も出てくるだろう。
かつてそのアメリカも、イギリス植民地からの独立戦争を戦った。そして戦争開始翌年の1776年に、トマス・ペインによって『Common Sense (pamphlet)』が発表されベストセラーとなったことは有名だ。アメリカがイギリスから分離・独立することが正当であることを簡潔に力強く訴える内容はたちまち民意を得て、7年間にわたるイギリスとの戦争を完遂、勝利に導く大きな力となった。日本では『Common Sense』を常識」と訳しているが、むしろこの場合は「民意」が相応しい。巨大帝国イギリスと戦ってでも独立を勝ち取ることが、当時アメリカのコモン・センス(民意)だったのだ。
昨年出版された『コモン・センス完全版』(http://www.amazon.co.jp/dp/4569820301)によると、ペインは当時のアメリカとイギリスの関係を、「イギリスはすごい国に決まっていると思い込み、イギリスの保護がなければ何もできないとアメリカ人は錯覚している」。「イギリスに守ってもらわなければどうしようもないという固定観念にとらわれ、安全保障でイギリスに依存しているばかりに、経済面で不利な条件を押しつけられている」などと論じている。文中の「イギリス」を「アメリカ」に置きかえ、「アメリカ」を「日本」に置きかえると、聞き覚えのある、現在の日本の状況とよく似た状態だったことがわかる。
しかし、安倍首相の国会での言葉にはトマス・ペインのような説得力は無い。コモン・センスが形成できていないことを知るべきだろう。

| 15.06.19

CATEGORY

  • BOOM
  • FOOD&RESTAURANT
  • LIVING&INTERIOR
  • SCIENCE&TECH
  • TRAVEL
  • TREND SPACE
ART BOX CORP.