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品種改良魂

先日、日本穀物検定協会が発表した2012年産米の食味ランキングで、審査された全国128銘柄のうち、熊本県の『森のくまさん』が最高点を獲得して初のトップとなった。ここ数年、米産地としてさほど評価が高くなかった北海道や九州の佐賀県、熊本県産の銘柄が特Aランクに加わるも、東北の岩手、宮城、山形県産の代表銘柄も根強い。その一方で、これまで“おいしい米”の代名詞として知られていた『コシヒカリ』が、新潟県産以外の産地の評価が全般的に落ち、米戦線はますます乱戦模様となり、「米新時代の到来」と新銘柄に対しての期待が集まっている。日本は、米ばかりでなく、付加価値の高い農産物への需要が高い。それに応えようと日本の農家は、国内マーケット向けにはおいしさ重視で質のよい作物を収穫する為に、品種改良を続けている。
ひるがえって海外マーケット向けにはどうだろう?日本のイチゴやリンゴなどは、香港・バンコク・シンガポールの有名百貨店で高値で売れ話題になっている。そうした日本の農産物の品質の高さは世界でも認められている。しかし、海外に出せば高額でも売れると思っていると大きな間違いだ。例えばシンガポールでは、既に「日本の果物自体の品質は確かに1位かもしれないが、バイヤーにとっての品質は3位以下で、マーケットニーズを捉えていない。高級果物ならオーストラリア、ついで韓国、その後には台湾とか周辺のASEAN諸国だ」と指摘されており、量的には売れていないのだ。言葉を変えれば、“産業”になっていない。農産物輸出大国であるオランダは、世界で勝つ為のマーケットと商品開発に取り組み続けてきた。オーストラリアや韓国も、最初から海外向けの商品開発をし、“産業”としてその数を伸ばしているのだ。
今回政府はTPP参加を意識して、「攻めの農業政策の推進」として農林水産品の輸出を1兆円規模に倍増する目標を改めて掲げているが、政治と行政が支配している限り、“産業”化は難しいだろう。生産現場と流通業者が組んで、世界で売るために品種改良魂が発揮されれば、日本の農産物のブランド力はまだまだありそうなのだが?海外マーケットのみを狙うような産地の育成というのがあっても良いのでは?ガラケーのように、ガラ農にならないためにも・・・

| 13.02.22

ななつ星

2013年10月に運行を開始するJR九州の富裕層向け寝台列車、日本版オリエンタルエクスプレス「ななつ星」が海外で大注目されている。
「ななつ星」は日本初の「クルーズトレイン」というコンセプトで、当初からアジアを中心とした販売を見込んでいたが、欧州や中東からも問い合わせが来ている。1泊2日1室2名利用で一人当たり22万円、2泊3日高級旅館宿泊とセットのコースは1室2名利用で一人当たり55万円など、福岡・博多から大分・由布院などの九州の観光地を周遊する設定だ。7両編成でラウンジカーにはピアノとバーカウンターを備え、客室はすべてゆったりとしたスイートとなっている。この「ななつ星」は当初から九州を世界にPRする目的で、客の半数がアジアを中心とする外国人客となる青写真を描いていた。昨年、アジアやヨーロッパ、中東での富裕層向けの旅行商談会で、日本にはあまりなじみのない「豪華寝台列車」というコンセプトと、日本旅行で訪れる先として目新しい九州に関心が寄せられたという。中でも、「豪華列車」の文化があるヨーロッパでの好感触は予想以上で、より早く理解が得られたそうだ。今後、九州の豪華列車に続き、北海道や日本海側でも新しい訪日観光ルートが期待できそうだ。
今日本は「アベノミクス」と呼ばれる一連の経済政策で、ピーク時から比べると20%近い円安になっている。日本で円安からメリットを得るのは輸出産業ばかりではない。日本のインバウンド観光にとっても大きなチャンスだ。成熟した日本において、インバウンド観光地は京都・大阪・東京だけではない事に気がつく良い機会だ。
日本の「過疎地」は美しく、そして美味しい。いつも思うことだが、島根県の棚田は、経済成長で激しく開発が進むバリ島の棚田より、今やはるかに美しいかもしれない。

| 13.02.15

ハラールコスメ

イスラム法に基づいて動物性の成分やアルコールの不使用を謳った「ハラールコスメ」が注目されている。
現在、保湿化粧品、シャンプー、美顔パック、口紅など化粧品の大半で使われている脂肪酸やゼラチンには、ほとんどの場合アルコールと豚由来の成分が使われている。そうした成分を含む化粧品を使うことに罪悪感を覚えるイスラム教徒女性のための「ハラールコスメ」ブランドが、イスラム経済圏の発展と共に近年次々と立ち上がってきている。ドバイ発ハラール化粧品ブランド「MENA」(http://www.mena-cosmetics.com/frontend/home)は、中東諸国に向けて、ミネラルや植物から抽出したビーガン素材を使ったナチュラルコスメを販売している。また、イギリス発ハラールコスメブランドも注目だ。ソウル・シンガー、ジェイムズ・ブラウンの娘ローズが19歳で立ち上げた「Pure Halal Beatuty」(http://www.phbethicalbeauty.co.uk/)や、「FX cosmetics」(http://www.fxcosmetics.co.uk)は、イスラム教徒女性以外からも人気を集めている。さらにカナダのメイクアップアーティスト、ライラ・マンディは、イスラム教に改宗して、「OnePure」(http://www.onepurehalalbeauty.com/)というブランドで、皮膚科の専門医、薬剤師と共に化粧品の開発・販売を手掛け、マレーシア、ヨルダン、イギリスのオンラインストアで販売している。
昨今、市場が急成長し続けているアセアン諸国、特にマレーシア、インドネシアの2カ国では、所得の上昇と生活水準の向上に伴って、イスラム教の富裕層やアッパーミドルが急増。これまで中華系を対象にしていた市場が急激に変化し、「高所得のムスリム」という市場を生み出している。その為、化粧品や食品などの「ハラ―ル」対応は、重要性が高まってきているが、「ハラ―ル」をファッションとして捉えた偽オーガニックには警戒が必要だ。
ムスリムの旺盛な消費意欲を背景に、化粧品市場もいっそう拡大すると予想される中、宗教的価値観を大切にした「ハラ―ルコスメ」へのニーズは高まり、イスラム教徒女性だけでなく、厳しく認証を受けたナチュラルコスメとして、国境や民族の違いを越えて世界中の女性に広がり始めている。

| 13.02.08

天然神話

「養殖」と書かれている魚は避けて、極力「天然」を選ぶという人は多い。一般的に、「養殖より天然のほうが安全でおいしい」と思われているが、本当にそうなのだろうか?肉には「天然」を求めないのに、魚には「天然」を求めるのは何故なのだろう?
確かに旬に限れば天然の魚介類はおいしい。一般的には、養殖の方が栄養管理されているのだが、日本人には何故か「天然」の方が人気がある。しかし、季節や獲れた漁場、さらには個体差によって不安定な天然物に比べ、養殖物は個体差すらコントロールできるようになってきている。かつて養殖物は抗生物質(抗菌剤)の含有量が多く危険と言われていたが、養殖技術が向上したことで飛躍的に改善され危険度は激減している。育った環境やエサ、投薬状況などがわかるので、どこで生まれ育ち、どんな環境で、何を食べてきたのかが把握できている養殖物は、天然物に比べリスクが低いとも言える。原発事故や中国沿岸の海洋汚染が進んできた現在、養殖物の方が安全・安心なのかもしれない。日本人は養殖魚に対して偏見を持ち過ぎていないだろうか?
世界における魚介類の養殖生産量は2010年に5987万トンとなり、過去10年間でほぼ倍増している。新興国の経済成長や人口増加、養殖技術の進歩などにより、高級魚やエビなど輸出用だけでなく、湖沼などでの小規模な養殖も盛んになっている。それに対し、天然の漁獲高は9000万トン前後で近年は頭打ち傾向にあり、国連食糧農業機関(FAO)などによると、食用に限れば18年にも養殖の生産量が天然を抜く見通し。国別では中国の養殖が3673万トンと桁違いに多く、アジア諸国が上位10カ国中8カ国を占める。日本は天然の漁獲高は約400万トンで7位だが、養殖は11位の71万トンにとどまっている。かつて日本は自分で獲って自分で消費していたが、今や魚介類輸入高がEUに次いで2位となり、世界の海洋汚染の影響を最も受けている国とも言えるのだ。
汚染が進む中国の東側に位置することを考えると、「天然」ばかりにこだわることは、世界で最も危ない魚を食べている?ことになりかねない。江戸前や天然物にこだわって“ギャンブル”する時代は終わった!?

| 13.02.01

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