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Stop!t

インターネットやスマートフォンの爆発的な普及によってネット上の“いじめ”が蔓延し、非常に大きな社会問題になっている。そうした中、ネット上のいじめに対抗するためのツールとして開発された「Stop!t」(http://stopitcyberbully.com/)というアプリが、アメリカで今注目を集めている。
このアプリは、いじめられている子どもがネットのSNSなどで自分を攻撃する投稿を発見したとき、“Stop It”ボタンを押すことで画面をスクリーンキャプチャでき、それを信頼できる周囲の人に提出することができる。またいじめ投稿に対し、いじめをやめるように自動的にメッセージを送信するほか、学校側にアラートを通知する。さらに、いじめられている子どもは“Help It”、“Friend It”、“Report It”などのボタン押すことで、周囲の人たちに直接助けを求めることもできるそうだ。アメリカでは、毎日16万人の子どもたちがいじめを恐れて学校を欠席している。全米の4万3千人の高校生を対象に行われた「The Ethics of American Youth(アメリカの若者の倫理に関する調査)(2010年)」によると、高校生の50%が過去1年間に誰かをいじめた経験があり、47%が過去1年間になんらかのいじめを受けたと回答している。「Stop!t」は2014年8 月のリリース以来13州78校で採用されており、実際に生徒がいじめを通報できるツールをポケットに持っているという認識だけでも、いじめ抑止につながっているそうだ。「Stop!t」は今後学校以外の仕事場や軍隊のような環境にも適用できるようにして、ユーザーを広げていく計画だという。
“いじめ”は子供だけの問題でなく、人類が動物であることに由来する根強い社会問題だ。学校、職業、人種、宗教などあらゆることが対象になり、“いじめ”が社会からなくなることはないだろう。「Stop!t」も万能ではない。“いじめ”は究極はグループ間抗争、戦争へと発展していく。数が増えれば適正数にもどそうとする本能とも関係しているのだろう。
人間社会では支援の名のもとの行き過ぎた乳幼児医療等が更なる人口増食料不足を招き、エネルギー、情報、お金の片寄りから紛争を助長する。この悪循環をどこで断つか?まずは、拡大再生産に頼らずとも機能する循環型経済の構築ではないだろうか?

| 15.03.27

ベイマックス魂

2014年12月公開のディズニー最新アニメ映画『ベイマックス』(http://www.disney.co.jp/movie/baymax.html)は、中国でも先月28日の公開から2週間で興行収入が2億7400万元(約53億2000万円)に到達、作品の満足度が高いと現在も人気が広がっている。
日本人の14歳の天才少年ハマダ・ヒロが、兄タダシの残したロボット「ベイマックス」と繰り広げるアドベンチャー作品。ベイマックスは人間の心と体を守るために開発された白いケア・ロボットで、顔は日本の「鈴」をイメージして制作されたそうだ。また、作品の舞台となる街、最先端科学都市サンフランソウキョウの各所には日本的な要素が散りばめられている。同映画のプロデューサー、ロイ・コンリ氏は、宮崎駿監督の『となりのトトロ』と『天空の城ラピュタ』に多大な影響を受けたという。主人公のヒロを優しく包み込むベイマックスの姿には「日本のアニメのスピリットが反映された」と語り、この作品は「日本文化へのラブレター」であると強調している。残念ながら、日本のエンターテインメント業界は作品としての『ベイマックス』を生み出すことはできなかったが、ディズニー作品として「日本人にはわからない日本の魅力」が、“ベイマックス魂”として表現されているのかもしれない。
“外国人が驚く!日本の素晴らしい商品&サービス”で、一番多い回答がトイレ。お尻を洗うウォシュレットはもちろん、音を消す「音姫」、温かい便座、自動で開くトイレの蓋など、外国人にとっては新しいものばかりでビックリするそうだ。昨年秋に発売され目標の30倍の受注を受けたLEXUS の新型スポーツクーペ「RC」(http://lexus.jp/models/rc/index.html)は、ドライバーの心地よさを考え、回転数によってエンジンサウンドを変えるサウンドジェネレーターを搭載している。発進時にはサウンドマフラーが重厚感ある音を演出し、加速に伴い「サウンドジェネレーター」が高回転まで軽快な音を発する。スポーツクーペらしいムードを、「外の人に迷惑をかけず」に堪能できるという。
外国人にとってはちょっと奇妙に思える高機能を生み出す“ベイマックス魂”は、世界の中で特別な価値観を確立しつつある。“ベイマックス魂”のある商品開発は、日本人にしか達成できない産業の指針だろう。

| 15.03.20

さらさらゴールド

「さらさらゴールド」?と言われても何の名前かわかる人は少ないだろう。健康食品か新種のサプリメントかと思いきや、2013年から三井物産が北海道の農業ベンチャー企業と共同開発をはじめた「ONIONI」ブランドのタマネギ(http://www.onioni.me/?pid=80910566)の名前だそうだ。
この夏から、サプリメントや加工食品だけでなく生鮮食品でも、消費者庁に届け出れば「健康への効果」を表示できる、新しい食品表示制度が実施される。申請した事業者は、トクホのようなマークはないが、届け出番号を付けられることになる。
高機能野菜の草分けは、カゴメが2007年に発売した「高リコピントマト」(http://www.kagome.co.jp/seisen/seisen-tomato/lineup/)だ。活性酸素を消去し、抗酸化作用があるカロテノイド(リコピン)を通常の1.5倍含んでいるという。このような成分の有効性を示す表示がこれからは可能になる。
タマネギの「さらさらゴールド」は、植物性ポリフェノールの一種で抗酸化機能がある「ケルセチン」によって動脈硬化予防や血糖値抑制に効果があることを表示できることになる。同様に、特別に品種改良された温州ミカンが、「骨の健康を保つβ-クリプトキサンチンを含み、更年期以降の女性に適している」とか、ある種のホウレンソウが「ルテインを補い、目の健康維持に役立つ」などと表現できるようになるそうだ。最近では、野菜がもつ「抗酸化系」「免疫系」「解毒系」などの機能性を強調して野菜を販売する事業者も出始めている。
TPP問題では、海外から大量に安い農産物が入ってきて日本の農業は非常に厳しい状況になると言われている。しかし、それは逆に日本の農産物がいかに機能性が高く体によいかを証明するチャンスであり、海外市場で日本の農産物の優位性をアピールし輸出を大きく増やすきっかけでもある。
自動車や機械産業だけが競争にさらされているのではない。日本の農業生産者はモラトリアムな状況を脱出し、これらの機能性表示を利用して高くても購入したくなるすごい商品を作り出し、世界市場で勝負できるようになって行くよう期待されていることを忘れてはならない。

| 15.03.13

数寄

北海道出身の漫画家、山下和美のエッセイ漫画『数寄です!』(集英社)が話題だ。マンション住まいだった著者が、数寄屋造りの自邸を建てるまでの詳細をレポートしたものだ。“和風”ではなく“和”の住まいと暮らしに正面から取り組んだ、涙あり笑いありの試行錯誤の記録は、便利や楽を最優先しない生活の楽しさを見せている。自分の住み家や暮らしを新しい角度から見つめ直すヒントになるというわけだ。
一方、2年に1度開催される芸術文化の祭典「神戸ビエンナーレ2015」は、今回で第5回10年目を迎える。今年のテーマは「スキ[su:ki]」だそうだ。神戸の文化の力を結集させ、この地が育んできた進取の気風でアートの既成概念を打ち破り、みなとまち神戸から広く国内外に、新しい「スキ=数寄」を発信しようとするものだ。
復興に文化の持つ力は大きい。日本語には、茶の湯や生け花などの風流・風雅の道に心を寄せる、ありきたりの「好き」では表し切れない「数寄」がある。過去と強制的に別離させる大震災のような災害は、甚大な被害をもたらす物心共の大きな損失だが、開き直って見方を変えれば、新しい創造への出発点を与えられたとも言える。
数寄は、気に入った物事に対して一途に熱中することを意味し、芸道ばかりではなく恋愛に没頭し、陶酔する精神をも表している。使われ始めたのは平安時代中ごろと言われている。その後、安土桃山時代から江戸初期にかけて茶の湯の流行に伴い、「数寄」な思いに任せて作られた建物の様式が「数寄屋造り」だ。茶室の様式を取り入れ、装飾を排した簡潔さが特徴だ。
それにしても東北の復興住宅なるものに、津波を乗り越えて新しい東北の数寄を創り出そうという意気込みは見られない。使い切れない予算が(3兆円も)余っているらしいが、津波は又必ずやって来る。津波に耐えられる新しい構造の建物を余った予算で開発できないのだろうか?
高台に逃げるだけで同じものを建てていたら意味がない。飛騨の合掌造りや沖縄の石垣囲いの家も、厳しい自然に対峙して創り出された、人の知恵が文化にまで昇華した良い例だろう。

| 15.03.06

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