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降水日

そろそろ梅雨入り、天気予報を見ながら休日の日程に頭を悩ます季節だ。特に旅行を計画していると現地の天気も気になるものだ。旅行口コミサイトのトリップアドバイザーが先頃公開した、世界の降水日の割合を一覧にまとめた「世界の雨の日率マップ」(http://tg.tripadvisor.jp/precipitation/) が面白い。
この一覧は、世界気象機関のデータベースにある世界1891ヶ所の気象台の記録を基に、1日合計0.1mm以上の降水があった日の割合をまとめたものだ。調査によると、世界で一番降水日数が多い場所は、ペンギンの生息地で有名なオーストラリアのマッコーリー島で、年間307日。一方、世界で最も雨の日が少ない都市はヌビア砂漠の都市、スーダン・ワディハルファで、年間0日だそうだ。因みに東京は113.1日で、パリ112.8日とほぼ同じ、ニューヨーク95.4日とロンドン162日の間だ。
海外駐在経験のある人で、これを聞いて「おやっ?」と思う人は多いだろう。東京はもっと雨が降るんじゃないか? それもそのはず、国際的には0.1mm以上を降水日としている中で、日本の気象庁はなぜか降水日を1mm以上の雨の日と定義しているのだ。傘をさす人が降水量1mmから飛躍的に多くなるからだそうで、日本の気象庁は正確な降水量データではなく、「傘をさすかささないか?」で降水日を決めているということのようだ。そう言えば、NHKの天気予報の雨は傘マークになっている。
気象庁は、同時に「降水確率」も発表しているが、これはもっと曖昧で混乱の原因を作っている。降水確率算出の際に、1%の位は四捨五入するため、日本では降水確率0%と発表された場合でも、1mm未満の雨が降る可能性もあるということになるから厄介だ。実態は0%ではないにもかかわらず0%と言っているところが、日本ならではというところだろうか? さらに、降水確率50%以上と40%以下では、40%以下なら「ところにより」を付け表現に違いを出しているというのを聞くと、統計データからの予報というより、情報を受け取る側の感性と判断に依存する日本人の曖昧さがうかがえる。あまり深く考えるなということか?
ゴミの分別も「燃えるゴミ」と「燃えないゴミ」で分けられ、多少なりとも科学の知識がある人は「鉄も燃えるのだが・・・?」と考え込んで分別できなくなる。日本人の曖昧さは文学の世界や芸術などに於いては美的感覚が大いに評価されるところだが、気象やゴミの分別、あるいは政治の世界では事実関係を曖昧にし、いい事ばかりとは言えない。

| 14.05.30

社会脳

「21世紀は脳の時代」という言葉を最近よく耳にする。「社会脳」という言葉がちょっとしたブームだ。
「社会脳」とは、社会性を作り出す脳の仕組みのこと。瞬間的に変化する社会や環境に応じて、自分の行動を上手く切り替える脳の仕組みが「社会脳」であり、コミュニケーションの基盤でもあると言われている。すぐれた社会脳を持つ人の比率が高い組織・企業・国家は将来が明るいと言える。
理化学研究所脳科学総合研究センターの適応知性研究チームが開発した『SR システム』(Substitutional Reality System:代替現実システム)は、人工的に社会脳を作り出す画期的実験だ。過去を現在に地続きのものとして挿入することで、体験者の経験する主観的な「現実」そのものを操作し、離れた時間と場所を共有させてくれるシステムだ。体験者が装着するヘッドマウントディスプレイ(HMD)には、目線の位置に付けたカメラからのライブ映像、およびあらかじめ同じ場所で撮影した過去映像が織り交ぜて表示される。体験者はライブ映像と過去映像の区別ができなくなり、体験者に気付かれずに「現実」をあらかじめ用意したものにさしかえることができるというわけだ。東京・外苑前のTEPIAでは誰でも無料で体験できる。スマホを使った簡易版SRシステムも開発されたそうだ。多くの人がSRシステムを楽しむようになると、気が付かないうちに社会脳が鍛えられる。
「脳」で認識できたものだけがリアリティである、という現実の中で我々は生きている。過去を差し替えることで「社会脳」をポジティブに変化させることが可能なわけだ。肉体改造ならぬ脳改造が進むと、複雑な社会への対応力が増していくことにもなる。特に政治や自然の災害予防の分野での応用が期待されるのではないだろうか。優秀な社会脳があればと期待される現場として、「韓国セウォル号の乗客救出」、「日本の集団的自衛権」、「タイの政治混乱」、「米国のテロとの戦い」、「パレスティナとイスラムゲリラ」問題など、是非もっと社会脳が発達した人々で議論してもらいたいものだ。

| 14.05.23

円周率ソング

円周率Π(3.14159265…)という神秘的な無限数を音で表現しようと試みて、できあがったある曲が注目されている。是非聴いてほしい。
この作品『Song from π!』(https://www.youtube.com/watch?v=OMq9he-5HUU)は、作者であるaSongScout氏によって、2011年にYouTubeに投稿されたが、今年の3月、ScienceDump( http://www.sciencedump.com)に投稿されるなどしたことから、再び話題になっている。作者がこの曲を作ったきっかけは“記憶するため”とのこと。数字を覚えるよりも、曲を覚えた方が早いと考え、円周率を独自の法則でメロディにしたそうだ。曲は「Aハーモニックマイナースケール」という音階を基に構成されおり、【数列】に【音階(コード)】を割り当てている。それにしても、こんな美しいピアノ曲が出来上がるとは・・・。
奥の深い円周率については、世界中の人々が紀元前から現在までいろいろな形で研究し、今なおどんどん深化している。コンピューターを使用した計算では小数点以下12.1兆桁まで計算され、暗唱では6万桁を超える記録が『ギネス世界記録』によって認定(2005年11月20日)されている。また3月14日は多くの国で「円周率の日」とされており、2009年アメリカ合衆国の下院では、学校でこの日を利用して生徒に円周率(3.1415)について教え、「数学を学ぶ魅力を伝える」よう呼びかける決議案("Supporting the designation of Pi Day, and for other purposes.")が承認されたそうだ。惑星はすべて球体、Πなしには存在しないというわけだ。
一方日本では、いわゆる「ゆとり教育」の一環として小数点第2位以下の掛け算や割り算の学習内容が削減されていたため、1992年度から実施された学習指導要領では、幾何学における円の周の長さや面積を求めるために円周率を手計算に用いる場合、「円周率は3」として概算してもよいとした。
それを首都圏の学習塾が、「ゆとり教育で学力低下。円周率は3?」と大々的な宣伝キャンペーンに利用したことで、円周率はゆとり教育を否定的にする象徴として社会に広く認識されるようになってしまった。学習指導要領は2011年に改正され、これは「脱ゆとり教育」を示すものと認識されている。が、しかし、遅きに失したかもしれない。「山の日(8月11日)」などを定めている場合か!?
他の先進国で、いかに円周率を覚えさせるか、科学的教育をするかを考えている時に、一時的とは言え科学的探求を緩め、計算しやすくするために「3」にしてしまう国、日本。技術力で世界をリードできる国になれるとはとうてい思えない。
折しも「円安を理由」に日本企業の好決算が続く中、株価が上がらないという事実が、日本の決して明るくない未来を証明しているかのようだ。

| 14.05.16

プリンセス・パン症候群

WHOの出生率の国際比較によると、人口維持に必要な合計特殊出生率「2.1」に、米英仏が年々近づいているのに対し、日独伊はそろって「1.4」前後と低迷しているそうだ。何か第二次大戦後の社会構造に理由があるのだろうか?
今世紀に入り先進国ではカップル形態の多様化が進み、結婚しないカップルの間に生まれる「婚外子」が増加している。仏は、出生全体に占める婚外子の 割合が50%を超えており、子供は結婚して作るという概念は既になく、この社会現象が低下傾向にある出生率の下支えになっている。 未婚のまま子どもを産むことが社会的に認知されているのだ。因みに2008年のデータだが、婚外子の比率が断トツに高い仏に次いで、英43.7%、米40%、独32.1%、伊17.7%と続き、日本は驚くべき低さで2.1%ということだ。
そんな中、フランスの雑誌「ELLE」が、ピーター・パン症候群(少年のままいつまでも大人になりきれない男性)の女性版として、“プリンセス・パン症候群”という女性の生き方を取り上げて反響を呼んでいる。
"プリンセス・パン症候群"とは、「30代半ばから40代前半で、ある程度の収入があって自立し、独身生活を楽しむ女性のこと」を指し、アメリカの脚本家でジャーナリストのトレシー・マクミラン氏が定義し名づけた言葉だ。彼女によると、"プリンセス・パン症候群"の女性は、よくメンテナンスされた美しいボディラインに隙のない着こなし、誰もが羨むような仕事を持ち、男性を虜にし、夫や子供に依存しないという。ドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」に登場する女性たちが先駆けであり、ハリウッドで言えば、性に奔放なキャメロン・ディアス(41歳)などが、正に"プリンセス・パン症候群"の代表で、同時に婚外子を生む女性のイメージともなっているようだ。日本に最も少ない女性像だ。
“プリンセス・パン症候群”の女性達が子供を産んで、社会が受け入れてくれる国づくり、これが進まないと少子化が止まらないことをデータは示している。そう考えると、日本の少子化担当相のあり方が滑稽に思えてくるし、婚外子比率の国別順位もよく理解できる。
1)結婚しない仏オランド大統領、2)カミラ妃を認める英王室、3)夫婦で大統領を狙う米クリントン夫妻、4)色気のないおばさん独メルケル首相、5)男性王国丸出しだった伊ベルルスコー二元首相、6)単なるお飾り女性閣僚しかいない国日本!
婚外子を非嫡出子と呼んでいるようでは、当分日本の少子化は止まらないだろう。

| 14.05.09

アリペイ

「Yahoo! ショッピング」、「楽天」が相次いで中国大手の電子決済システム「アリペイ(支付宝)」と提携することが明らかになった。どちらも国際ショッピングサービスの商品に6月から「アリペイ」の決済手段を導入することで、中国からの購入を促進するのが狙いと言われているが、アリババの株主であるYahoo!はともかく、楽天は実はアリババの軍門に下ったとも言える。
「アリペイ」とは何者なのだろうか?
「アリペイ」の親会社は、中国のインターネット通販最大手「アリババグループ(阿里巴巴集団)」だ。世界最大規模の巨大電子商取引市場「タオパオ(淘宝)」を担っており、取引数はAmazonとeBayを足したものを既に超えている。その傘下で 「アリペイ」は電子決済を担当し、その利用者は、2013年末時点で3億人弱にまで達した。2013年の 「アリペイ」決済件数は125億件、決済額は9000億元(15兆円)にのぼるという。中でもモバイル決済(アリペイ・ウォレット)が飛躍的に進展している。アリペイ・ウォレットは各種料金支払いなどに使われているほか、コンビニやタクシーの支払い、映画館でチケットを購入する時にも使用されるなど、生活に欠かせない存在になりつつある。
現金を 「アリペイ」にわざわざ移すという一見非合理的な行動の背景には、中国独自の事情があるようだ。モバイル決済使用率トップ10はいずれも青海省、チベット自治区、内蒙古自治区など辺鄙な少数民族地域であり、銀行インフラの不足を「アリペイ」が補っていることが明白だ。
さらに昨年6月に登場した、同グループのオンラインMMF「ユエパオ(余額宝)」は、中国金融界にショックを与えた。「アリペイ」利用者の口座にある残高を数クリックで「余額宝」に移すだけで、定期預金より高い金利約6.5%が付くのだ。また、こうした投資性に、いつでも 「アリペイ」で決済に使えるという利便性も備えている。
「アリババグループ」はもはや単なるEコマース企業ではなくなりつつある。中国の流通業と金融業という巨大かつ参入障壁の高い産業分野に、わずか10数年で基盤を築き、更に伸びているのだ。
エスクロー機能を持つモバイルペイメント機能 「アリペイ」が金融商品「ユエパオ」の拡大に火をつけ、「タオパオ」で流通インフラ未整備の中国津々浦々にまで近代的商品を届ける。まさに第三世界近代化の救世主だ。「ユエパオ」は9ヶ月という短期間で5000億元(日本円で8兆円)という途方もない残高を記録し、グローバルに見てもトップ10入りするサイズのMMFとなった。
今後中国金融当局の監視は厳しさを増すだろうが、日本にとって更なる驚きは、米国で上場しようとする「アリババグループ」の40%の株主がソフトバンクだということだ。孫正義は日本、米国の通信を支配し、今や中国、いや世界のコモディティ・インフラを支配する勢いだ。

| 14.05.02

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