trendseye

釣りガール

「~をファッショナブルに楽しむ女子」という意味合いで名付けられる「~ガール」は、社会への影響力が強くなってきているようだ。
例えば、「釣りガール」。餌や魚に触れない、針が外せない、料理で魚をさばけないなど、女性には難易度の高いと見られ、釣りはこれまでファッショナブルな女性たちを遠ざけてきた。しかし、ここ数年、そんなハードルの高かった釣りだからこそ、かえって引き付けられる今どきのポジティブ女子のことを「釣りガール」と呼んでいる。ルアーで魚と対話しながら釣り糸を垂れ、1日釣れなくてもOK、万が一釣れても魚をリリースする渓流釣りは、自然を愛する「森ガール」の延長系で増えているらしい。レディースのフィッシングギアも扱う老舗ブランド「LeiPalms」などは、数少ない釣りファンの女性からこれまで支持を集めていたが、こうした「釣りガール」の増加に期待して、他のブランドでも続々と女性用アイテムに力を入れ始めている。釣具などの大型小売店である上州屋のウェブサイトでも、最近は女性用のアイテムを意識して、ロッドにしてもウェアにしても、初心者の女性にも選びやすいカラフルでPOPなデザインが増えてきている。年々減少しているといわれる釣り人口だが、「釣りガール」が業界活性化への起爆剤となるのではないかと、その成り行きに注目が集まっているのだ。
釣りに限らず、お茶、お花、お香など、元を辿れば趣味の世界は男達がはじめたものが多い。女性たちは、男性仕様の趣味を長い時間をかけて我慢強く、苦労しながら、自分たちのものにしてきた。ところが21世紀に現れた女性=ガールたちは、楽しそうに新しい価値観を生み出してきている。カメラが趣味のおしゃれさん「写ガール」、山とファッションを楽しむ「山ガール」、苔をおしゃれに嗜む「苔ガール」、中指のネイルが決まっている「囲碁ガール」・・・と枚挙にいとまがない。「女流登山家」「女流写真家」ではなく、「山ガール」「写ガール」の台頭で、女性たちにもツッパリ無用の優しい平等・民主的社会が生まれている。趣味の世界でも「アラブの春」は必然の流れなのだろう。

| 11.11.25

マルチチュ―ド

ウォール街を象徴するアメリカの金融機関が推進するグローバリズムの悪影響に抗議し、ニューヨークのマンハッタン地区で始まった「ウォール街を占拠せよ」運動は、ボストン、シカゴ、ロサンゼルス、シアトル、サンフランシスコなどアメリカの各都市に広まった。運動への参加者は、アメリカの金融機関が富裕層の利益のために活動していると考えており、アメリカの経済状況や支配システムにおける腐敗、失業に抗議しているが、加えて、イラクやアフガニスタンにおけるアメリカの戦争にも抗議している。ここ1ヶ月、イギリス、ドイツ、イタリア、スペイン、アイルランド、ポルトガルといった国においても、「ウォール街を占拠せよ」運動を支持する大規模なデモが行われた。こうした動きを、イタリアの政治哲学者アントニオ・ネグリらは、マルチチュード(Multitude)と呼んでいるようだ。
マルチチュードという言葉は、古くは政治思想家たちが用いた政治概念であるようだが、ネグリとデューク大学文学部准教授であるマイケル・ハートの共著、『帝国』や『マルチチュード』の中で使用され、再び注目を集めた。超大国の覇権によるグローバルな世界秩序である帝国主義に対抗して、学歴、年齢、出身、人種、民族を問わない文字通りマルチな人たちが、スローガンを掲げ、ひとつの勢力でありながら多様性を失わない、同一性と差異性の矛盾を問わないで起こしている運動を言い表している。
今の世界的な同時不況、経済の破綻状況は、世界の大手金融機関の大株主である富裕層がリードしたグローバリズムの失敗によって生じたと考えられている。そのツケを何故一般大衆が負わなければならないのかという不満が、人を結びつけるソーシャルメディアの働きによって、新しい大きな動きとなったことは見逃せない。
こうした運動が世界の多くの都市に飛び火している一方で、なかなか火がつかない都市もある。パリと東京がその代表だ。フランスと日本の社会は、他の先進国や、中東産油国、及び中国・ロシアといった超大国に比べて、相対的に富の再配分がうまくいっており貧富の差が少ない。ある意味この2つの国が、これからの民主的グローバリズムの進む方向を示唆しているのかもしれない。
面白いことに、この2つの国は自動車産業が発達しているのに超リッチマンの車が存在しないことでも不思議と一致している。

| 11.11.18

イスラミック・ファッション

長期独裁政権に対する国民の不満と結びついて「アラブの春」と呼ばれた民衆化運動は、チュニジアからエジプト、リビア、シリアなど他のアラブ諸国へと広がり、各国で数々の政変や政治改革が続いている。その影響か、イスラム関連の報道が近年になく増えている。最近行われたイスラム教最大の聖地メッカへの大巡礼も、世界中から300万人の信徒がサウジアラビアに集まる模様が、カタール・アルジャジ―ラをはじめ、YouTubeやソーシャルメデイアなどインターネットでも世界中に伝えられた。9.11の事件以降、米国ではイスアラム教徒=テロリストと考える人々が増えていたが、そんな傾向にも変化が表れているように見える。
そうした中、マレーシアの首都クアラルンプールで、毎年11月に開催される「イスラミック・ファッション・フェスティバル」が、今年で6回目を迎え注目を集めている。このイベントは、マレーシア人を中心に世界各地のデザイナーが斬新なイスラム式ファッションの作品を発表するというものだ。イスラム教では一般的に女性はアバヤという伝統的民族衣装で、全身を黒色で身体の線を出さないように覆うスタイルをする。しかし、ここで展示されるアバヤは、ボルネオ島の野生の花をイメージした色彩豊かなデザインものや、精巧なビーズをふんだんに使ったゴージャスなものなど、イスラム様式を守りつつも、ファッショナブルで自由な発想に満ちている。最近は、イスラム教徒ではないデザイナーの参加も増え、宗教を超えてファッショナブルだという理由でアバヤを注文する人も少なくないそうだ。ファッションを通じて異なる宗教間の理解を深めるいい機会になっている。
ところで、アバヤの根底にある思想はどこから来たのだろうか?アバヤは、女性の性的魅力を封じ込める目的を持たせた衣装だ。イスラム教は比較的新しい宗教だが、ローマンカトリックの修道女も同じような衣装に身を包んでいるのは何とも不思議かつ皮肉な事だ。ひょっとして発想は同じなのかも?

| 11.11.11

フランス車

このところ日本では、フランス車が売れている。プジョー・シトロエン・ジャポンは、特にシトロエンブランドで2011年上半期(1~6月)累計の新車登録台数が1418台と、前年同期比69.2%増になったと発表した。さらに名車DSの名を冠した新型ラインナップの充実を図ることで、年末までに3100台の登録台数を目標として掲げているが、この数字はプジョー・シトロエン・ジャポン設立以来最高の記録?なのだそうだ。
これまでフランス車と言えば、デザインや乗り心地は良いのだけれどATは古いし故障しやすいというイメージが強く、なかなか日本のユーザーを満足させられなかった。しかし、フランスがEUに入りドイツ車などと対等に競争するようになってからは、フランス車の生産技術や管理技術が大きく進化し、信頼性が向上したと言われている。ルノーは日産を子会社化(日産もルノーに出資)したことで、日産の技術を導入して車全体の性能がアップした。プジョーはBMWとエンジン供給などで提携し、信頼性を向上させている。フランス車の台頭はグローバル化のメリットを最大限生かした結果だ。日本の輸入車市場で一番人気のドイツ車は、車の完成度や品質は高いが、理論的、実利的すぎて窮屈な感じがする。車にファッション感覚、遊び心を求める人たちには、そうしたドイツ車よりフランス車が魅力的に見え始めているのだ。近い将来、日産が日本の国内工場でルノー車を作り、その販売ルートを使って売り出したりしたら面白いことになってくる。自動車大国である日本の政治家、役人、消費者は、日本の血が混ざったルノー車で潤う国内労働市場を見て初めて、グローバル化のメリットを肌身で理解していくのだろうか?戦後間もなく、ルノー車をノックダウンで作っていたのとは意味が違うのだ。
来年1月1日に施行される米韓FTAを前に、日本は今、TPP交渉で農業団体の反対からその一歩を踏み出せないでいる。だが意外と知られていないのは、両国間FTAの施行が行われると、思いもかけず米国製レクサスが大量に韓国マーケットに入り込めるという事にもなる。韓国車が米国で優位に立つ事だけが強調されているが、韓国にとっても両刃の剣なのだ。
例えばTPP参加により、日本の農業商社もTPP参加国チリで安い小麦やコメ、ワインを作り米国マーケットに売るという事が夢ではなくなり、次の一手として打てるのだということを考えていく時代が来ている。

| 11.11.03

CATEGORY

  • BOOM
  • FOOD&RESTAURANT
  • LIVING&INTERIOR
  • SCIENCE&TECH
  • TRAVEL
  • TREND SPACE
ART BOX CORP.