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ライス・アップ

多彩なコンセプトの和食店が続々登場しているドイツの首都ベルリンでは、ある地下鉄駅構内におにぎり屋さん「RiCE-UP」が誕生した。かつて日本に住んでいたというドイツ人オーナーが、「持ち歩きやすくヘルシーで完璧な包装」のおにぎりに感激して、帰国後に店を始めることになったそうだ。オリジナルの具は日本人には驚きの組み合わせばかり。チキン+サツマイモ、鮭+わさびディップ、しいたけ+かぼちゃ、ほうれん草+ナッツ&レーズン、梅干し+セロリ、ラタトゥイユ+羊乳チーズ・・・値段は1個1.5ユーロから2.5ユーロ。通勤、通学中のスナックとして、またすべて無添加の食材が使用されているので、健康食としても大きくアピールして、ベジタリアンを中心に人気が広がっているそうだ。ゆくゆくはドイツ中に支店を出したいという。
「RiCE-UP」のおにぎりの具もさることながら、日本のコンビニと同じ「おにぎりフィルム」に包まれた三角おにぎりの形状に、ドイツ人は皆驚かされる。日本のコンビ二でおにぎりを買った外国人が必ず開けるのに戸惑うといわれている、上部からカットテープのラインに沿ってフィルムを回して左右に分けて開けるタイプで包装されていて、しかもそれによって海苔のパリパリ感が維持されているのを知ってビックリするのだ。
日本の「おにぎり」は、2000年あたりから急速に増えた日本の大手コンビニエンスストアの海外進出に伴って、世界各国で食べられるようになってきた。日本と同じ米作地である東アジアやタイの一部などでも、ご飯で作るおにぎりと似たようなものはあるが、いずれも日常的に食べられてはいなかった。そうした中で、日本のコンビニの進出は、日本食、特に「おにぎり」に対する価値観やイメージを変えてきたと言えるのかもしれない。いわゆる日本式三角おにぎりの人気は、日本の米に近い品種の米を使って、現地工場で製造・販売されるまでになっている。
前出の「RiCE-UP」の看板には店名の脇に「organic onigiri」と書かれてあったが、今や「おにぎり」も「ONIGIRI」として世界で通じるようになってきている。さらに日本オリジナルなひらがなの「おにぎり」だけで、ベルリンやニューヨークで受け入れられるのも間近か??

| 12.06.29

おくりいえ(家)

古き良き日本の趣を残す街、金沢。その象徴とも言える町家には、高齢者の単身居住が多く、相続時に取り壊されることが多い。その数は毎年200棟以上にも及ぶそうだ。京都をはじめ全国各地で町家再生に向けた動きが広がる中、本来であれば保存・再生することが好ましいが、多くは取り壊しを避けることはできないと聞く。そこで、せめてキレイに掃除をして"見送ろう"ということで「おくりいえ」プロジェクトと名付けられた取り組みが、2010年から展開されている。「おくりいえ」の運営は、その都度つなぎを着て集まる「つなぎ隊」が、町家をピッカピカに掃除した後、眠っているお宝を持ち帰るというイベントだ。「ものをつなぐ、心をつなぐ、家族を守ってくれた家に感謝する」という思いから始まったその活動の成果は、取り壊されずに引き継がれる町家が増えてきている事に表れている。少しずつ「おくりいえ」の「送る」が「贈る」に変わりつつある。金沢の町家が拠点となって、思いをしっかりとつないでいく、ぬくもりが伝わるプロジェクトとして注目が集まっている。
片や最近、新建材を使った新築にかっこよさを感じない若者が増えているそうだ。コスト面や、立地条件の良さなどからも、優良な中古マンションをリフォームする方に価値があるとする傾向も高まってきている。しかも床の材料を選んだりする時も、経年変化が出る無垢材を選ぶのだという。若い世代が、自分たちの感性や生活に住まいを合わせられると、中古のリノベーションに魅力を感じ始めている。立地という資産価値、品質とコストパフォーマンスを見据えながら、住まう人のこだわりを表現できることが、これからの住まい方のポイントになっていくだろう。
古さへの抵抗感がなく、むしろ古さに親しみを覚え、古さの中に身を置きたいと思うのは、常に新しくなっていくデジタル社会への反動なのだろうか。単にノスタルジーという情緒的なものでなく、古いものから生まれる新しい表現や解釈は、現代の生活に受け継いでいける貴重なエネルギーとなって、都市に成熟をもたらしていく。20年にも及ぶ経済の低成長は、見方を変えると熟成への道とも言える!?

| 12.06.22

無糖派女子

美容室で男性受けのいい、モテ髪言えば、「さらツヤセミロング」や「ふんわりポニーテール」だ。それに対して、同性受けのいい髪形「ぱっつん前髪」や「おだんごヘア」を希望する女性が増えているとか?男性と一緒にいるより女性同士で過ごすことが多いためなのか、特に30~40代女性は一緒にいる女性を意識した髪形や服装を選ぶ傾向になってきている。こうしたマインドは“無糖派”と言われている。
“無糖派”とは、もともとはアラフォー世代に人気の雑誌『STORY』が、昨年11月号で提案したテーマ「 “無糖派層”が世を握る」が発端になって流行った言葉だ。すっぴん風メイクで、あいまいカラー、重ね着、エンジニアブーツ…と甘さのないファッションを好む人が増えて、40代の「可愛さ基準?」が変わってきていると言うのだ。特集では、創刊から現在までのファッション史の変遷で、コンサバ全盛期だった創刊時(2002年)から、徐々に「大人可愛い」が盛り上がり始め、2006年に甘さが頂点を迎える。そこから、清原亜希の投入で「男前」がブームになり、微糖ブラックを経て、現在の“無糖派層”が台頭してきた。そして、今年になって “無糖派”は“最大派閥”となったようだ。
そんなアラフォー世代が熱い視線を向けている無糖派の代表が、女優の小泉今日子(46歳)だ。先日、優秀なテレビ番組などに贈られる「第49回ギャラクシー賞」の個人賞に選ばれている。彼女をはじめ、YOU、永作博美など、頑張り過ぎない“ゆるい”雰囲気の女優は、異性よりも同性にファンが多い。 異性の目を気にせず、“私はこれが好きなの”と自分を貫いているところが共感を呼んでいるようだ。また、モテを意識して競争するのを“降りた?”女性たちの間で流行っているのが、“大人女子会”だ。いい大人が自らを女子と呼び、競うより女性同士で仲良くつるもうよ、ということらしい。今のアラフォー世代は、不安定な自立する女性の中心だ。結婚や子育てに盲目的に入れない様々な生き方を自由に生き始めた世代だからこそ、自分の年齢にコンプレックスを抱いたり、年齢を受け入れつつも可愛らしく生きたいと思ったり、経済の浮き沈みに翻弄されつつ生き方を模索する、ちょっとだけツライ世代なのかもしれない。決められない今の日本を代表する生き方なのか?

| 12.06.15

DogTV

アメリカで今、ケーブルテレビ「DogTV」がブレイクしている。「DogTV」とは、Doglifeの専門チャンネルではなく、“犬が見るため”の犬専用番組だ。サンディエゴでケーブル局の番組としてオンデマンド放送されていたが、番組の好評を受けアメリカ全土での放送が決まった。番組は8時間枠で、飼い主不在でも飼い犬がリラックスできるよう科学的な見地からデザインされている。犬の視点から撮影されており、効果音や音楽も犬向けに作られているそうだ。ペットホテルでも実験的に放送され、興奮する犬を落ち着かせるのに効果的な結果が得られたとしている。現在、加入者は100万人を超えており、今後月額4.99ドル(約400円)での展開を検討中とのこと。
一方日本では、お茶の間で42年間親しまれてきたTBSの「水戸黄門」が昨年暮れに最終回を迎え、地上波で時代劇が消えつつあるのに対し、早朝から深夜まで時代劇を放送している「時代劇専門チャンネル」は加入者数を伸ばしている。視聴世帯数は820万世帯に上り、有料放送としては屈指の人気チャンネルだ。
テレビ離れが加速し、テレビ業界の減収や減益が止まらない中、自分が必要とする番組、自分が見たい時に見られる番組を求める「能動的な視聴者」は増えてきている。強制的に流れてくる番組や自分が見たくない番組であっても、朝から晩まで漫然と眺めていることに抵抗しない人々を対象とした、現在のテレビのビジネスモデルは崩れつつあるのだ。すでにアメリカのオンラインDVDレンタル会社の「Netflix(ネットフリックス)」は、世界中のテレビ局から番組を集め、映画も各種取り揃えて「顧客が見たいものを見たい時に」配信している。いわば “テレビ番組と映画のグーグル化”を進めている。
時を同じくして、NHKでは、「Hybridcast」の研究を進めている。「Hybridcast」とは、ネットワーク接続により、テレビ放送自体を立体化し、視聴者の体験も新しくしようというものだそうだ。テレビ放送の時間的制約を嫌って、“リアルタイム派”より“後から派”が増えている中で、公共放送?がどれだけ視聴者を惹きつけるものになるのか疑問だが、試みとしては評価できる。ビジネスモデルの転換と言えば、インターネットビジネスからTV事業を見直そうとした楽天の買収提案を、TBSが受け入れなかったのは今さらながら惜しい事をした。世界のメディア界をリードするチャンスを逸したTBSは、今後悔しているのではないだろうか?TV界の変革は選択肢が多いだけに大きく意見が分かれるところだ。

| 12.06.08

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