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アリペイ

「Yahoo! ショッピング」、「楽天」が相次いで中国大手の電子決済システム「アリペイ(支付宝)」と提携することが明らかになった。どちらも国際ショッピングサービスの商品に6月から「アリペイ」の決済手段を導入することで、中国からの購入を促進するのが狙いと言われているが、アリババの株主であるYahoo!はともかく、楽天は実はアリババの軍門に下ったとも言える。
「アリペイ」とは何者なのだろうか?
「アリペイ」の親会社は、中国のインターネット通販最大手「アリババグループ(阿里巴巴集団)」だ。世界最大規模の巨大電子商取引市場「タオパオ(淘宝)」を担っており、取引数はAmazonとeBayを足したものを既に超えている。その傘下で 「アリペイ」は電子決済を担当し、その利用者は、2013年末時点で3億人弱にまで達した。2013年の 「アリペイ」決済件数は125億件、決済額は9000億元(15兆円)にのぼるという。中でもモバイル決済(アリペイ・ウォレット)が飛躍的に進展している。アリペイ・ウォレットは各種料金支払いなどに使われているほか、コンビニやタクシーの支払い、映画館でチケットを購入する時にも使用されるなど、生活に欠かせない存在になりつつある。
現金を 「アリペイ」にわざわざ移すという一見非合理的な行動の背景には、中国独自の事情があるようだ。モバイル決済使用率トップ10はいずれも青海省、チベット自治区、内蒙古自治区など辺鄙な少数民族地域であり、銀行インフラの不足を「アリペイ」が補っていることが明白だ。
さらに昨年6月に登場した、同グループのオンラインMMF「ユエパオ(余額宝)」は、中国金融界にショックを与えた。「アリペイ」利用者の口座にある残高を数クリックで「余額宝」に移すだけで、定期預金より高い金利約6.5%が付くのだ。また、こうした投資性に、いつでも 「アリペイ」で決済に使えるという利便性も備えている。
「アリババグループ」はもはや単なるEコマース企業ではなくなりつつある。中国の流通業と金融業という巨大かつ参入障壁の高い産業分野に、わずか10数年で基盤を築き、更に伸びているのだ。
エスクロー機能を持つモバイルペイメント機能 「アリペイ」が金融商品「ユエパオ」の拡大に火をつけ、「タオパオ」で流通インフラ未整備の中国津々浦々にまで近代的商品を届ける。まさに第三世界近代化の救世主だ。「ユエパオ」は9ヶ月という短期間で5000億元(日本円で8兆円)という途方もない残高を記録し、グローバルに見てもトップ10入りするサイズのMMFとなった。
今後中国金融当局の監視は厳しさを増すだろうが、日本にとって更なる驚きは、米国で上場しようとする「アリババグループ」の40%の株主がソフトバンクだということだ。孫正義は日本、米国の通信を支配し、今や中国、いや世界のコモディティ・インフラを支配する勢いだ。

| 14.05.02

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