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新野生時代

アサド政権が崩壊しても、国土が10年以上にわたって破壊され続けたシリアは、隣国トルコだけでも300万人を超える難民が祖国に戻れる訳ではない。イスラエルのガザの完全な破壊も、パレスチナ難民の放浪に終わりがないことを示している。そして北朝鮮まで巻き込んだ末に更に深刻化するロシア国境を挟んだ戦いは、ウクライナ難民を増大させている。これら戦争難民と多くの不法移民は世界を分断し続け、自国や国連に頼ることができない人々の増加は、世界が個人の力で生き残らなければならない「新野生時代」へ突入しつつあることを意味している。
「新野生時代」においては、先の大戦後に民主主義社会を目指して秩序ある世界を構築しようとした国連がもはや無力であることが露呈した。世界紛争における「国連」とパンデミックにおける「ワクチン」は、フェーズこそ違え世界秩序の回復という目的に対する同じソリューションであったはずだが、今や懐疑の的だ。(懐疑心の塊?)
そのような折り、オーストラリア議会は16歳未満の子どもがSNSを利用することを禁止する法案「オンライン安全性改正法案」別名(ソーシャルメディア最低年齢法案)を可決し、1年後をめどに施行すると発表した。この法律はSNSの運営会社に16歳未満の子どもが利用できないような措置を講じることを義務づけるもので、違反した場合は最大で4950万オーストラリアドル、日本円でおよそ49億円の罰金が科されるという厳しいものだ。
近年子供たちがSNSにのめり込み悪質ないじめや性被害にあったりする事例が先進国では相次ぎ、想像以上の被害をもたらしている。保護者を中心に規制を求める声が高まっていたが、オーストラリアでは世論調査で国民のおよそ77%がこの法案に賛成しているという。
自然界における人類は、動物として本能的に危険を察知し野生を生き抜く力や免疫力を持った個体だけが生き残ってきた。それが現在の人類の祖先だったのだ。しかし勝ち組の先進国では“野生”を克服する過程で安定と長寿を享受し、「過保護の時代」とも言える退廃した生活を送った末に社会は次第に免疫力を失ってしまった。
インターネット社会が登場して未だ四半世紀だが、今後更なる不適切情報の脅威が人類を襲うだろう。「新野生時代」に無防備な子供たちを法律や規制によって守るのは、一時的な効果は無いとは言わないが、麻薬が世界から無くならないのと同様に最終的なソリューションではないだろう。
「新野生時代」に突入した世界が求めるライオンキングが来年1月20日にワシントンに降臨するらしいが、少しは期待できるのだろうか(笑)?

| 24.12.27

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