trendseye

ノーマライゼーション

1960年代に北欧において広まった高齢者やハンディキャップを持つ人への接し方「ノーマライゼーション」が、約50年遅れで日本でも注目を浴びるようになった。
高齢者や障害や病を抱えた人を施設に隔離したりする形で排除するのではなく、そうしたハンデを抱えていても健常者と変わらず普通に(ノーマルに)暮らせる社会を築いていこうという発想。なるべく健常者と同じ様に生活することで健康寿命を伸ばし、本人の負担のみならず社会的負担をも減らして行こうという運動だ。
日本政府も、遅ればせながらそうした「ノーマライゼーション」の実施に向けて舵を切りつつある。
厚労省が管轄する「老人ホーム」には「介護型」と「住宅型」の2タイプがある。「介護型」は介護スタッフが常駐、「住宅型」は健常者が入居し外部介護サービスを利用する。有料老人ホームの総数9794のうち「介護型」が42.5%、「住宅型」が57.3%(厚生労働省 2018年2月26日更新)で、定員数では劣るものの「住宅型」が「介護型」を上回っている。
「住宅型」は受ける介護サービスを選択できるフレキシブルさで利用者の自立を支え、今後もその数を伸ばしていくとみられている。
一方国交省が管轄する「サービス付き高齢者向け住宅」(https://www.satsuki-jutaku.jp/)は、2011年に改正された「高齢者住まい法」の下、バリアフリー構造等高齢者にふさわしいハードと、安否確認、生活相談などのサービスが義務付けられ、これからが期待される賃貸住宅だ。
2017年3月には事業性の見誤りから全国で260件の廃業があったものの、「サービス付き高齢者向け住宅」の登録自体は今後右肩上がりに増えていきそうだ。2017年2月の時点ですでに6600棟、21万5000戸が建設されており、団塊の世代が後期高齢者になる2025年に向けて超高齢化社会を支える施設として期待される。
最近は、リゾート地にも「住宅型老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅」が増えている。風光明媚な場所に温泉施設などを備えた施設を別荘に、引退後の生活の場を移していくというライフスタイルも注目を集めている。
長寿国と言われながらその健康寿命の短さが世界的に問題視されている日本。遅ればせながら「ノーマライゼーション」に気づき、健康寿命を延ばす挑戦が本格化するのか。
これ自体は歓迎されることだが、どうして世界のフロンティアになれないのだろう?日本社会の弱点なのか最後は?

| 18.04.27

フィルターバブル

SNS最大手のFacebookが顧客のプライバシーを守りきれず、揺れている。
コンサルティング会社に提供したユーザー情報8,700万人分が不正に漏えいし、2016年米大統領戦でトランプ大統領陣営がそれを利用したともいわれている。プライバシー保護に対する疑念が高まり、「Facebook削除運動」にまで発展しているのだ。月間利用者が全世界で今や20億人を超えるという巨大SNSは、世界を動かす力を持つが故に責任も大きい。
検索サイトやSNSで利用されるアルゴリズムは、クリック・検索履歴に基づいてユーザーの嗜好を完全に把握していく。そして行動に合わせて、その好むであろう情報を優先的に表示するようになる。結果、完全にパーソナルマーケティングされたユーザーは、自分の思想や価値観に沿った情報だけに囲まれる危険性にさらされる。
つまりユーザーは自分の思想や価値観の皮膜(バブル)の中だけに留まり、判断が偏っていくことになる。そのような状態を “フィルターバブル”現象と呼び、ユーザーはどこかの国の首相のように忖度するイエスマンに囲まれていく。
「人は見たいように見る」とは、ローマの軍人・政治家カエサルの真に人間の本質を表す言葉。アルゴリズムで作られた “フィルターバブル”は正にカエサルの言葉を具現化している。
この偏向した情報環境に反旗をひるがえすがごとく、英国のリベラル系メディア、ガーディアンが「Burst your bubble」(バブルを破れ)という新コーナーを設立した。保守派の主張を紹介するなど、異なる思想、価値観の人々との交流を促す試みが既に始まっている。
公開から10カ月で、5万人のユーザーを獲得したニュースキュレーションアプリの「compassnews」(https://compassnews.co.uk/about)にも注目だ。2015年の英国総選挙やEU離脱をめぐる国民投票の結果を受けて、SNSによってジャーナリズム、ひいては民主主義がゆがめられているという危機感から、二人の若者が立ち上げたものだ。メディア上のあらゆる記事を“AIの編集者”に平等に学習させ、より広範囲な記事の選定を可能にしている。中立性を守るために、紙で培われたノウハウとITスキルを組み合わせた先端事例と言えそうだ。
それに比べて日本のジャーナリズム、特にテレビ界は、ワイドショーがどのチャンネルも押しなべて同質化し低レベルに陥っている。全チャンネルが、巨大な絶望的単一フィルターバブル?のど真ん中にいるとも言える。
これはSNSとは別の次元、一億総白痴化への危機だ。

| 18.04.20

縄文布

この春、縄文時代の布「縄文布」を研究してきた東海学園女子短大名誉教授、尾関清子氏88歳(http://r-cube.ritsumei.ac.jp/repo/repository/rcube/10476/)が、立命館大学で博士号を取得した。88歳での博士号取得は国内最高齢で、まさに超老力を示した人だ。
氏は素朴で単純だと思っていた縄文布が様々な技法で編まれていたことに魅了され、30年以上にわたり“アンギン”といわれる縄文時代の編み物にこだわり続けてきた。研究のために“アンギン”の服を再現、さらに体を張って極寒の2月に“アンギン”とウサギの皮で、当時の真冬の生活体験のため3日間竪穴式住居で暮らすことも試みたという。
氏は論文で全国から収集した約830点の縄文布の製作技法や地域性を分析。弥生時代や古墳時代の布が日本最古との説もある中で、縄文布の起源や特質を解明し、「日本最古」と結論づける研究成果を出したのだ。「先行研究がないので、謎解きの連続。明けても暮れても研究に取り組みました」と振り返る。
“アンギン”とはイラクサ科のカラムシという草を独特な技法で編んだ布で、法衣や敷物、袖なし、前掛け、袋などさまざまな用途に使われていたようだ。経(たて)糸1本を緯(よこ)糸2本に絡ませる、一般の織り機ではできない技法が縄文時代に編み出されていたことになる。土器を作る際に下に敷かれたと分かる形で発掘されたが、糸となるカラムシから“アンギン”にするまでに少なくとも1年はかかったといわれる手の込んだものだ。
2300年ほど前、日本列島に進出した弥生人によって東北地方へ追いやられるまで、縄文時代は約一万年続いた。今回の研究成果として、当時は手のこんだ衣服を着用していたということが判明し、毛皮を着て狩猟をしていたと教えられたイメージは覆された。縄文時代は残された書物こそないが、実は高度な文明が栄えていたようだ。最新の研究では、稲作も既にあったとされている。
紀元8世紀に完成した日本最古の書物とされる古事記・日本書紀で、縄文時代の日本列島の生活を推測するのは難しい。文字に代わる“編む”という行為で形に残っている「布」を媒体に、紀元前の歴史を紐解くとは素晴らしい着眼だ。
「縄文布」による縄文時代研究のインパクトで、日本国民に正確な東アジアの歴史と文明の流れを知らしめることが出来れば、“アンギン“研究の真の価値は正にそこにあると言えるだろう。
今流行りの公文書改ざんだが、「記紀」は日本の歴史上最大の公文書改ざんとも言える。権力により書き換えられた歴史公文書を鵜呑みにしてはいけない。真実はそこにない。

| 18.04.13

プロギング

2016年にスウェーデンから始まった「プロギング(Plogging)」と呼ばれる社会運動が、今注目を集めている。
“Plogging” とは、スウェーデン語で「集める」という意味の “plocka” と、英語の “jogging”をかけあわせた造語で、ジョッギングをしながらゴミ集めをして、体力増強のみならず環境も守ろうというかなり知的レベルの高い運動のこと。日本ではまだまだ知られていない。
環境やライフスタイルの向上に敏感なスウェーデン人ならではの発想だが、この社会運動がじわじわと世界各地に広がりつつあるのだ。
ジョガーはゴミ袋を持参してジョギングを開始し、袋一杯のゴミを持って帰る。ゴミを拾おうとかがむとスクワット運動を挟むことになり、普通に走る以上のカロリーを消費、走るだけでは使わない関節と筋肉のトレーニングにもなるというわけだ。
通常のジョギングをしながらゴミにも目を光らせるという「ながら運動」に、はじめは戸惑うジョガーも少なくない。しかし、「プロギング」はスポーツと社会貢献の最高のコンビネーションだ。
この社会運動を世に広めようと、専用アプリ「Lifesum」(https://lifesum.com/)がスウェーデンで開発されている。現在2500万人のユーザーが登録され、それぞれが走ったルートとゴミ集めの成果を追跡、SNSで発信することもでき推定消費カロリーも表示される。
運動して身体スッキリ、町もスッキリ、拡散欲求もスッキリと、まさに今風のいいこと尽くし。ヨーロッパはもとよりオーストラリア、マレーシア、インドなどでもブームになりつつあるようだ。しかし日本はこういう運動への反応があまり良い方ではない。
最近、アイスランド大統領である Gudni Th. Johannesson氏がプライベートでプロギング中に大統領公邸付近で市民に発見され、市民が一緒に撮った写真をSNSに投稿し話題となった。大統領はプロギングの愛好者だったらしい。
大統領と遭遇した人は自身の投稿の中で、「自国の大統領がブロギングでゴミ拾いをしていたことが誇らしい。」と述べている。
一方日本はといえば、次から次へと高圧的政権運営で役人に忖度させる首相と、子供っぽい言動と脇の甘さで周囲に迷惑をかけ続ける首相夫人に辟易している。今の日本には「首相夫妻が誇らしい」と世界に発信する国民が少ない(いる?)であろうことが残念だ。
二人で自宅に近い渋谷駅周辺で「プロギング」でもして話題を取ってはどうだろう。率先して日本を大人の国に近づける努力が必要だ。

| 18.04.06

CATEGORY

  • BOOM
  • FOOD&RESTAURANT
  • LIVING&INTERIOR
  • SCIENCE&TECH
  • TRAVEL
  • TREND SPACE
ART BOX CORP.