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アイドル

往年のアイドル歌手西城秀樹が5月16日、63歳で亡くなった。(http://www.earth-corp.co.jp/HIDEKI/)
80年代、日本の男性アイドル歌手の「新御三家」として、郷ひろみは「可愛い美少年」、野口五郎は「ヤング叙情ソング路線」で売り出される一方で、西城秀樹は「ワイルドな17歳」、と情熱的でセクシーな男性的魅力を前面に打ち出した。意図的に激しいロック調の曲を作り、女性ファンがより興奮するようなストレートなフレーズを歌詞に散りばめ、派手でセクシーなアクションと長い脚が映える衣装でそのイメージを決定づけた。日本で男性アイドル像が確立されるのに最も大きな役割を果たしたのがヒデキこと西城秀樹だった。
この時代は日本のテレビ黄金期で、歌番組も全盛だった。歌謡界最高の権威として年末の「日本レコード大賞」が君臨しテレビ中継の視聴率は50%を超えていたが、90年代に入りレコード大賞の視聴率は10%台と低迷した。ちょうど昭和から平成に変わるころ各局の音楽番組は相次いで終了、アイドル歌手の露出は目に見えて減り、日本の歌謡界自体が転換を迫られていた。
平成に入り、視聴率を取れるアイドルをプロデュースする人物が注目されるようになる。ベテランのジャニー喜多川をはじめ、小室哲哉、つんく、秋元康などがアイドルとセットで知られるようになったのだ。
彼らの手腕で、アイドルの歌唱力は二の次になり、むしろ作られたタレント性や総合力、ドキュメンタリー映えで勝負する時代に突入。したたかなプロデューサーに導かれ、歌も歌うけれどバラエティ番組等で芸人顔負けの仕切りやボケを披露、更にはドラマにも出演するなど、タレントとしての汎用性の高さが評価の基準とされるようになっていった。
アイドルにとって歌は自分を売り出すための演出手段で売れる歌を歌えればいい、という感覚で歌はタレント活動の一部に過ぎないものとなり、名プロデューサーは歌を“モノ”扱い、ホンモノの歌をすっかり崩壊させてしまった!
スキャンダルすら視聴率、売上に繋げようとするタレント事務所の商魂が、歌唱力とメッセージ性で勝負するプロの歌手の居場所を奪ってきたのだろう。タレント事務所が栄えて本物の歌手が駆逐されるという皮肉な現実!
西城秀樹の時代の終わりから見えてくる日本芸能界の限界。歌手不毛時代を作り出したジャニーズ事務所や秋元康たちプロデューサーの責任は大きい。

| 18.05.25

潜伏キリシタン

「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(http://kirishitan.jp/)がユネスコの世界文化遺産として登録される見込みだと聞いて、「隠れキリシタン」は知っているが「潜伏キリシタン」とは何だと感じた人が多いのではないだろうか。
豊臣秀吉以降キリスト教への迫害が強まり、信者たちはキリスト教を捨てるよう強要された。彼らは仏教徒となったように見せかけ、裏で信仰を続ける事態に追い込まれたのだ。明治6年に信仰の自由が容認され、カトリック教徒として戻って来た人々を「潜伏キリシタン」と呼ぶ一方で、その後も地下に潜ったままの信仰を続けた信者を「かくれキリシタン(通称、かくれ)」として区別しているらしい。
大航海時代、西洋の列強は宣教師による布教活動と共に軍隊を送り込み、世界中で植民地化を促進した。日本でもキリシタン(切支丹)が急激に増え、江戸幕府の全国禁教令(1612年)が出される頃には5万人を数えたようだ。
長崎奉行は宣教師による布教の裏に植民地化の意図を感じ、それまでの優遇策を一気に弾圧に切り替えた。1人の外国人宣教師もいない中で信仰を貫き守り続けた「隠れキリシタン」は、結果、世界でも極めて稀な「キリスト教信仰の形」を作り上げたのだ。16世紀フランシスコ・ザビエル時代のキリスト教の儀礼などを引き継ぎつつも土俗的な信仰などをミックスして独自の宗教へと変貌させている。
解禁後もその形を引き継いだ「かくれ」は、1638年の島原の乱以来、迫害を恐れキリスト教をカモフラージュするために正月を過ぎても一年中しめなわを門戸に飾った習慣を現在も残しているという。
日本側の委員会は当初長崎の教会群で世界文化遺産登録を試みたが成らず、「潜伏キリシタン関連遺産」とする事で登録が認められたと聞く。
ユネスコの世界文化遺産登録は、ノーベル賞と同じく西洋的価値観で世界の文化遺産を振り分ける一種の文化的侵略でもある。今回申請に当たり「潜伏キリシタン」だけを選択したのは、「かくれ」をカトリックとすることを憚った日本側の”忖度”だったのだろうか。
400年もの間、地下に潜ったままの信仰を続けている「かくれ」にこそ、「隠れキリシタン」の本当の文化的価値がある様にも思えるが?

| 18.05.18

ノキア復刻

アメリカではスマートフォンを持たない高齢者が7,500万人いると言われている。スマートフォン所有率は65歳を超えると30%と極端に落ちる。一方、65歳以上のガラケー利用率が77%と意外に多いことに驚かされる。
日経新聞によると、日本のガラケー市場は平成28年の携帯電話出荷台数3,606万台の内664万台(18.4%)とのこと。また総務省が公表した「平成 28 年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、60代のガラケー利用率は69%に上るようだ。
アメリカと日本の統計の指標は完全には一致していないが、引退した65歳以上の高齢者になると75%前後がガラケー利用者である点は似ている。
スマートフォンが世界の携帯市場を席巻する中、相変わらずガラケーを持ち続けている高齢ユーザーや、新たなスマートフォン・サービスの登場を気にしない若手ユーザーの存在が、世界的に無視できない規模なのは興味深い。
映画「マトリックス」で有名になったスライド式カバーを備えて1996年に発売された「Nokia 8110」(https://www.nokia.com/en_int/phones/nokia-8110-4g)は、今年「フューチャー4G」として独自のOS、KaiOSを搭載して発売された。Google Assistant、Google検索、Google Map、Facebook、Twitter、Gmail・Outlookなどとの同期を可能にしてスマートフォンに引けを取らない。
市場調査情報を公開する「statista」が発表したデータによると、2014年の時点までは?世界市場におけるガラケー(フィーチャーフォン)とスマートフォンの出荷台数はほぼ均衡していた。その後大きく差は開くことになるが・・・
テンキーでサクサク操作ができ、簡易的にでもSNSができデザインも楽しめる。ノキア復刻版をきっかけに、高齢者だけでなく広い層でスマートフォンライクな4Gフィーチャーフォンが見直されそうな気配だ。
携帯電話が登場して30年。今やSNS全盛時代で、通話とSMSだけでコミュニケーションを図る人は確実に減っている。起きたらすぐスマートフォン、時計見るのもスマートフォン、写真撮るのもスマートフォン、休憩時間もスマートフォンと、気が付くと1日の大半をスマートフォンと向き合っていることに疑問を感じ始め、ガラケー(フィーチャーフォン)に戻す人も少なくないようだ。
安いスマートフォンは通信スピードが遅い。それに対してガラケーのフィーチャーフォンはスピード感もあり、デザインやライフスタイルにこだわった人たちが年齢を超えて使っている。
ノキアの復刻で、スマートフォンから自由になれるか?

| 18.05.11

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