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ソニック・ザ・ヘッジホッグ

先日米国ヴァージニア州シャーロッツビルで白人至上主義者(KKK)の集会が行われた際、"白人同士"での暴動が勃発した。人種差別が原因の暴動で揺れる米国で、日本生まれの青いハリネズミ、有名なゲームキャラの「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」(http://www.sonicthehedgehog.com/)が、反人種差別主義のシンボル的存在として話題になっているのは興味深い。
もともと「ソニック」は、任天堂の象徴的キャラクターであるマリオに対抗しうるセガのマスコットキャラクターとして生み出された。1991年にゲームソフト「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」として誕生して以来、様々なゲーム機向けにシリーズ作品が発売され、累計販売本数は3.5億本超、海外で圧倒的な人気と地位を築いているキャラクターだ。
「ソニック」の性格は、常に自由で何かに縛られることをひどく嫌う。短気でキザっぽいところもあるが、困っている人を助けずにはいられない。誰とでも、時には宿敵エッグマンとも分け隔てなくつき合い、彼の周りには自然と人が集まる。そんなところから、全体主義体制に反抗し反人種差別主義を訴える代表キャラクターとして選ばれたようだ。
反人種差別主義といえば、ロサンゼルス市で白人警察官たちが潜在的に持つ人種差別の意識を低減させ、共感を引き起こすためのVRの導入が話題になっている。まず白人と黒人をVRのヘッドセットを付けて座らせ、動画のストリーミングで相手が見ているものを見せる。白人に没入型VRテストを施し黒人のアヴァターを与えるのだ。
白人警察官が黒人アヴァターの受ける仕打ちをVR体験しその視点から物事を見ることによって、偏見が顕著に弱まることが期待される。日本ではゲーム依存症のマイナス面だけが話題に上ることが多いが、こうしたアヴァターVR体験に世界的共感を生み出すことを助け差別社会をなくす効果があることに気づかされる。
余談だが、任天堂の象徴的キャラクターである「マリオ」は、金と女のために戦うヒーローとして人気だ。安倍首相はリオオリンピックにマリオキャラで登場して悦に入っていたが、首相の個人的なイメージがマリオのイメージに影響をおよぼすのを好ましく思っていないファンが内外に多いことを知っているのだろうか?
日本のゲームキャラクターは今や首相が考えるよりもはるかに世界的影響力を持つことを、首相自身が知らないことが安倍首相のリスクであり、日本政府のリスクなのだ。

| 17.08.25

フォーミュラE

アメリカのパリ協定離脱を批判したホーキング博士が地球の「金星化」を予言する中、先日英国政府は、2040年までに国内でのガソリン車およびディーゼル車の販売を全面的に禁止すると発表した。フランス政府も既に同じような措置を決めている。世界の石油消費の7割弱を自動車などの輸送用が占めているが、環境対策として「脱石油」、「オール電動化」への流れが一段と加速することになる。
今年6月の第85回ル・マン24時間耐久レースで3年連続で総合優勝したポルシェが、今期限りでヨーロッパGTカーシリーズの活動を終了し、19~20年シーズンから「フォーミュラE」(http://www.fiaformulae.com/en)に参戦すると正式に発表した。2016年のアウディ撤退に続き、ポルシェも去ることになったわけだ。両社ともフォルクスワーゲンのグループ企業、トヨタはこれでル・マンに勝つ意味を失ってしまうことになる。
「フォーミュラE」はガソリンエンジン車だけで戦う「フォーミュラ1」に比べ、これまでレースとしては格下とみられていたが、ここにきて俄かに活気づいている。17~18年シーズンからはアウディが本格参戦し、19~20年シーズンまでにポルシェ、BMW、メルセデス・ベンツ、と独高級車4社が揃う。すでに仏PSAの高級ブランドDSや英ジャガー・ランドローバーは参戦済みだ。各社の研究開発費におけるEV開発の比重が高まり、レースの優先度も変わり始めている。「フォーミュラE」のアレハンドロ・アガグCEOは、「モータースポーツを通じて都市の電動革命を主導する」と唱え、各社がこの理念に共鳴しているという。因みに現時点では日本とアメリカからの参戦は無く、日産がアライアンスを組むルノーに代わって参戦する可能性があるとだけ報じられている。
「F1」ではエンジン性能とタイヤが決め手だったが、「フォーミュラE」の勝敗はバッテリー性能によって決まるとも言われている。EV市場の拡大を見据える自動車メーカーにとって、「フォーミュラE」はバッテリーの出力制御、高効率なパワートレイン開発など、今後の市販EVに必要な技術の「走る実験室」となりつつある。
車屋がモータリゼーションを考える時代は既に終わった。数年後の「フォーミュラE」は、AI技術によりドライバーさえ必要ない自動運転での戦いの場になっていることだろう。
そこにトヨタ・ホンダといえども既存の日本の自動車メーカーの名前がある保証はない。

| 17.08.18

サハリンパイプライン

2011年3月の福島第一原発事故を機に、原子力発電に頼る日本のエネルギーを取り巻く状況は大きく変わった。追い討ちをかけるようにウェスティンハウス社の破綻と、東芝の2部降格の決定があり、そして日本の原子力と安全保障政策の戦略的中核をなしていた核融合炉もんじゅも遂に廃炉に追い込まれた。ことここに至って、戦後日本の原子力エネルギー利用構想は完全に崩れ去った。
そのような中、タイミングよく、シベリアの天然ガス利用の為のサハリン-東京パイプライン構想が、「現実的なプロジェクト」としてロシアで発表された。日本側からの積極的発言はないものの、今まで水面下で準備が進められてきたことが分かる。実現すれば、中東の石油に頼る日本のエネルギー政策が多様化を果たすことに加え、従来の5分の2の価格で天然ガスを得られるようになるらしい。話がうますぎて怪しい雰囲気もするが、これは世界最大の液化天然ガス(LNG)輸入国である日本にとって、喉から手が出るほど欲しかったプロジェクトとも言える。そういえば原子力発電も、最初は安くて安全な夢のエネルギーと言っていた。天然ガスパイプラインもいつか来た道を辿るのだろうか?
日本側の推進主体の一つ、日本パイプライン株式会社(本社札幌市 http://www.jpdo.co.jp/)の小川英郎社長によると、前提条件によって異なるものの、建設コストは関東圏までの総延長1500km、年間輸送能力250億立方メートルのガスパイプラインを建設する当初の計画で7000億円ほどしか掛からないと言う。工期は意外に短く2022年にも稼働可能で、経済合理性も十分あるらしい。誰もロシアへの経済制裁時のリスクを言わないのが不思議だが・・・?
ロシアのLNG生産設備「サハリン-2」の生産量の約80%は既に日本が購入している。シベリアの天然ガス権益を得て日本に販売する手助けをしてきたのは、米国の石油メジャーエクソンだ。そのエクソンでロシアとの交渉責任者であった元CEOレックス・ティラーソンはプーチン大統領に近いことでも有名で、その後トランプ政権の国務長官に抜擢されて世間を騒がせた。
原子力発電を夢のエネルギーとして戦後日本に売りつけたのは、ロックフェラー企業のGEだった。福島原発事故後、ロシアからの天然ガスのパイプライン化を日本に勧めてきたエクソンもロックフェラー のファミリー企業である。
見えてくるのは、巧みなユダヤ資本の戦略に翻弄される日本のエネルギー政策の哀しい姿だ。
日本は、どこまで米国に貢ぎ続ければ気がすむのだろうか?

| 17.08.11

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