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縄文布

この春、縄文時代の布「縄文布」を研究してきた東海学園女子短大名誉教授、尾関清子氏88歳(http://r-cube.ritsumei.ac.jp/repo/repository/rcube/10476/)が、立命館大学で博士号を取得した。88歳での博士号取得は国内最高齢で、まさに超老力を示した人だ。
氏は素朴で単純だと思っていた縄文布が様々な技法で編まれていたことに魅了され、30年以上にわたり“アンギン”といわれる縄文時代の編み物にこだわり続けてきた。研究のために“アンギン”の服を再現、さらに体を張って極寒の2月に“アンギン”とウサギの皮で、当時の真冬の生活体験のため3日間竪穴式住居で暮らすことも試みたという。
氏は論文で全国から収集した約830点の縄文布の製作技法や地域性を分析。弥生時代や古墳時代の布が日本最古との説もある中で、縄文布の起源や特質を解明し、「日本最古」と結論づける研究成果を出したのだ。「先行研究がないので、謎解きの連続。明けても暮れても研究に取り組みました」と振り返る。
“アンギン”とはイラクサ科のカラムシという草を独特な技法で編んだ布で、法衣や敷物、袖なし、前掛け、袋などさまざまな用途に使われていたようだ。経(たて)糸1本を緯(よこ)糸2本に絡ませる、一般の織り機ではできない技法が縄文時代に編み出されていたことになる。土器を作る際に下に敷かれたと分かる形で発掘されたが、糸となるカラムシから“アンギン”にするまでに少なくとも1年はかかったといわれる手の込んだものだ。
2300年ほど前、日本列島に進出した弥生人によって東北地方へ追いやられるまで、縄文時代は約一万年続いた。今回の研究成果として、当時は手のこんだ衣服を着用していたということが判明し、毛皮を着て狩猟をしていたと教えられたイメージは覆された。縄文時代は残された書物こそないが、実は高度な文明が栄えていたようだ。最新の研究では、稲作も既にあったとされている。
紀元8世紀に完成した日本最古の書物とされる古事記・日本書紀で、縄文時代の日本列島の生活を推測するのは難しい。文字に代わる“編む”という行為で形に残っている「布」を媒体に、紀元前の歴史を紐解くとは素晴らしい着眼だ。
「縄文布」による縄文時代研究のインパクトで、日本国民に正確な東アジアの歴史と文明の流れを知らしめることが出来れば、“アンギン“研究の真の価値は正にそこにあると言えるだろう。
今流行りの公文書改ざんだが、「記紀」は日本の歴史上最大の公文書改ざんとも言える。権力により書き換えられた歴史公文書を鵜呑みにしてはいけない。真実はそこにない。

| 18.04.13

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