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シットホール

楽園ハワイが下水問題に悩んでいるらしい(https://gunosy.com/articles/Rf0ry)。 この記事を読んだ人は、ハワイの汚水処理がこんなに低レベルだったことに愕然としたに違いない。
ハワイには、人間の汚物を処理しないまま地下の穴に埋める「汚水だめ(cesspool)」が8万8000箇所もあるとの報告だ。それらがあふれて地下水に浸み出し、運河や海を汚染し、今や危険領域に達してしまったという。殆どが地下水であるハワイの飲料水の安全性に疑問が生じ、サーフィンやスノーケリングを楽しむ人々が感染症にかかるなどの事例も報告されている。楽園のイメージは台無しだ。
超豪華ホテルコンドミニアム「トランプワイキキ」は大丈夫なのだろうか?トランプ大統領は、地震災害にあったカリブ海のハイチ共和国を「まるでシットホール(肥溜め)のよう...」と称して物議を醸した。しかし、まさかお膝元のハワイで、こちらは本物のシットホールが溢れたとは! シャレにもならない事態だ。
ちなみに先住民の言葉でワイキキの「wai」は水を意味し、「kiki」は湧き出るところを意味する。大統領はその美しい意味を知っているだろうか?
もともと独立国家だったハワイは1898年にアメリカ領となり、1959年にはアメリカ50番目の州となった。それを機に、サトウキビ栽培などの第一次産業の島から「観光」産業の島に変貌した。
しかしアメリカ領になってからの“楽園ハワイ”のイメージは、人為的に作られたものだ。ワイキキビーチは、元は溶岩の黒色だったが、遠くカリフォルニアから白砂を運び、美しいホワイトビーチとして演出された。ビーチ沿いには著名な建築家がデザインした豪華なホテルを建て、本土から豪華客船を定期的に寄港させ、人工の楽園を創り出したのだ。
限られた富裕層向けだったハワイを、太平洋戦争で疲弊した兵士たち向けに大衆的休暇村として売り出すことで、ハワイは再生した。航空機の普及とともにアメリカ本土から観光客が怒濤のように押し寄せ、日本人がそれに続いて、楽園ハワイのイメージは完全に定着した。
片や今、最も脅威にさらされているのは人口僅か2万人の楽園、パラオ共和国だ。押し寄せる中国人観光客に為すすべも無く主導権を奪われ、汚染との戦いが始まっている。
世界中の楽園リゾートにとって、増加する中国人観光客はもろ刃の剣だ。暫し立ち止まってインフラを整備しないと、正にシットホールと化すであろう。
世界人口70億人時代への警鐘か!?日本の汚水処理技術の出番でもある。

| 18.03.02

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