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富裕層立国

昨年末、日本政府が各種増税案を繰り出す中、米下院はトランプ大統領が公約に掲げた法人税減税を柱とする税制改革法案を賛成224、反対201で可決した。すでに上院も可決しており、大統領が署名すれば約30年ぶりの大規模な税制改革法案が成立する見通しだ。
この原資がどこから来るのか?日本人には興味深い。
焦点の法人税率は2019年に現行の35%から20%へと大幅に引き下げられ、米史上最大級の減税案になると言われている。因みに個人所得税も、最高税率は現行39.6%から38.5%に若干引下げられる。これで主要国では日本とドイツのみが法人税率30%で高止まりすることになる。フランスは向こう5年間で33%から25%に引き下げるとしており、イギリスもすでに19%まで下げている。アジアでは中国が25%、韓国24%、タイ20%、台湾とシンガポールは17%だ。日本は、投資家から見た国際競争で不利になることは必至だ。
しかし日本の本当の課題は、多い人口の割に経済効率が低いことだ。
米国の人口は日本の2.5倍だが、税収は3.5倍、名目GDPは4.1倍だ。ドイツの場合人口は日本の0.65倍だが、歳入は0.92倍、名目GDPは0.76倍である。人口比の税収に注目すると米国は日本の140%、ドイツは141%とかなり効率が良いことになる。この差は税収を支える高額所得者層(富裕層)の厚さの違い、日本は富裕層比率をもっと上げないと対抗できない。
日本は金持ちもいないが貧乏人もいない、世界で最も成功した社会主義国家だと自虐的に称して久しい。しかし突出した金持ち(富裕層)を作れなかったことが、今や実態経済の根幹を支える優秀な中間層にフラットな重税感を与え、国の活力を奪うことに繋がっていないか?
2014年の国税庁調査を元にした資料(https://vdata.nikkei.com/prj2/tax-annualIncome/)によると、年収1000万円以上の給与所得者は全体の4.1%だが所得税負担率は49.1%にも上る。因みに米国では年収10万ドル以上の世帯が20%以上存在し、結果、米国の個人所得税は富裕層がその大半を支払っている。
米国政府が大胆に減税できるのは、その原資を元々11.1%しかない法人所得税(日本は21.4%)には期待せず、全税収の51.7%(日本は31.3%)を叩き出す個人所得税、その中心納税者「富裕層」に焦点を合わせているからだ。トランプ大統領が打ち出の小槌を持っているわけではない。
高齢化による納税人口減少だけを恐れる日本は余りにも後ろ向きだ。7億円の宝くじが23本出たと言って誤魔化している時代はもう終わったと思う。

| 18.01.05

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