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ヌ-ハラ

ハラスメントの種類がどんどん増える昨今、麺をズズズッとすすっておいしく食べたい人と、この音を不快に感じる人との間に生まれる「ヌードル・ハラスメント」、略して「ヌーハラ」が話題になっている。
そうした現象に日清食品がピント外れな対策を提案している。ズズズッという「麺すすり音」をエキサイティングな音に変えるというフォークだそうだ。トイレで音をカモフラージュする装置「音姫」にインスパイアされて誕生した、その名も「音彦」。このフォークさえあれば好きなだけ音を立てて華麗に麺をすすれるということのようだ・・・(https://www.youtube.com/watch?v=lxocP_Maj1Y&feature=youtu.be)
「音彦」は日清食品初のクラウドファンディング「PRODUCT X (プロダクト ペケ)」第一弾商品で、1個14,800円(税込)と安くない。日清食品グループのオンラインストアで予約が5000個集まったら販売されるという完全受注生産品だそうだが、何だか違和感がある。
日清食品は開発にあたり膨大な量の「麺すすり音」を収集。麺すすり音を感知した瞬間、近距離無線通信の信号をアプリケーションに送信。信号を検知してスマホから即座にカモフラージュ音が再生されるというしくみだ。そもそも日本人が麺を“ズルズル”とすする音が外国人には不快との仮定に立っているが、今やラーメンはすすって食べるのが“通”と外国人も考えているのではないだろうか。
確かに外国人に麺をすする音についてインタビューを行うと、「すごくうるさい」「不快でマナーが無い」という反応がある一方、「本国ではできないので日本で思いっきり音を立てて食べてみたい」という意見も出てきている。
更には日本には音を重視する文化があることをリスペクトする外国人もいる。静寂を旨とする茶の湯の世界でも「吸い切り」といって、出された茶を亭主の心づくしを頂くという意味を込め、最後にズーッと音を立て飲み干すマナーがある。そこに一切言葉は無く、阿吽の呼吸ともいうべき所作(動作)のみでコミュニケーションが図られていくのだ。亭主への「心遣い」を音に託すことで、茶会を共に創り上げていく文化である。
どの民族にも風土や環境にあった食文化があり、マナーがある。日清食品には、麺をすする音を自ら「ヌーハラ」などというのではなく、それに立ち向かい、日本の麺をすする音を世界に広めていくぐらいの心意気が必要なのでは?
創立者安藤百福氏の思いは、“麺喰い”を文化にまで昇華することにあったのではないだろうか?

| 17.11.10

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