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インバウンド爆発

最近旅行業界では「観光」という言葉が禁句になっているそうだ。代わりに好まれている言葉は「地元」なのだとか。地元の人々によるイベントを体験する旅行者が急増している。
Airbnbは昨年11月、これまでのユーザー同士の部屋の貸し借りに加え、新たに「Trip」(https://www.airbnb.jp/new)と呼ばれるローカルな「暮らす体験」を提供し始めた。部屋だけでなく「暮らし方」も提供できるホストへつないで行こうという取り組みだ。
「Trip」での「暮らす体験」とは、地元のエキスパートが企画する手作りのアクティビティだ。「侍の剣術ワークショップ」といった単独のアクティビティもあれば、「マリブでクラシックカーについて学んで実際に運転する」という数日間におよぶものまで様々である。他にも「パリでバイオリンを製作する体験」や、「ケニヤでマラソンに参加する体験」などのコンテンツもあるそうだ。このサービスの提供に伴い、世界12都市(ロサンゼルス、サンフランシスコ、マイアミ、デトロイト、ハバナ、ロンドン、パリ、フィレンツェ、ナイロビ、ケープタウン、東京、ソウル)を含む世界39都市のホストは、自身の「体験」の掲載をAirbnbにリクエストできるらしい。
世界中で制作・厳選されたプレミアムでエッジーなコンテンツを、毎日5千万人以上に提供しているデジタルメディア「VICE」とのコラボレーションも注目だ。日本からは、世界で最もゲイバー密度が高い新宿2丁目をめぐるツアーや、国際的人気を博す日本のBL漫画家から直接プレゼンテーションを受ける体験、東京のLGBTQ(Lesbian, Gay ,Bisexual, Transgender and Queer and/or Questioning)シーンを内側から見る体験などが並ぶ。地元のアンダーグラウンドなカルチャーにどっぷり浸かるユニークな旅の提案は、旅行の概念を根底から揺さぶるものだ。
地元との交流体験マッチングサイト「TABICA(タビカ)」は、日本の過疎地域869市区町村が2040年までに消滅の危機に直面するといわれる中、そうした地域の暮らしを誰もが体験できるようにすることで旅による地方活性化を目指している。
片や中国から大量のインバウンド団体旅行者が押し寄せるが、ネット上で繁殖し始めているインバウンドFIT旅行者は多様な体験に向かっている。インバウンド観光は量と質両睨みで数年以内に4000万人時代に突入するだろう。出て行く日本人は比較的均質だが、入ってくる外人は超多様だ。
観光庁の予想をはるかに超える多様性を持ったインバウンド爆発時代が、もうそこまで来ている。どうする日本!

| 17.09.15

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