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将棋ソフト

30年ぶりの新記録である公式戦29連勝を成し遂げて注目を集めた14歳のプロ棋士、藤井聡太四段の快進撃は、惜しくも30連勝には届かなかった。しかし、彼が人工知能(AI)を用いた将棋ソフトを使って技の研究を行ってきたことが話題になり、将棋界に“革新”を起こすと同時にAIをごく身近に感じさせた出来事でもあった。
一方、将棋ソフト「Ponanza」を開発した山本一成がNHKの番組「視点・論点」(http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/273618.html)で、「人工知能の分野では、だんだんと黒魔術の影響力が強くなってきています」と語ったことが注目を集めている。「Ponanza」に限らず、人工知能ソフトは年間何百万回もの対戦を行ってそのデータを蓄積することができ、人間ではとても追いつかない膨大な経験を積んでいる。
科学はもともと「物事を分解し細部の構造を理解していけば全体を理解できる」という「還元主義」の考え方に基づいているが、人工知能は「還元主義とは相容れない」と指摘されている。人工知能研究の分野では、「どうやって生まれたのか、あるいはなぜ効果が出るのかわからない技術の総称」として、「黒魔術」という言葉が定着しはじめている。未来を示す“AI”に、中世の「黒魔術」という言葉が充てられるとはなんとも意外だ。
総務省が発表した「ICTの進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究(2016年)」によると、日本人が人工知能に抱くイメージは、日本では「コンピュータが人間のように見たり、聞いたり、話したりする技術」というものが最も多い。これに対し、米国では「人間の脳の認知、判断などの機能を、人間の脳の仕組みとは異なる仕組みで実現する技術」という考えが最も多い。
日本では人工知能搭載をうたう家電が溢れているが、これは昔あったマイコン炊飯器の概念の域を出ていない。AIを人間の能力に近づけるものと設定している限り未来はないだろう。それに対し、世界の最先端AI開発の現場では「人間を超えていく」と設定している。この違いに早く気付く必要がある。
今後、社会も人間も人工知能に頼らざるを得なくなる。政治ですらAIに任せた方が合理的に進むと言われている。理屈もわからないままにAIを受け入れるのではなく、あくまでも初期条件の入力は「人間のWantsとNeedsによって設定されている」ということを忘れてはいけない。
日本企業は勇気を持ってAI開発の目標設定を「人間を超えていく」としないと、役員会で黒魔術を語ってもシャレにならないだろう!

| 17.07.07

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