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ヴィーガンスニーカー

世界のスニーカー市場は、2025年には1148億ドル(約12兆6172億円)まで成長すると見込まれている。その一方、米内務省のデータによると、アメリカだけでも毎年3億足もが捨てられているそうだ。
埋め立て場行きとなるスニーカーのパーツは、大半が生分解されないプラスチックや石油を原料とする合成ゴム、レザーで、それらが自然に完全生分解されるまで最大で80年かかるらしい。
そのような中、プラスチックフリーを含め自然に還らないものは作らない“生分解性100%のものづくり”をうたい、アディダス、ナイキ、プーマが2019年8月、他のアパレル30社とともに「G7ファッション協定(地球温暖化の阻止、生物多様性の復元、海洋保護の3分野で目標達成を表明した協定)」に署名した。
ナイキは同時に、100%オーガニック素材を使用したカスタムモデル「Nike Air Max 90」を限定リリース。環境保護に熱心な英ストリートウェア・ブランド「マハリシ(Maharishi)」とコラボした独自の植物由来の「ヴィーガンスニーカー」で、150ドルの抽選販売が話題をさらった。
これにスニーカー大手各社も追従、環境に配慮した「ヴィーガンスニーカー」というトレンドがあっという間に世界の注目を集めている。
スニーカー業界は以前からサブカルチャー的ファッションの影響を受けてきた。植物由来の素材でできたスニーカーであるというメッセージ性に、余分にお金を払ってもかまわないとする消費者も増えているのだ。
一方、ナイキが開発した厚底シューズ「ヴェイパーフライ」は、世界陸連の新規制によってオリンピックをはじめトップレベルの大会での使用が禁止になる可能性があると英国紙が一斉に報道、その行く末に注目が集まっている。
足への負担を減らしつつ「前への推進力をアップする」という触れ込みだが、トップアスリートからランニング愛好家にまで爆発的に支持され、次々と出る驚異的な記録から「ドーピングシューズ」とすら言われている。
このシューズも余分にお金を払ってもいいと思わせる商品だが、これからはさらなる説得力が求められるのか?
仮に、この「ヴェイパーフライ」が「ヴィーガンスニーカー」だったらどうだろう。あっという間にドーピング批判を退け、オリンピックの公式ウェアになったのでは?
スポーツは肉体の限界と精神の限界への挑戦と言われているが、環境問題への挑戦というメッセージ性が加わることで、より高いステージへと進化するのかもしれない。

| 20.01.31

さとり世代

1月13日に全国で成人式が行われた。かつては主催者である自治体に反抗する荒れた式典が多く見られたが、昨今はその手のニュースは全くなく “荒れない成人式”に戻ったようだ。鬱積する不満すら呑み込む「さとり世代」ともいうべき若者像がそこにある。
1987年から2003年生まれが現在16歳から32歳ぐらい、競争させないゆとり教育で育った世代だ。その完成された姿が今年から二十歳を迎え始めた「さとり世代」なのだろう。
日本経済が縮小し厭世的雰囲気の中で育てられた「さとり世代」の特徴は、総じて「欲がない」ことだ。
低欲望社会では、恋人を欲しがらない、車を欲しがらない、結婚しない、海外旅行に行かない、ましてや留学などしたくない、贅沢しない節約生活を良しとする。
従って人間関係もあまり広げたがらず、なによりも「安定」を望む徴候がある。2013年には、言葉としての「さとり世代」が新語・流行語大賞にノミネートされたぐらいだ。
「さとり世代」は、反面教師としてのゆとり教育の失敗をも身近に見てきている。そのため全ての欲から開放され”さとりの境地“に到達した高僧のように見えるが、よく見るとポジティブな側面も大いにある。これは面白い現象だ。
バブル世代の彼らの親たちは、「もっと稼ぎたい」、「こんな仕事をしたい」、「あんな生活をしたい」という気持ちがドライビングフォースになり、世界人口が激増する中、気がついたら温暖化が進む地球環境を作り出してしまったというところか。
ここ数年、日本の田舎のいたるところが「限界集落」となって、古くから人が住んできた村が捨てられつつある。これは日本だけでなく、世界中のあらゆる田舎から人々は都市に向かっている。
一方、進化し続けるビッグデータとAIによって構築されるグローバル世界は、そもそも人間を時間や労働から解放することを目指していたはずだ。しかし結果として「さとり世代」を生み出し、彼らは今手元にある物を大切にするサステイナブルな考えを強烈に支持している。環境活動家グレダ・トゥンベリがその代表だ。
「さとり世代」の目には、800万軒とも言われる日本の空き家も限界集落も宝の山に見えているかもしれない。「バブル世代」が残した廃棄物の中に、彼らは自然と共に豊かに生きる生活の場としての未来を見出しているのではないだろうか。
日本の現在の姿は、世界の国の未来だ。「さとり世代」こそが地球の救世主かもしれない。だとするとトランプは、もう少しグレダを大事にした方がいいだろう。

| 20.01.24

感染症リスク

中国武漢で新型コロナウイルスによるものと思われる肺炎が流行の兆しを見せ、春節を前に中国政府はもとより世界各国の衛生機関は警戒を強めている。
武漢は中国のほぼ中央に位置し、中国の航空路と新幹線はここを起点に全国に広がっている。世界最大の交通ハブ都市でもある。
タイのバンコクでも肺炎を発症した中国人旅行者から同型ウイルスが検出され、武漢からの観光客だったことで注目が集まった。
中国の一帯一路政策は、ユーラシア大陸だけでなくアジア・アフリカ全土へ中国人労働者を送り込んでいる。そのため新種の感染症を交通ハブ武漢から出さずに撲滅することに、中国政府は全力で臨む構えだ。
今年4,000万人のインバウンド観光客を想定する日本国政府に、感染症に対する同様の覚悟はあるのだろうか?昨年の豚コレラ(CFS)への対応を見る限りその覚悟は怪しい。
昨年、日本政府は豚コレラの発症を遂に認めてワクチンの使用を決定したが、渋々だった。類似事例が複数起こっていたにも拘らず、ワクチン使用によりOIE(国際獣疫事務局)から豚コレラ「清浄国」の認定が取り消され風評被害を含め輸出等に差し支えが出る、という論理らしい。本末転倒である。
第二次世界大戦以降、世界中に派遣されたアメリカの兵士、湾岸戦争特にイラクからの帰還兵の中に、謎のバクテリアで肺炎を発症する感染症が見つかっている。このバクテリアは全世界の米軍基地の院内感染によって広まり、退役軍人を中心に今も後遺症に悩む人は多い。
アメリカでは感染症対策は自己責任で行うものであるという意識が強い。医療専門のホームページが『病院に行くと、他人に感染させたり他の病気に感染するリスクが高いから、家で寝ていなさい』とアドバイスするほどだ。
日本では学校や会社から半ば強制的に病院に行くように言われるが、感染症対策としてはリスキーで時代遅れだ。
これまで日本の製薬メーカーのワクチンは保険適用されず、しかも国内販売に限られていた。アイルランドのShire社を買収した武田製薬はその販売網を使い、遂に日本初のワクチンの世界規模での販売を可能にした。
予防医学の観点からも画期的な判断だ。日本には、感染症を他国へ絶対に出さない、仮に発症しても世界にワクチンを供給する、という確固たる意志が今までなかった。
2020年、GAFAのヘルスケア関連の投資が相次いで発表される。日本の人口は減っても、世界人口75億人時代の感染症対策産業は大いに振興するだろう。
感染症対策は、世界から人を集めるオリパラにおいても大きな注目点だ。日本は大丈夫か?

| 20.01.17

脱グローバル

昨年の大晦日に日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告がレバノンに逃亡、さらに米国トランプ大統領の命令によるイランの革命防衛隊「コッズ部隊」ソレイマニ司令官らの殺害、と次々にニュースが飛び込み、2020年の新年は波乱の幕開けとなった。
そうした中、世界最大の家電IT見本市「CES」が7日、米西部ラスベガスで始まった。従来のテクノロジー企業の枠を超え、世界から約4500社が集結。次世代通信規格5Gをインフラに、コンセプトは「CASE」(コネクテッド/自動運転/シェアリング/電動化)だ。
テーマは「モビール」で、世界の最新技術革新に注目が集まり、人工知能(AI)とインターネット(IOT)技術が描く近未来の生活提案がなされている。
出展者で多いのは自動車関連企業でモーターショーを上回る数だ。今年はトヨタ自動車、VWをはじめ、ブリヂストン、コンチネンタル、京セラやウーバーも出展、かつてない規模で競い合っている。
ソニーは画像センサーを埋め込んだ自動運転電気自動車「VISION-S」のコンセプトモデルを披露。日産もお家騒動の中、新たな電動4輪制御技術「e-4ORCE」を搭載したSUV風リーフを発表した。
ゴーン被告の逃亡劇も話題を振りまいているが、彼は日産を日本の自動車会社からグローバルモビール会社にした立役者だったものの、逃亡で過去の人となってしまった。
グローバル化による企業利益は多国籍化した株主への配当と内部留保に当てられ、日本人に経済的恩恵を与えるとは限らない。日本の経済成長に有効なのは雇用に伴い国内に落ちる金額であって、グローバル本社の内部留保額ではないのだ。
東京大学ものづくり経営研究センターの調査分析によると、自動車1台を生産するのにかかる「人時(作業総量に相当)」は日本がアジア諸国の中で最も少ない。その生産性は中国の2.7倍の効率だという。作業のムダを省き、スピーディーに効率よくモノづくりを進める日本の製造現場の能力は高い。これこそが日本の力だ。そこにお金を落とさなければ日本のサラリーマンは報われない。
国内生産を空洞化して欧米アジア中国に最先端生産技術を移転しているのでは、日本にとってこれほど愚かなことはないだろう。
「CES」ではっきり見えてきたことは、日本には5Gモビール産業をベースに国内の生産基盤を取り戻すチャンスが溢れているということだ。仮に膨大な貿易収支の黒字が出たら、米国から防衛力を買うことで国際収支バランスをとることを考えればよいだろう。
日産は過去の人ゴーンと争うことをすぐにやめるべきだ。

| 20.01.10

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