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コロナる

遂にトランプ大統領が政権移行チームにその業務を始めるよう命じたというニュースが入ってきた。しかし、選挙での敗北は認めないそうだ。
相前後して複数の製薬会社から有効率90%を超えるコロナワクチンの治験結果が発表され、それを受けて米国のダウ平均株価は3万ドルを突破した。
それに対しトランプ大統領は、ワクチンの開発成功は11月3日の選挙前に分かっていたはずだと反感を露わにし、自分の上げた成果をなきものにしようと意図的に発表が遅らされた!と呻いたそうだ。
世界の政治経済は、コロナ禍を利用して利益を得ようとする輩に翻弄されている。正に「コロナる」という表現がピッタリだ。
「コロナる」で敗北したのがトランプ大統領ならば、「コロナる」で大躍進したのがスペースXで「クールドラゴン」の打ち上げに成功したイーロン・マスクであろう。テスラ株は新しい時代の到来を待ち望む買いでコロナ禍の最中に超絶的値上がりをし、ごく短期間に株価は500%以上上昇し、イーロン・マスクはビル・ゲイツを抜いて今や世界第2位の富豪になってしまった。
アメリカは、一日当たり15万人以上の爆発的コロナ感染者で累計死者数25万人を突破しながら、その逆境を利用して経済的な成功を導き出すというしたたかさを持っている。
翻って日本はどうだろう。一日当たりの感染者が2千人を超えただけで大騒ぎだ。死者も累計で2千人である。一日ではない。アメリカの100分の1にも満たない数字だ。日本の医療は毎年1千万人ものインフルエンザ感染者に対処してきた。新型コロナウイルスの感染者数がいまの10倍に拡大したとしても本来十分に対応できる力を持っている。
医療関係者は、COVID-19を「指定感染症第2類以上」に決めてしまった為に医療現場に多大な負担がかかっていることを知っている。しかも今や感染者の症状によってはアビガン、デキサメタゾン、レムデシビルを使う治療法も確立している。
どうしてその事実に口をつぐみ、日本の飲食サービス業のピンチに追い討ちをかけるのだろうか?政治家はポピュリズムに陥り、医者は真実に口をつぐむ。
アメリカの政治家は「コロナる」ことで産業勃興を図るが、日本の政治家は「コロナる」ことで、誠実な同胞が積み上げてきた経済構造の根幹を崩壊に追いやる。トランプも呻いたように、その果実をアメリカの実業家に持っていかれるという愚行をいつまで繰り返すのだろうか!
日本のリーダーは目を醒さなければいけない。

| 20.11.27

ソーシャルハブ

ハンフリー・ボガード主演の映画「カサブランカ」(1942年)の舞台は、第二次世界大戦初期のモロッコの街カサブランカだ。ボガード演じるアメリカ人リック・ブレイン(実はアメリカの工作員)が経営するRick‘s Cafe American は、武力衝突前夜の“フランス国”ヴィシー政権のナチスドイツとのギリギリの交渉の場でもあった。カフェを舞台に戦局を左右するやり取りが行われていく。正に騙し騙される情報交換の場そのものだ。
Rick‘s Cafeは、ヴィシー政権に協力するフランス人からナチスドイツの将校、レジスタンスの闘士そしてモロッコの金持ちまで集まる表向きは中立な「ソーシャルハブ」だ。フランスの北アフリカ政策が産み出した前線基地カサブランカにおける社交場の役割を果たしている。
映画では戦時下の中立地帯で営まれるワクワクする日常の舞台裏を垣間見ることができ、更には第二次世界大戦のフランス国の微妙な立場とヨーロッパ戦線の情報戦の実態を感じ取ることができる。そしてそのような状況下でいかに「ソーシャルハブ」が大切なのかも。
現代では「ソーシャルハブ」というと、先ずはネット上のコミュニティを指すようだ。企業の商品やキャンペーンに関連したSNS上のユーザーオリエンテッドなコンテンツ(UGC)を収集・整理して、公式WEBサイトなどに一覧表示することと定義づけられている。何か機械的で薄っぺらで、ワクワクする雰囲気は全くない。
インターネットの普及は、AIが支配する検索エンジンが人々の行動を自動的に検知し課題解決を探っていくことを促した。人間の嗜好をAIが“忖度”する実にグロテスクな世界だ。
しかし新型コロナウイルスの世界的大流行によるリモートワークの拡大は、「Zoom」や「Teams」、ビデオチャット「Houseparty」などのコミュニケーションアプリに桁違いの成長をもたらした。今年3月に2,000万人程度だった「Zoom」のユーザーは今や2億人規模となり、「Houseparty」は3月のダウンロード数が前月比300倍にまでなっている。
そんな中、音声版SNSアプリ「Clubhouse」が公開前からシリコンバレーで話題だという。どこにいてもオープンな雑談を楽しめるソーシャルアプリとして、新しい体験を高い完成度で実現させようとするものだ。
「Clubhouse」が注目される理由は現実の「ソーシャルハブ」により近い感覚と、その場の一体感を生み出す同期性にあるようだ。音声だけだからこそ実現する、ネット上の究極のRick‘s Cafe Americanだ。
今やネットはバーチャルではなくリアルを求める。ネット上の「ソーシャルハブ」が最後は最も大切な人間の想像力を触発する“音声”に回帰し「Clubhouse」化する、とは面白い。

| 20.11.20

なんちゃって5G

11月13日に待ちに待った「iPhone12 Pro Max」が発売され、第5世代(5G)移動体通信サービス対応機種が市場に各社ほぼ出揃った。これでいよいよスマホも5G時代突入かと思いきや、思わぬ落とし穴がありそうだ。
キャリア各社は整備を予定している5Gサービスエリアを公開しているが、それらを見る限り現時点では“点”でしかなく、“面”に拡大されるエリアは殆どない。 今後最低1年間は「なんちゃって5G」状態が続くようだ。
2時間の映画のダウンロードが4Gで5分、5Gでは僅か3秒だと聞いても、そのためにわざわざサービスエリアを探す人はいない。
IT先進国のお隣韓国では、2019年4月初めに世界に先がけてサムスンが5G対応新型スマートフォン「ギャラクシーS10.5G」を発売した、と同時に商用5Gサービスを開始している。米国も韓国に遅れること1週間、4月11日にはベライゾンが2都市でサービスインしたが、両国ともエリア拡大は困難を極めているようだ。
韓国はなりふり構わず「世界初」に拘ったが、サービス開始から1年半経ってもサービスエリアは限定的で、痺れを切らしたユーザーは安いLTEに回帰していると聞く。
世界各国が続々5Gの商用化をスタートさせている中、日本もやっと今年3月から5Gの商用化が始まり、対応スマートフォンが各社から相次いで発売されている。しかし韓国同様「なんちゃって5G」状態であることに変わりはない。
通信インフラの5G、6Gへの流れは不可逆だが、そのサービスを必要とする自動運転や遠隔医療、バーチャルトラベルといった各種AI産業はまだまだ追いついてこない。何よりも政府の「規制緩和」が先行しなければ普及もない。高速道路が出来ても速度制限が従来と同じでは意味がない。
そもそも莫大な設備投資が必要な5G回線を、3社別々に敷設する必要があるのかが疑問だ。高速道路を自動車メーカー別に作るようなもので、どうせ減価償却で税金を払わないのだから各社にやらせておくという政策では、永遠に携帯料金は下がらないだろう。
昔の鉄道建設公団方式とは言わないが政府主導でインフラを整備し、重複投資を避けるぐらいのリーダーシップが必要ではないか。敵は国内ではなく世界の高速通信インフラとその上を走るAI企業で、米国のGAFAMや中国のBATHといった超巨大グローバル企業に果実を持っていかれているのが現状だ。
たった30年の間に日本企業はグローバル産業に庇を貸して母家を取られてしまった。
航空機も作れず、原発も動かせず、再生エネルギーの供給もできず、時代遅れのリニアモーターに10兆円もかけて水争い?をしている場合ではないと思う。

| 20.11.13

シンクレティズム

世界でもまれな1300年という悠久の時を超えて現存する日本の宝物を見ることができる「正倉院展」が、今年も10月24日から11月9日まで奈良国立博物館で開催されており、コロナ禍下にあっても人気だ。
正倉院は奈良時代に建立された東大寺の宝物倉庫で、聖武天皇の遺愛品を中心に宮内庁が管理する整理済みの宝物だけでも約9,000点が保管されている。
毎年開催される正倉院展はその中から約60点、楽器、伎楽面、遊戯具、調度品、佩飾品、染織品、文書、経巻などで構成される。
中国メディア、今日頭条は2017年11 月30日版で、「1300年前に唐の玄宗皇帝と楊貴妃が日本の天皇に贈った宝物が、現在まで完全な形で残っているのは奇蹟だ」と称賛した。記事は正倉院にある宝物「螺鈿紫檀五弦琵琶」を紹介し、「中華文化絶頂期の面影を見ることができる逸品で、既に全人類共通の文化遺産である」としている。
しかし最新の研究では、中国のみならずシルクロードを経て日本にもたらされたと考えられている正倉院の収蔵宝物は、その90%が日本でその後複製された国産品であることがわかってきている。
聖武天皇の時代(701-756)に先進国中国から遣唐使などにより日本にもたらされた宝物は、世界の最新技術の結晶だった。それらにただ驚くだけでなく、複製作業を通じて如何にして最新技術を学び自らのものにするか、に当時の人々は必死だった。この血の滲むような国産化の努力によって、後に日本文化の源流に「シンクレティズム」という思想が深く刻み込まれたのだと想像される。
「シンクレティズム」とは主に哲学や宗教の分野で使われる言葉だが、「異なる背景を持つ信仰や文化を融合させる」という意味で用いられることが多い。日本は受容(借用)した宗教や外来文化から多くを学び、それらが日本の風土の中で独自に昇華発展してきた国なのだ。
現代の米国を上回る巨大帝国、唐に対抗すべく新しい国づくりを進め、混迷の時期に日本を導いた聖武天皇は、唐が宝物により国内外をまとめていることに倣い宝物の国産化を目指した。
それまでバラバラに生産されていた工芸品の技術者を一堂に集めて「内匠寮」と言われるエリート技術集団を作り、最高品質の工芸品を開発した。宝物の国産化は、日本を生まれ変わらせる乾坤一擲の秘策だったといえよう。
「シンクレティズム」を身につけた現代日本の課題は、世界の最先端に立つリーダーシップ力だろう。国際社会分断の危機を煽る世界の三大超大国を前に、日本には「シンクレティズム」という理念を武器に一石を投じることが期待される。

| 20.11.10

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