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火星の人

2018年夏、火星が15年ぶりに地球に大接近した。これを意識してか火星の生命体発見情報が相次いだのが興味深い。
アメリカ航空宇宙局(NASA)は、火星探査機キュリオシティ(Curiosity Rover)が採取した土壌試料の中から、「太古の生物の痕跡」を発見と発表。( https://mars.nasa.gov/news/8347/nasa-finds-ancient-organic-material-mysterious-methane-on-mars/ ) 
続いて欧州宇宙機関(ESA)が火星の地下に液体の水が存在する証拠を見つけたと発表した。
一方宇宙ニュースサイト「SPACENEWS」は最近、1970年代にNASAが行ったバイキング計画で「火星に生命が存在することが既に示されていたのに隠蔽した」と報じるなど、火星の生命探索は科学的にも盛り上がっている。華々しく発表される火星探査の裏で、NASAは何かを隠しているのだろうか。
火星で「太古の生物の痕跡」が発見されたことは、人類のアイデンティティーにもかかわる「世紀の大発見」といっても過言ではなさそうだ。
太陽系の惑星のうち水星、金星、地球、火星は地球型惑星と呼ばれ、ほぼ40億年前の同時期に生まれており、地殻の生成が極めて似ているらしい。とりわけ火星はその冷却の過程で、数億年前にほぼ現在の地球に近い大気と気温を持つ時期があったと推測される。そう考えると火星は地球の数億年後の姿、金星は数億年前の姿、ということが言えるかも知れない。
「火星の人」は自らの星が次第に冷えていき、大気も失われていくという環境下でどの様に種の保存を図ろうとしたのか?非常に興味深い。「火星の人」の痕跡は、地球の人類にとってはこれからたどる未来を見せてくれる遺跡であり、正にタイムカプセルだ。
いずれにしろ、地中に液体の水が確認され生命が存在する可能性が高まっている今こそ、その痕跡を発見すべく新たな調査を行うときだろう。NASAの火星探査の行方を見守りたい。
ところで米国証券取引委員会から提訴され、テスラの会長職を辞した起業家のイーロン・マスクは、電気自動車ビジネスだけでなく、火星移住計画にも取り組んでいる。彼は宇宙ベンチャー「スペースX」を2002年に設立、わずか10年で大型ロケットの打ち上げに成功し、世界一の宇宙開発企業に成長させた。
中でも「月旅行」計画は、ZOZOTOWNの前澤社長と彼が選んだ8人のアーティストを乗せて、早ければ2023年にも実現すると発表され話題になっている。
いずれはやってくる大氷河期と大気の希薄化、海の蒸発という事態に今から備え、「火星のヒト」の遺跡から学ぶ!人類究極のテーマを追求していく男イーロン・マスクに、世の中はもう少し寛容でもいいのではないだろうか?

| 18.10.26

KITCHIN TABLE

自分の家をコワーキングスペースとして使ってもらいたいフリーランサーと、働く場所を探しているフリーランサーを繋ぐ、女性限定のロンドン発「kitchin table」( https://www.kitchintable.com/ )が注目されている。「kitchen」でない所がミソだ。
コワーキングスペースとは、独立して働く個人が、事務所や、会議室、打ち合わせなどのスペースを共有しながら仕事を行う場所。既存のコワーキングスペースがコミュニティーの形成に向いていないところを改善し、モチベーションとなる仲間のグループ作りから進めていく。
敢えて女性限定とした「kitchin table」では、自分の家の食卓をコワーキングスペースとして解放するホストが、ファシリテーターとしての役割も担っている。ホストの家を訪れた参加者は、その日に達成したいゴールを発表し、ホストは休憩時間にアイスブレイクとなるアクティビティーを用意する。また、ランチタイムも設定されるなど、一緒に働いている人たちのコミュニケーションを促す仕組みだ。良好な人間関係を築く機会となり得るように、最適な人数は3~6人だという。
今年2月にはニューヨーク発のコワーキングスペース大手「WeWork」が日本に上陸し、サービスを開始したばかりだ。いまや数千もの大企業がコワーキングスペースの使い方を研究し、女性登用とイノベーションの促進剤として活用しようとしている。特に「#MeToo」に代表される女性の意識の高まりから、女性をターゲットにしたコワーキングスペースが欧米で続々とオープンしている。
「WeWork」では3200万ドル(約35億円)を投資して、女性専用のコワーキングスペース兼クラブ「The Wing」(https://www.the-wing.com/ )をニューヨークの2カ所に開設、入会は現在8000人待ちなのだそうだ。ロンドンの女性専用のコワーキングスペース『AllBright Club』の共同設立者によると、イギリスでは新卒女性の50%がビジネスにおける成功願望を抱いているにもかかわらず、その割合は2年で16%まで落ち込んでしまうという調査結果もあるようだ。セクハラを含む性差別は女性のモチベーションを低下させており、ストレスのない労働環境への期待がコワーキングスペース発生の原動力となっている。
女性活用がここまで注目されていながら、女性大臣を1人しか登用できない日本の現状。しかも「男性化」することが暗黙の了解であるかのごとき人選。これでは日本の未来はないとしか言いようがない。
まさに生産性がないコミュニティー欠如の「国会」に、コワーキングスペースでも設けてみてはどうだろうか?

| 18.10.19

チョコフレーク絶滅

1967年の発売開始から50年以上親しまれてきた森永製菓の「チョコフレーク」だが、来年夏までに生産を終了すると発表された。1968年に日本初のスナック菓子として誕生したカルビーの「カール」も、昨年の8月生産分をもって全国販売中止となっている。
背景には意外にもスマホの普及が関係しているらしい。薄くコーティングされたチョコレートや表面の塩は溶けやすく手がベトつく。スマホを操作しながらでは食べにくいためスマホの普及で人気が落ち込み、この5年で売り上げは半減したようだ。
なんと言っても「カール」は、1袋300キロカロリーを超えるチーズ味の菓子を口にしたら最後、ただひたすら食べることに専念、指についたチーズの粉をなめるのもたまらなかった。ところが粉まみれをなめたベトベトの指でスマホやパソコンに触りたくないという心理から、天敵スマホの前にカール達は遂にその姿を消すことになったわけだ。
最近ではコンビニでポテトチップスを買うと、店員に「箸をつけておきますね」と言われるのだとか・・・。ポテトチップスは今や箸で食べるのが常識?
スマホの発達は、ライフスタイルとコミュニケーションの本質にも変化をもたらしている。Twitter、Instagram、SnapchatなどあらゆるSNS投稿からは、常に「反応しろ」という無言の圧力がかかる。確かに「いいね!」や「ハートマーク」、(笑)をたくさんもらうとありがたく、心理学的にもドーパミンが出ると判明している。そのためSNS上の“友達”への「いいね!」返しという、義務的なリアクションの強制になっているのだ。
スマホの普及でパソコン離れも顕著化し( http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc111210.html )、総務省によると2012年と2017年の比較で、日本人のパソコン利用時間が一日あたり32分から15分へと半減。スマホの利用時間は逆に75分から108分に増加し、休日だと5時間を超えるというデータもあるそうだ。スマホの利用率増加とパソコン利用者の減少が同時進行で起こっている。
スマホの利用は大半が動画などのSNS閲覧とゲーム関連だが、パソコンの立ち上げ方すら忘れた(知らない?)世代も出現し、世界中のライフスタイルがスマホ主導で劇的に変化している。
スマホは日本人のライフスタイルを変え、日常商品のトレンドすら変えてしまう。かつてカウチポテト、今スマホポテトと言われるような現象を仕掛けると、ヒット商品が生まれるということか?

| 18.10.12

ラグジュアリー開発

世界遺産の仁和寺(京都市)が境内の別棟「松林庵」を高級宿坊に改築し、5月から京都を訪れる超富裕層向けに1泊100万円(税別)で宿泊の提供を始めた。( https://style.nikkei.com/article/DGXMZO32139620S8A620C1H52A01?channel=DF220420167277 )
宿泊は1日1組で、歴代の住職が執務室として使った「御殿」も一晩貸し切りで使用できる。朝食には精進料理が用意されるが、オプションで懐石料理、その他雅楽鑑賞、生け花といった日本ならではの体験も楽しめるという。
改修費に約1億5700万円をかけた「松林庵」だが、これで素泊まり1泊100万円?と思うダサいところがある。平安貴族が使った御殿と庭は特別な素晴らしさだが、宿坊改修のピントがずれている。どうも超富裕層が求めているものに対する迷いに起因するようだ。
いずれにしても創建から1100年余りに亘り、退位した天皇などの皇族が代々の住職を務めてきた由緒ある寺院で、プライベートな時間を過ごす醍醐味は究極と言える。
一方、スーパーヨットで世界を旅する超富裕層を日本に呼び込み、伊豆半島の南端、下田市を盛り上げようという試みもある。1854年に日米和親条約が締結された際に開港した下田は、いわば近代日本の玄関口でもあるという理由らしい。しかし、安田造船所が所有する土地を利用して東京から気軽に遊びに行けるラグジュアリーリゾートを開発する試みは、東京には来ていないと言われる超富裕層を東京から引っ張ってくるという前提自体が矛盾している。下田を無理やり超富裕層と結びつけるのは不自然だ。
IR実施法が日本でも成立したが、IR(統合型リゾート)とはカジノのみならず、ホテル、劇場、パーク、美術館、MICE施設などを持つ。面積では5%未満に過ぎないが、カジノという強力なハイエンド集客装置のおかげで超富裕層が来る可能性が増大して行く。
連動してカジノ以外の施設、特にプライベート空港、100フィート超のヨットのためのハーバー、オーバー7スターのホテルなどの採算性が高まってくるのだ。これがIR開発の醍醐味といえよう。
人種や国籍ではなく“保有資産”によって旅行者がカテゴライズされる時代が来つつある中、超富裕層の好奇心と発信力は、日本のラグジュアリー開発を動かす大きな力となっていくであろう。
IR開発は日本の新しい産業創出の好機であるが、残念ながら現在の日本に担い手は少ない。

| 18.10.05

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