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ヤキトリガイ

日本人の“焼き鳥”インフルエンサー「ヤキトリガイ (yakitoriguy)」がInstagramやYouTube(特に海外)で人気だそうだ。ロサンゼルス・タイムズは「“焼き鳥”の伝道師」として紹介。炭火で焼いてうちわで扇いだりひっくり返したりするだけでなく、鶏を丸ごと一羽全ての部位に捌き、一片の無駄も出さずに焼き上げるところが驚きの日本文化だと報道している。
「ヤキトリガイ」はもともとベイエリアの新興IT企業のビジネスマンで、「アメリカの“焼き鳥”はテリヤキチキンオンリーで、そこに日本文化が入り込む余地がある」と一念発起し、命をかけて“焼き鳥”を世界へ広めようと決心したそうだ。串の一本一本は鶏が部位ごとにいかに異なるかを示す地図であるという。鰻ではないが、一人前の焼き鳥職人になるためには「串打ち三年、焼き一生」と言われ、奥が深く面白い世界なのだ。
YouTubeでは5分ほどで解体する様子を見せ、今や約4万人のフォロワーがいる。インスタグラムでは8万人、そしてTikTokではなんと11万人に迫るそうだ。日本人のように全ての技を徹底的に追求し奥義を極める姿勢を示す国民は少ない。作っている物が日本刀だろうと”焼き鳥“だろうと、スキルを積み上げ知識や経験を獲得し生涯をかけて取り組んでいく――これが日本の職人気質だ。
観光庁が7月19日に発表した2023年4-6月期の訪日外国人消費動向調査によると、インバウンド需要は2019年比95.1%と順調に回復しつつあると言い、今月からは中国人団体観光客が解禁になり更に伸びる予想だ。飲食店で外国人観光客が最も行きたいのは「ストリートフード」と「居酒屋」らしい。「ヤキトリガイ」のお陰か”焼き鳥“への関心も高いそうだ。
話は変わるが、日本が世界に誇る省エネハイブリッドカー(HV/HEV)はなぜかヨーロッパでは化石燃料車カテゴリーに分類されており、このままだと2035年以降にはほぼ全車販売禁止に追い込まれそうだ。燃費6-10km/Lだったガソリン車を35km/Lを越えるまでに進化させて来た正に職人技なのに、だ。この日本のHV/HEV技術が実は電気自動車よりも世界規模でカーボンフリーに貢献することを、電気自動車大国の中国もヨーロッパも恐れている。だからゲームチェンジを仕掛けているのだ。
日本もインバウンド観光客にストリートフードを紹介するだけでなく、日本国内でいかに多くのハイブリッド車が走っているか、「ヤキトリガイ」精神で伝えることが必要だろう。

| 23.08.25

宝亭現象

コロナ5類移行後初となるお盆休みとあって、首都圏近場のリゾートである熱海は台風による天候不順をものともせず大勢の観光客で賑わったようだ。特にアイドルグループ「King & Prince (通称キンプリ)」がロケをした、カツカレーで有名な「宝亭」には長蛇の列ができた。
5月22日にグループから平野紫耀、岸優太、神宮寺勇太の3人が脱退。以来、ベストアルバムのファンクラブ用特典映像「熱海小旅行」のロケで使われすっかり “聖地”となった「宝亭」には全国からファンが押し寄せ、ランチタイムで2時間以上待つこともあるというから尋常ではない。
ファンは判で押したようにメンバーが食べたのと同じメニューのカツカレーやハヤシライスとクリームソーダを注文する。そして食事後は「宝亭」の前で「キンプリ」グッズを手に記念撮影を楽しみ、ジャニー喜多川の性加害問題などどこ吹く風と帰っていくそうだ。
「キンプリ」はあのジャニー喜多川が最後に手がけたグループとしても有名だ。日本でトップの人気を誇るアイドルグループと言っていいだろう。CDデビュー前からファンクラブに12万人以上いたと言われ、デビュー後にはファン登録が加速、ジャニー喜多川の性加害スキャンダルやメンバー3人の脱退発表すらむしろ追い風になったと言えそうだ。ファンクラブは今や100万人超えだそうだ。
今年2月にリリースされたシングル「Life goes on/We are young」は初週売上げで100万枚を突破。4月にリリースされた5人体制最後のアルバム「Mr.5」も120万枚超えを記録している。今年上半期の累計売上184億1千万円は、13年に嵐が記録した109億5千万円の倍近い。ジャニー喜多川はある種狂気の天才なのだろう。
ジャニーズ事務所退所前に平野紫耀がブログに『ジャニーさんごめんねー!目標に届かなかった!!』と明るく書くほど、彼らを海外デビューさせようとしていたジャニー喜多川の存在は大きかったようだ。
未だ収まる気配の無いジャニー喜多川の性加害問題だが、「キンプリ」ファンの間では彼の影響力は死してなお凄いパワーを持続していると言える。
国連人権理事会は今回の性加害問題が青少年に暗い影を落とすと考えているようだが、日本の“宝亭現象”をどう捉えるのだろうか?
遥かに大きな規模のスキャンダルであるローマンカトリック聖職者の性加害問題と「宝亭現象」を比較して、国連人権理事会の審議の成り行きを見守りたい。

| 23.08.18

まやまやぽん!

東京国立博物館で特別展「古代メキシコーマヤ、アステカ、テオティワカン」が開催中だ。主催は東京国立博物館、NHK、NHKプロモーションそして朝日新聞社。NHKでは展覧会を紹介する子供向け番組「まやまやぽん!」を制作し放送しているので、見た人も多いかもしれない。
「あのちゃん」ことタレントのあのと、お笑いコンビ「トム・ブラウン」のみちおが、子供たちに古代メキシコの文化を歌ったり体操や工作で紹介している。その一連の番組の中で、古代メキシコで行われていた“生贄の儀式”をテーマにした歌と踊りが「体操でぽん!」で何気なく放送されているのだが、子供向けにしては内容が怖いと問題になっている。
曲に合わせてユニークな体操をポップな雰囲気で踊っているが、その歌詞は「負けたら心臓ささげます」や「集団生贄200人見てきたよ」。「天国に行きたきゃ楽しちゃだめだ」「心臓どくどくささげよう!」等とかなり過激なのだ。
展覧会では「チャクモール」と呼ばれるマヤ文明で生贄の儀式で使われた石造りの遺物が展示されている。確かに古代メキシコの人々にとっては、自然界の森羅万象を支配する神々を敬い神とつながるためには、人間の一番大切な命の源“心臓”を奉納する事も恐れなかったのだろう。
神事の中で、人間の生きた心臓を生贄として献上する儀式は3000年以上も続いたようだ。しかし、人権意識が大切にされる現代においては、なかなか人間の生贄は理解し難い風習であり、地球上からはほぼ無くなっている。
そして、番組の中では生贄とは何であるかの説明を飛び越して、この一連の歌詞で日本の子供達に古代メキシコ文化への親しみを感じさせようとするのは、ちょっと飛躍し過ぎだろう。
ところで、古代からごく最近まで“生贄”や“間引”の習慣は世界中にあった。日本も例外ではなく、江戸時代に生まれた童謡にもその名残がある。例えば「通りゃんせ」は、横断歩道のメロディで耳にしたり広く親しまれているが、内容は貧しい農家の口減しを示唆する様な歌詞が続く。厳しい自然と対峙した農民の苦しみから生まれた童謡なのだ。「通りゃんせ」で歌う「行きはよいよい帰りはこわい」は、つまり「売られた子は帰りはここを通らない」という意味らしい。知って唄うと意外と怖いのだ。
現代の日本で、いくら古代メキシコ文明の紹介とはいえ、NHKがお昼からあっけらかんと「まやまやぽん!」で歌う歌詞が露骨な “生贄表現“はありえないだろう。
それとも日本の森羅万象をコントロールできると勘違いした神(NHK)としては、受信料(生贄)が足りないとでもいいたいのだろうか?

| 23.08.04

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