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まやまやぽん!

東京国立博物館で特別展「古代メキシコーマヤ、アステカ、テオティワカン」が開催中だ。主催は東京国立博物館、NHK、NHKプロモーションそして朝日新聞社。NHKでは展覧会を紹介する子供向け番組「まやまやぽん!」を制作し放送しているので、見た人も多いかもしれない。
「あのちゃん」ことタレントのあのと、お笑いコンビ「トム・ブラウン」のみちおが、子供たちに古代メキシコの文化を歌ったり体操や工作で紹介している。その一連の番組の中で、古代メキシコで行われていた“生贄の儀式”をテーマにした歌と踊りが「体操でぽん!」で何気なく放送されているのだが、子供向けにしては内容が怖いと問題になっている。
曲に合わせてユニークな体操をポップな雰囲気で踊っているが、その歌詞は「負けたら心臓ささげます」や「集団生贄200人見てきたよ」。「天国に行きたきゃ楽しちゃだめだ」「心臓どくどくささげよう!」等とかなり過激なのだ。
展覧会では「チャクモール」と呼ばれるマヤ文明で生贄の儀式で使われた石造りの遺物が展示されている。確かに古代メキシコの人々にとっては、自然界の森羅万象を支配する神々を敬い神とつながるためには、人間の一番大切な命の源“心臓”を奉納する事も恐れなかったのだろう。
神事の中で、人間の生きた心臓を生贄として献上する儀式は3000年以上も続いたようだ。しかし、人権意識が大切にされる現代においては、なかなか人間の生贄は理解し難い風習であり、地球上からはほぼ無くなっている。
そして、番組の中では生贄とは何であるかの説明を飛び越して、この一連の歌詞で日本の子供達に古代メキシコ文化への親しみを感じさせようとするのは、ちょっと飛躍し過ぎだろう。
ところで、古代からごく最近まで“生贄”や“間引”の習慣は世界中にあった。日本も例外ではなく、江戸時代に生まれた童謡にもその名残がある。例えば「通りゃんせ」は、横断歩道のメロディで耳にしたり広く親しまれているが、内容は貧しい農家の口減しを示唆する様な歌詞が続く。厳しい自然と対峙した農民の苦しみから生まれた童謡なのだ。「通りゃんせ」で歌う「行きはよいよい帰りはこわい」は、つまり「売られた子は帰りはここを通らない」という意味らしい。知って唄うと意外と怖いのだ。
現代の日本で、いくら古代メキシコ文明の紹介とはいえ、NHKがお昼からあっけらかんと「まやまやぽん!」で歌う歌詞が露骨な “生贄表現“はありえないだろう。
それとも日本の森羅万象をコントロールできると勘違いした神(NHK)としては、受信料(生贄)が足りないとでもいいたいのだろうか?

| 23.08.04

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