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読書感想文

今年もそろそろ子どもたちの夏休みが始まる。令和になってICT(情報通信技術)の時代になっても、どうやら夏休みの憂鬱な宿題の定番は「読書感想文」で、昔も今も大きく変わっていないようだ。
子供の悩みをよく知る(株)パステル総研が、2021年7月初旬に実施した「夏休みの心配事アンケート」によると、子どもが1人で夏休みの宿題をやり切れると答えた親はたったの11%、86%が何らかの形で親のサポートが必要であると回答したそうだ。特に「読書感想文」については苦手な親子が35%に上ったという。
しかし、今年4月に実施された全国学力・学習状況調査では、小学6年生の国語(テスト時間45分)の問題3題はすべてが記述問題だった。それぞれ100字、100字、60字以内でまとめよというものだが、自分の考えをまとめる力は読解と記述問題でよく分かるから、だそうだ。ChatGPTなど進化を続ける生成AIに対し、現代の子供は並の読解力では指示も出せずに立場が逆転することさえ出てくるようだ。
今年の3月に発表されたChatGPT-4では、アメリカの大学入学共通テスト「SAT」の読解で710/800点、数学で700/800点を取るなど、上位10%に入るという優れたパフォーマンスを示したらしい。日本の医師国家試験でも合格ラインを超えるとの研究結果が報告され、AIの加速度的進化に「もはや人間を超えた」と感じる人も多かったようだから大変だ。
一方京大情報学部での"MSOパラダイム"についての課題では、「ChatGPTを敢えて使ってレポートを書け」という逆説的な出題が話題になった。ChatGPT-4には新しいMSOパラダイムの概念と過去データが十分に取り込まれていないため、正解を出すには人の知識が先行してGPTに対して指導し、書き直しを命じていかなければならない。つまりこれは学生に「ChatGPTに対し自分が必要とする解を得るために、上手く表現し伝える文章力があるか?」を試そうという課題なのだ。
「読書感想文」は子供の読解力と記述力を高める絶好のチャンスだが、将来の生成AIとの戦いに向けた準備とも言える。本を読む際の子供ならではの視点と感じ方は、創造性の始まりでもある。過去のデータベースを基に検索力だけで勝負する生成AIに対し、未来へ向けた人間独自のクリエイティビティを基に如何にして生成AIを使いこなすか?は、人間の尊厳の部分だろう。
デジタル庁職員は大臣も含めて、全国学力・学習状況調査の小学6年生の国語読解問題で、一度適性診断を受けてみてはどうだろう?

| 23.07.21

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