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超安定

世界経済フォーラムが2022年のジェンダーギャップ指数を発表した数日後、ザ・リッツカールトン日光で「G7栃木県・日光男女共同参画・女性活躍担当大臣会合」 が開催された。案に違わず日本は今年もG7諸国中最下位、146カ国中125位(前年から9ランクダウン)だった。
男女共同参画会議では、イタリア、カナダ、フランス、アメリカ、イギリス、ドイツが女性大臣を送り込む中、議長国を務める日本は“男性”の小倉女性活躍担当大臣、これも期待通り?違和感満載の会議運営となった。米国『タイム』誌が待っていたかのように日本のジェンダー平等の遅れが浮き彫りになったと指摘したが、あまりにも予定調和的批判記事だったためかインパクトは無かった。
今回の男女共同参画会議の直前の6月21日に、自民党は審議不十分のままLGBT理解増進法を成立させている。見かけで男女を区別してはいけない時代が来たとばかりに男性の小倉大臣を、女性以上に女性の気持ちが分かるかもしれない?と登壇させたのではと見るのは穿ち過ぎか。
そもそも歴代23人の内閣府特命担当大臣(男女共同参画)には女性大臣が12人もいたそうだが、女性の社会進出にほとんど変化はなかった。国会議員や閣僚の約90%を男性が占め、上場企業の役員に占める女性の割合が11.4%に過ぎない日本の現状も改めて指摘されたが、「それがどうした?」と言わんばかりの厭世的気分が流れているのが現在の日本社会だ。
一方、国際シンクタンクの経済平和研究所(IEP)が発表した2023年版「世界平和度指数(Global Peace Index)」は、平和度指数の高い国家にアイスランドやアイルランドなどと並んで日本を10位に選んでいる。北欧をはじめ人口が少ない国が上位を占める中、アジアからランクインしたシンガポールと日本だが、人口が1億人を超える国で平和指数が10位以内なのは日本だけだった。
エコノミスト誌が推奨する「世界で最も住みやすい街」ランキングでも、ウィーン、コペンハーゲン、メルボルンとヨーロッパ系の小さな街が上位に並ぶ中、やはり10位に大阪が入って注目されている。大阪は他を圧倒するカオスな巨大都市であるのに、だ。日本はジェンダーギャップが大きく保守的な国だが、「安全で住みやすく、食事がうまくて安い超安定国家」なのだ。
江戸時代の“超安定”封建社会は黒船という外圧に屈して資本主義社会へ扉を開いてしまったが、未だに残る後悔が国際会議で見え隠れしてしまうのかもしれない。

| 23.07.07

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