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U.S.A.

6月6日にDA PUMP3年8カ月ぶりのニュー・シングル「U.S.A.」がリリースされた。
「どっちかの夜は昼間」「C’mon, baby アメリカ」などと、知らず知らずのうちに歌詞を口ずさんでしまう謎の中毒性がある曲だ。リリースに先立ちYouTube ( https://www.youtube.com/watch?v=sr--GVIoluU )でミュージック・ビデオが公開されると、その楽曲の世界観、ボーカルISSAのフォーメーションダンスのスキルと圧倒的な歌唱力に絶賛の投稿が相次ぎ、あっという間にYouTubeのトップトレンド入りを果たし、今や再生回数3000万回を超えたそうだ。
沖縄出身のISSAにとって、フェンス1枚で隔てられた向こう側のアメリカ軍基地は、小さい頃からその文化に憧れたり、真似したり…歌詞にもある通り、まさに自分は「憧れてたティーンネイジャー」だったと明るく語る。当時感じていたこと、自分のルーツにも通じる歌詞だと思って歌っていると。
「U.S.A.」は、もともと1992年にリリースされたJoe Yellow「USA」のカバー曲だ。しかし歌詞は新しく書きおろされたもので、オリジナルの対訳ではない。DA PUMPのみならず、ある意味現代の日本人が抱いているアメリカへのメッセージが込められているようにも聞こえる。
「だけれど僕らは地球人 同じ星(ふね)の旅人さ」と、若いころ憧れていたアメリカが、見上げる存在から同じ目線の存在へと変化したことが強調されている。
「憧れてたティーンネイジャーが 競合してく ジパングで」、10代の頃はアメリカに憧れているだけだったけれど、今は日本で競い合っているという強い意志が感じられる。
「ユナイテッドする 朝焼け」では、ただ競い合うだけでなく、ともに頑張って同じ朝焼けを迎えよう!と結んでいる?
同じ沖縄出身で同世代の安室奈美恵が、かつてスーパー・モンキーズとしてのデビュー曲で歌った「ミスターU.S.A.」が思い出される。売野雅勇の歌詞には、アメリカン・グラフィティ的な『ビーチサイドのアメリカ』は日本であって日本ではない治外法権の場所だという、今なお沖縄が抱える葛藤が描かれていた。沖縄本土返還から20年の年であったが、安室奈美恵というまさに“沖縄”を背負ったアイドルの誕生だった。
今回の「U.S.A.」は“謎の元気が出る中毒性の名曲”といわれている。沖縄が戦後の呪縛からようやく離れ、新しい日本としてアメリカと向き合えると思っていたら、今度は“日本”全体がアメリカの呪縛に取り込まれ、属国になっていた?という笑えないメッセージが込められているようにも聞こえる。

| 18.07.27

ストロー狩り

スターバックスは7月9日、世界中の約2万8000店に上る全店で、2020年までに従来のストローの使用をやめる方針を打ち出した。スタバが使用するプラスチック製ストローは、年間10億本を超えるという。
一方マクドナルドは5月、プラスチック製のストローを使い続けるかを株主に問う投票をおこない、今後も使い続けるという結論に至った。しかしSNSなどでその姿勢を非難する声が多く上がり、直後の6月、英国とアイルランドで9月からの紙のストローへの切り替えを決定した。
他にも欧米のフードサービス会社や航空会社が同様の取り組みを次々と発表し、あたかも世界は“ストロー狩り”状態だ。
3年程前ウミガメの鼻からプラスチック製のストローを10分近くかけて研究者が引っ張り出す、胸を衝く動画( http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/081900226/ )がネット上で話題になった。今年の初めには世界の海辺が83億本ものストローで汚染されているという研究結果も発表された。世界中の海で生き物を脅かす存在になったプラスチック製ストローをなんとかしなければという声が高まっている。
ところが海に流出している毎年800万トン以上のプラスチックゴミのうち、ストローが占める割合はわずか0.025%なのだそうだ。それでもこれが環境問題の新たな標的になったのは、エンドユーザーにアピールしやすいという判断があったのだろう。
今年6月にカナダで開催されたG7首脳会議でもプラスチックごみによる海洋汚染の問題が協議され、具体的な対策を各国に促す合意文書が「海洋プラスチック憲章」としてまとめられた。
しかし、驚くべきことに日本とアメリカは署名しなかったのだ。この事はあまり報道されなかったが、世界中から海洋国日本に対する非難の声が上がる一方で、EUはしたたかにプラスチックのリサイクルや代替品への投資を積極的に促して評価を得た。
日本は京都議定書でアメリカの批准が得られず孤立したことのトラウマからか、環境問題、プラスチック問題等、いつも肝心なところでパラダイム転換のリーダーシップを取らず、アメリカ追従を決め込んでしまっている。
個別問題としてのストローにだけ気を取られていると、“プラスチック廃棄物回収”というもっとも重要な論点を見失いがちだ。 “海洋汚染削減”は、各国にとって国際政治のさまざまな野心が潜んだ、国益を巡る戦いの場であるということを認識すべきだ。
“ストロー狩り”に惑わされてはいけない!

| 18.07.20

ASMR

物を噛む時の咀嚼音は、音フェチの人にはたまらない快感、心地よい感覚を指す「ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)」と呼ばれるジャンルに分類される音だそうだ。「焚き火の音」や「氷を食べる音」、「ハサミをひたすらチョキチョキする音」も「ASMR」だ。
シンガーソングライター・黒木渚さんがフジテレビの番組「アウト×デラックス」で、「咀嚼(そしゃく)音フェチ」であることを明かした。動画サイトで「咀嚼音」を聞くのが習慣だという。中でもお気に入りは就寝前に聞く「フライドチキンを食べる音」で、カリっとした食感と肉のジューシーさが伝わってくるのがたまらないそうだ。「大きな頭蓋骨の中に入っているみたいな気持ちなんです」「官能的に聞こえる時があるんですよ」と魅力を語った。
実際YouTubeで「ASMR」(https://www.youtube.com/results?search_query=ASMR )を検索すると、海外を中心に多数の動画がヒットする。「ASMR」専用のチャンネルもあり、100万人超の登録者数を誇る配信者もいるとのこと。
「ASMR」を直訳すると「自律感覚絶頂反応」だが、聴覚から自律神経が刺激され、聞く人によっては脳がとろけそうに気持ち良くなる、いわゆる「音フェチ」「耳フェチ」の世界だ。
ただこうした「ASMR」の効果が本当にあるのかどうか、科学では証明されていない。特定の認知的な刺激に対し起こる不随意反応(無意識の反応)であると推測される。刺激によって脳内の電気活動にある種の発作が生じて“快感”になるらしい。
80%以上の情報が視覚からもたらされると言われる中、「聴覚優位」に快感や安心感を得る。ASMR動画の聴視者の中には不眠症やPTSDなど心的な問題を抱える人も多く、彼らは自分に合った薬を探すように自分に合った音を探し、その音を睡眠誘導剤代わりにしているのだ。
大手企業はすでに「ASMR」を使った広告を展開、北欧家具販売のIKEAは自社で卸している家具の心地よさを伝えるために、ベッドシーツを撫で触った際に発生する音を25分間流す動画広告を配信している。音を通して快感を求める時代になってきていると言えよう。
そもそもYouTubeはアップロードするとき音源が圧縮されるため高音域が聞こえづらい。「ASMR」は音の世界の可能性と深みを広げてくれるかもしれない。
中国政府は人の感覚に働きかける、そんなよく分らない現象を許容できなかったようで、6月8日に国家ポルノ・違法出版物対策局が中国の全ての主要な動画サービスに「ASMR」ビデオの削除を命じたそうだ。

| 18.07.13

リケロウ(理系老)

ひな壇の正しい位置に雛人形を配置するゲームアプリ『hinadan』 ( https://app-liv.jp/1199778491/ )の開発をしたのは、なんと81歳のおばあちゃんだった。
アプリを起動すると、ゲームの遊び方がナレーションとともに表示される。昔話を聞きながらおばあちゃんと一緒にプレイするような、「ようこそお越したもれました …」。上品な言葉遣いが、昔話を聴いているようなほっこりした気分になる。不正解によるゲームオーバーもない。ポン、と鼓の音とともに「正解」の文字がでる。当てずっぽうにやってもクリアできるが、逆にそれがとてももったいない気分になり、思わず誰かと触れ合いたくなる不思議なアプリだ。
81歳の若宮正子さんは、パソコン講師にアプリ開発を教わりながらも、プログラミングは自力で行い、説明文はカタカナを避けるなど、高齢者でも簡単に遊べるゲームとしてリリースした。昨年2月に配信された『hinadan』は1年余りで9万のダウンロードを記録して世界を驚かせた。米アップルの世界開発者会議にも招かれ、ティム・クックから「あなたに刺激を受けている」と言葉をかけられたそうだ。アプリは英語、中国語に続き、友人の手で韓国語やスペイン語に訳される予定だ。
彼女はシニア層に対して、「リケジョ」ならぬ「リケロウ」を増やすべきと提唱している。これからの時代の加速やIOT技術を使いこなす理数系の頭がないと、年齢に関係なく生存が難しくなると訴えている。
かつてアメリカが今後力を入れるべき教育として「STEAM(スチーム)」という言葉が話題になった。「科学(Science)」「技術(Technology)」「工学(Engineering)」「芸術(Art)」「数学(Mathematics)」の頭文字をとったもので、「理系+芸術」の教育スタイルのことだ。「理系」の学びを「つなぐ」「ふくらませる」ために「芸術」の創造性が必要だと判断してのことだ。
しかしその一方で日本の基礎教育の中で、いま図工の時間が減っているらしい。「創造性」の時間が削減されているのだ。科学に創造性を掛け合わせるからノーベル賞級の独創的な研究が生まれるのであって、クリエイティビティの過小評価には危機感を覚える。
ピカソは92歳、ミケランジェロは89歳、ダリは86歳、マティスも85歳まで生きた。これらの長寿アーティストが現在に生き、ITスキルを持っていたとしたら?正に「理系老(リケロウ)」ということか!
これからは年齢やジェンダーは壁ではない。発想を変えれば、高齢化社会こそが未来の可能性を広げる素晴らしい環境であることを認識したい。

| 18.07.06

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