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ストロー狩り

スターバックスは7月9日、世界中の約2万8000店に上る全店で、2020年までに従来のストローの使用をやめる方針を打ち出した。スタバが使用するプラスチック製ストローは、年間10億本を超えるという。
一方マクドナルドは5月、プラスチック製のストローを使い続けるかを株主に問う投票をおこない、今後も使い続けるという結論に至った。しかしSNSなどでその姿勢を非難する声が多く上がり、直後の6月、英国とアイルランドで9月からの紙のストローへの切り替えを決定した。
他にも欧米のフードサービス会社や航空会社が同様の取り組みを次々と発表し、あたかも世界は“ストロー狩り”状態だ。
3年程前ウミガメの鼻からプラスチック製のストローを10分近くかけて研究者が引っ張り出す、胸を衝く動画( http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/081900226/ )がネット上で話題になった。今年の初めには世界の海辺が83億本ものストローで汚染されているという研究結果も発表された。世界中の海で生き物を脅かす存在になったプラスチック製ストローをなんとかしなければという声が高まっている。
ところが海に流出している毎年800万トン以上のプラスチックゴミのうち、ストローが占める割合はわずか0.025%なのだそうだ。それでもこれが環境問題の新たな標的になったのは、エンドユーザーにアピールしやすいという判断があったのだろう。
今年6月にカナダで開催されたG7首脳会議でもプラスチックごみによる海洋汚染の問題が協議され、具体的な対策を各国に促す合意文書が「海洋プラスチック憲章」としてまとめられた。
しかし、驚くべきことに日本とアメリカは署名しなかったのだ。この事はあまり報道されなかったが、世界中から海洋国日本に対する非難の声が上がる一方で、EUはしたたかにプラスチックのリサイクルや代替品への投資を積極的に促して評価を得た。
日本は京都議定書でアメリカの批准が得られず孤立したことのトラウマからか、環境問題、プラスチック問題等、いつも肝心なところでパラダイム転換のリーダーシップを取らず、アメリカ追従を決め込んでしまっている。
個別問題としてのストローにだけ気を取られていると、“プラスチック廃棄物回収”というもっとも重要な論点を見失いがちだ。 “海洋汚染削減”は、各国にとって国際政治のさまざまな野心が潜んだ、国益を巡る戦いの場であるということを認識すべきだ。
“ストロー狩り”に惑わされてはいけない!

| 18.07.20

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