trendseye

巨大地震注意

8月8日の宮崎県沖の日向灘を震源とする震度6弱の地震を受けて、気象庁から初めて「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発出された。巨大地震はいつ来てもおかしくないと専門家の間で緊張が高まっている。
「今後1週間程度は巨大地震へ備えるよう」と呼びかけたため、お盆休みを控えた観光地では宿泊キャンセルが相次ぎ、対象エリアの海水浴場も閉鎖され、水や食料品の買いだめをする動きが目立った。今回は「巨大地震注意」に「巨大台風の関東接近」も重なり、東海道新幹線が東京-名古屋間の計画運休を行うなど、観光業は踏んだり蹴ったりだったが、国家にとって大きな危機が迫っているという緊迫感は何故か乏しかった。
政府もマスコミも事態の深刻さをストレートに伝えて国民がパニックになるのを恐れたのか、AIによる南海トラフ巨大地震発生時の被害が甚大になるとの情報を把握しながら、人的被害(死亡予想)や経済的被害といった深刻な数字はほぼ公表せず、国家存続の危機を訴える政治家も皆無という有様だった。
AIによる被害想定は以下の通り。「地震の規模と影響範囲は、マグニチュード8から9クラスの巨大地震が予想され、静岡県から宮崎県にかけての一部地域で震度7、周辺広範囲で震度6強から6弱の強い揺れが想定される。さらに関東から九州にかけての太平洋沿岸の広域で10メートルを超える大津波が襲来する可能性が高い。最悪の場合死者数は32万人を超え、30都道府県で甚大な被害が発生する。」しかも復興にかかる費用は1,410兆円と首都直下型地震の1,001兆円を上回り、復興に要する期間は20年と予測しているのだ。
これ程の巨大地震を想定しながら、シェルターの設置、電線地中化をはじめ時間がかかる対策が遅々として進まないのが日本だ。問題先送りで、何年たっても避難場所が体育館での雑魚寝とはあまりにも情けない。今回、東大総合防災情報研究センターが対象地域の住民5600人にインターネットで調査した結果も現実との乖離が甚だしく、「家族との連絡方法を確認した」が9%、「家具の転倒防止の確認をした」は8%というお粗末なものだ。
100-150年周期で繰り返し起きている巨大地震は広島原爆以上の被害が予想され、しかも戦争とは違って政治外交力で防げるものではない。防衛予算に規模で優先する防災復興予算を組んでもおかしくない事態である。
トップが判断を先送りにすると、カナダ企業から買収提案を受けたセブン&アイHD然り、いかなる名門企業や国家も、歴史が示すごとく必ず衰退(時に消滅)するのである。

| 24.08.23

CATEGORY

  • BOOM
  • FOOD&RESTAURANT
  • LIVING&INTERIOR
  • SCIENCE&TECH
  • TRAVEL
  • TREND SPACE

ARCHIVES


1990年9月~2006年7月までの
TRENDS EYEの閲覧をご希望の方は
こちらへお問い合わせください。
ART BOX CORP.