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100年シミュレーション力

10月8、9の両日に行われた注目の「竜王戦七番勝負」で、藤井聡太三冠が神経戦を制して先勝した。1000手先まで脳内シミュレーションをすると言われる将棋だが、藤井棋士も豊島棋士も「ディープラーニング(DL系)」と呼ばれるソフトを導入して技を磨いているそうだ。人間が入力した棋譜情報に依存せず自主的に考えるAIソフトによるシミュレーション訓練だ。
従来型のAIが一般的な将棋の常識に則って読み進めたデータから良い手を示すのに対して、DL系AIは局面を画像のように掴んで特徴を抽出し、最後の局面まで見通した時の勝率によって手を示すらしい。
話は全く変わるが、敗戦後の1946年(昭和21年)1月1日に発せられた詔書で、昭和天皇は「天皇を現御神(アキツミカミ)とするのは架空の観念である」と述べ、自らの神性を否定して“人間宣言”をした。後に天皇の地位に根本的な危機をもたらすことになるのだが、同日マッカーサー元帥はこの詔書に対する声明を出し、(自ら仕掛けておきながら)天皇が日本国民の“民主化”に指導的役割を果たしたと高く評価してみせたのだった。
この天皇の“人間宣言”が何をもたらしたのか?天皇が現御神であった旧憲法下では、皇后以外の権典待といわれる女性から生まれた男子にも皇位継承を認めていた。しかも11の宮家を藩屏として皇位が絶えないように配慮していた。これは歴史に照らして必要と考えられていたからだ。
にもかかわらず新憲法下では、皇室典範の第1条で「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と定められる。そして大正天皇と貞明皇后の間に4人の男子がいたにも関わらず、現実には戦後100年も経たずに皇室は皇位継承の危機に見舞われているのだ。DL系AIでシミュレーションするまでもなくすぐに答えが出るような結末だ。
追い討ちをかけるように秋篠宮眞子さまが10月26 日に婚姻届を出して皇室を離脱する。眞子さまの結婚は、一時金など皇室としてのしがらみ?を断ち切れば内親王でも“人権”を語り自らの意思で皇室を飛び出すことができる、という前例を示すことになった。
終戦当時の米国民政局は、「従順な日本を永遠に保持するため」に天皇の“人間宣言”を演出したが、100年後の皇室存続の危機を当時既にシミュレーションしていたかのようだ。
日本人に今最も必要なことは、現御神やアメリカの詔書に従属するのではなく、100年先を自らシミュレーションしてそれに備える力を持つことだろう。

| 21.10.15

オウムアムア

2016年10月に地球上の複数の天文台によって、全長約400メートル幅約40メートルの葉巻形の小惑星が、太陽系外から超高速で飛来した“恒星間天体物”として確認された。この恒星間天体物の観測は宇宙観測史上初めてと認定、2017年にはハワイ語で「使者、偵察者」を意味する「オウムアムア(Oumuamua)」と名付けられて話題になった。
米ハーバード大の宇宙物理学者シュムエル・ビアリー(Shmuel Bialy)氏らは、最近の論文のプレプリント版の中で突飛な仮説と断りつつ、「オウムアムア」は「地球外文明によって地球近辺に意図的に送り込まれた探査機かもしれない」として議論を巻き起こした。
それと関連するかのようにトランプ前米大統領が昨年12月に署名した新型コロナウイルス対策法案の中に、国家情報長官室は180日以内にUFO(未確認飛行物体)についての全情報を網羅した報告書を米議会に提出するべきだという興味深い条項が入っていたのは記憶に新しい。
トランプ大統領ならではの突飛な?要請だが、狙いがあったようだ。提出期限が近づく6月25日、米国防総省と国家情報長官室は2007年に2,200万ドルの予算で設立された「先進的航空宇宙脅威識別プログラム(AATIP)」の存在と共に、未確認飛行物体の調査報告書を明らかにした。
それは2004年11月から21年3月の間に米軍パイロットが「説明できない物体」に遭遇した144件の事例を調査したもので、UFOが別世界からの訪問者の存在を示すものだと考える人々にとっては大いに興味をそそるものだった。しかしパイロットが目撃した物体が正確に何であったのかを高い信頼度で推論できた事例は、気象観測用バルーン1件だけだったそうだ。
だが、人々の想像力をさらにかき立てることになったのはトランプ大統領による宇宙軍の創設だ。今や米軍は5軍体制となり膨大な軍事予算を必要としている。2021年は人類の宇宙生命体との遭遇を予感させた年になるのだろうか。
今のところハワイ大学などの国際研究チームは、「オウムアムアは完全に天然起源の天体である」とする研究結果を発表、地球外文明由来の人工物説に反論している。
専門知識や権威がこれまでに無く疑問視され、UFOを巡る議論やCOVID-19の感染ルートの議論は今の人間の知識の限界を浮き彫りにしている。そんな中でも平凡な日常を超越する「何か」を信じたいという気持ちが人々の間に根強いことも事実だ。
イラクやアフガンで明らかになったように軍需産業の拡大のためには戦争をも厭わないアメリカの政治家にとって、「太陽系外文明から地球を守る!」というテーマは何にもまして魅力的であるようだ。

| 21.10.08

Myスマボ

ソフトバンクグループの孫会長兼社長が、AI(人工知能)搭載のスマートロボット「スマボ」を推奨している。「スマボ」は孫氏の造語らしい。ソフトバンクと言えばヒューマノイド型ロボット「Pepper」が有名だが、人が動作をプログラミングする必要があり決まった動きしかできないので、携帯でいえば「ガラケーロボット(ガラボ)」だという。
「Pepper」は2014年に世界初の感情認識ヒューマノイドロボットとして開発され、ロボティクスソリューションの発展を推進、世界70ヵ国以上で累計25,000台を超えて導入され、小売り、観光、医療、金融、教育等様々な現場で活躍してきた。しかしここに来て流石に古めかしい感じがしてきた。
携帯電話が一瞬でガラケーからスマホに変わったように、「ガラボ」がAIで臨機応変に自ら行動を選ぶ「スマボ」に変わるのは時間の問題だと孫氏は言いたいのだろう。
「スマボ」があらゆる産業の労働力に置き換わっていくと、労働時間が1日8時間/週5日に限定された人間と違い24時間365日稼働できるため、労働時間は3倍、生産性は3.5倍となり、競争力は双方を乗じ10倍になると孫氏は予測。「スマボ」が日本の産業構造を変えていく鍵になると言う。
「スマボ」がどんどん自己革新して成長していくと、人間の職は奪われるのだろうか?人の代わりに効率良く働いてくれる分、人間も相応に変化する必要があるのだろう。
平均的な人間は1日に約6万から7万もの考え事をするが、そのうちの90%以上は同じ内容だと言われている。いくら本を読んだり新しいことを学んだりしても、活用する前に忘れてしまうそうだ。
アメリカの人気ブレインコーチJim Kwik が伝授する「利き手と反対の手での歯磨き」は人間の進化に有効らしい。いつものように無意識では歯磨きさえできなくなる。この体験を繰り返すと本当に注意が必要な時、例えば人の名前を記憶したり読書をしたりする時に容易に気が散ることはなくなるそうだ。人間の脳もAIの一種と考えると、神経回路は常に成長進化していける。
既に現代人はスマホなしでは生活できなくなっている。スマホが記憶力を始め人間機能の拡張子になっているからだ。孫氏が目指す「スマボ」は人間の労働を代替する独立型か?ドラえもんのような帯同型か?それともAI機能付きパワースーツ「ハル」として常時装着するサイボーグ型か?
近い将来、携帯を買い替えるように「Myスマボ」を買う時代が来ることに疑いの余地はない。

| 21.10.01

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