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ガイア理論

1960年代にイギリスの科学者ジェームズ・ラブロックは、地球を自己調節機能を有するひとつの生命体ととらえる「ガイア理論」を発表した。地球上の人間の数が増えれば人口を減らすウイルスが出現する確率が高まり、地球自ら生態系のバランスを取ろうとするというものだ。
そして2019年10月、ニューヨークで世界経済フォーラム、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、ジョンズ・ホプキンス健康安全保障センターの共催で行われた「イベント201」において、世界人口がこのまま無防備に増えていくとコロナウイルスが18カ月以内に6500万人の死者を出すようなパンデミックが起こり、世界経済を大暴落に追い込むことになる、と発表されたのだ。
このイベントは新型コロナウイルスが武漢から世界に拡散する6週間も前に開催されていたが故に非常に興味深い。それから2年を経て2021年10月現在、実際には全世界で約2億4500万人が感染したものの死亡者は約500万人と想定の10分の1以下だった。
ビルゲイツ曰く、これはワクチンの早期開発を目指したビル&メリンダ・ゲイツ財団の巨額の投資の成果だと。
この一連の動きから巷ではSNSを通じて、ビルゲイツは世界の人口制御を狙いワクチン接種を利用している、という陰謀論が広がった。ワクチン開発会社の殆どがユダヤ系であったことも接種拒否の社会運動が起きた一因だろう。
一方、国連人口基金(UNFPA)が発表した「世界人口白書2021」によると、世界の総人口は78億7500万人で今後も増え続けてこのまま行くと2030年までには85億人に達し、貧困の増加、食糧の不足が深刻化して紛争が頻発すると警鐘を鳴らしている。
しかしそれとは裏腹に、日本、韓国、スペイン、イタリアなど25ほどの先進国においてはすでに人口が減り始めている。巨大な人口を抱える中国、ブラジル、インドネシアですら出生率が下がり、あと数年で人口減少に転じるようだ。
サハラ以南のアフリカ諸国や中東の一部の国々では依然出生率が極めて高い水準にあるが、そうした国々でも若い女性への教育が普及し避妊や産児制限が広がると、人口は下降線をたどると予測される。
世界の人口トレンドは「ガイア理論」により中長期的には減少方向に進みつつある。先進国も必要な労働力を移民ではなくAIロボティクスの導入で補うことになるのだろうか。少ない人口でより多くの富を共有するイメージだ。
日本政府は出生率を上げることに躍起になっているが、時代に逆行していないだろうか?
「人口減少を受け入れて豊かな国を作る」、と新産業育成を公約で提唱する政党が1つぐらいあってもいい。

| 21.10.29

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