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共同富裕

習近平総書記は8月17日に開催された中国共産党中央財経委員会第10回会議で、「共同富裕」を新たなテーマとして打ち出し、「富裕層叩き」かと波紋を広げている。
それに対して素早い反応を見せたのが中国IT大手のテンセントだ。時価総額で中国トップの大企業だが、「共同富裕」発言の翌日、農村振興や低所得者の支援に500億元(約8500億円)を寄付すると発表。同社は今年4月にもSDGs支援として500億元の寄付を発表したばかりだ。わずか4か月の間に1000億元(約1兆7000億円)の拠出を決定したことになる。アリババグループも早速2025年までに同額の1000億元(約1兆7000億円)を拠出し協力すると発表した。
新興EC企業のピンドゥオドゥオも24日、農民支援に100億元(約1700億円)を寄付すると発表。大手スマートフォンメーカー・シャオミの創業者雷軍(レイ・ジュン)は、172億元(約2900億円)の株式を慈善機関に寄付したことを公表した。
「共同富裕」は1953年に建国の父、毛沢東主席が提唱したスローガンだ。78年から改革開放に着手したトウ小平が唱えた「先富論」も、最終的には「共同富裕」を見据えていたようだ。
富の再配分は国の安定に欠かせない。市場経済の導入による一次分配で生まれた格差を、本来なら税や社会福祉による再分配(二次分配)で是正するのが基本だが、中国では相続税、不動産資産に課税する物権税(固定資産税)が未整備というジレンマがある。
進まぬ改革に業を煮やした共産党政府は、その先の三次分配を「共同富裕」という概念と手法で一気に実現しようとしたのだろう。慈善活動を促すだけでなく、「高収入を合理的に調節し、違法収入を取り締まる」として富裕層を震え上がらせたのだ。
そんな中、面白いことに中国共産党幹部の間で、今の日本の姿は毛沢東が目指した理想の「社会主義国家」に近いのではないかとの考えが生まれているそうだ。少なくともそう感じる中国人が増えているのは事実だ。配給制度こそないけれど富の再配分がうまく行き、平等で弱者に優しい人権重視社会であるように見えるらしい。
自由主義諸国で「米国の51番目の州」と揶揄される日本は、安全保障を軸とした米国の傀儡政権自民党による一党独裁だと言えなくもない。
日本が参考にする?「明るい北朝鮮」と呼ばれるシンガポールも、リークワンユーファミリーによる一党独裁と言える。
そう考えると、共産党一党独裁の中国が日本を理想国家とするのも腑に落ちるから不思議だ。

| 21.09.10

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