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タンピン主義

7月1日、中国共産党結党100周年の記念行事が天安門広場で賑々しく行われた。1921年に第1回党大会が開かれたのは上海の辺鄙な住宅地だったが、今や立派な記念館が作られ中国の歴史が刻まれた偉大な場所となっている。
軍事指導者や帝国主義者らの手によって中国が「辱めを受けた」過去、20世紀初頭の「覚醒」、そして1949年に内戦に勝利して、蒋介石氏率いる国民党軍を台湾へと追いやった後の復活を遂げた中国の歴史を刻む場所である。
一方で、数百万人の死につながったとされる20世紀最大級の大きな動乱は無視されている。1958年から60年にかけての「大躍進政策」による飢饉、1966年から10年間にわたる「文化大革命」の混乱、1989年の天安門事件などだ。奇しくも7月1日は香港返還24周年記念日でもある。
一見成功しているように見える中国で、今流行っている言葉に「タンピン主義」というのがある。「だらっと寝そべる」という意味らしい。仕事をしないで寝そべって何も求めない、マンションや車もいらない。結婚もせず、消費もしないというライフスタイルだとか。
「タンピン」が有名になったきっかけは4月、「Baidu(百度)」のSNSサイトに「タンピン主義は正義だ」と書き込まれブレイクした。「自分はもう2年も働かないで遊んで暮らしているが間違っていないと思う。資本家に搾取された上に、人との比較や先人たちの伝統的な考え方によって圧力を受けている。しかし、自分は古代ギリシャの哲学者のように横たわって(タンピンして)ただ何もしないで過ごすことにする」というものだ。
「資本家に搾取される」ということばが中国共産党に対して使われている!毛沢東が1949年に新中国を建国したのは資本家の搾取をなくすことが目的だったとの記憶がある。
72年を経て、この世界で最も成功した?権威主義体制下の若者たちが、「資本家に搾取されタンピン主義でしか対抗できない」と公言しているのだ。鄧小平の「改革開放」以降、経済の右肩上がりが続いてきた中国で、彼の「先富論」が引き起こした負の側面だ。
中国政府は今年、製造業の深刻な技能労働者不足を認めている。都市部の少子高齢化と若者の「3K」離れが明らかに進んでいるのだ。
何もしないで「タンピン」する姿は、清朝末期にアヘンを吸って横たわり、現実逃避した市民の姿に重なる。植民地支配が共産党一党支配に代わっただけで、歴史は繰り返すのか?
今や世界の共産党の中で、イデオロギーに最も忠実で質実剛健なのが日本共産党だけ!とは皮肉なものだ。

| 21.07.02

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