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オウムアムア

2016年10月に地球上の複数の天文台によって、全長約400メートル幅約40メートルの葉巻形の小惑星が、太陽系外から超高速で飛来した“恒星間天体物”として確認された。この恒星間天体物の観測は宇宙観測史上初めてと認定、2017年にはハワイ語で「使者、偵察者」を意味する「オウムアムア(Oumuamua)」と名付けられて話題になった。
米ハーバード大の宇宙物理学者シュムエル・ビアリー(Shmuel Bialy)氏らは、最近の論文のプレプリント版の中で突飛な仮説と断りつつ、「オウムアムア」は「地球外文明によって地球近辺に意図的に送り込まれた探査機かもしれない」として議論を巻き起こした。
それと関連するかのようにトランプ前米大統領が昨年12月に署名した新型コロナウイルス対策法案の中に、国家情報長官室は180日以内にUFO(未確認飛行物体)についての全情報を網羅した報告書を米議会に提出するべきだという興味深い条項が入っていたのは記憶に新しい。
トランプ大統領ならではの突飛な?要請だが、狙いがあったようだ。提出期限が近づく6月25日、米国防総省と国家情報長官室は2007年に2,200万ドルの予算で設立された「先進的航空宇宙脅威識別プログラム(AATIP)」の存在と共に、未確認飛行物体の調査報告書を明らかにした。
それは2004年11月から21年3月の間に米軍パイロットが「説明できない物体」に遭遇した144件の事例を調査したもので、UFOが別世界からの訪問者の存在を示すものだと考える人々にとっては大いに興味をそそるものだった。しかしパイロットが目撃した物体が正確に何であったのかを高い信頼度で推論できた事例は、気象観測用バルーン1件だけだったそうだ。
だが、人々の想像力をさらにかき立てることになったのはトランプ大統領による宇宙軍の創設だ。今や米軍は5軍体制となり膨大な軍事予算を必要としている。2021年は人類の宇宙生命体との遭遇を予感させた年になるのだろうか。
今のところハワイ大学などの国際研究チームは、「オウムアムアは完全に天然起源の天体である」とする研究結果を発表、地球外文明由来の人工物説に反論している。
専門知識や権威がこれまでに無く疑問視され、UFOを巡る議論やCOVID-19の感染ルートの議論は今の人間の知識の限界を浮き彫りにしている。そんな中でも平凡な日常を超越する「何か」を信じたいという気持ちが人々の間に根強いことも事実だ。
イラクやアフガンで明らかになったように軍需産業の拡大のためには戦争をも厭わないアメリカの政治家にとって、「太陽系外文明から地球を守る!」というテーマは何にもまして魅力的であるようだ。

| 21.10.08

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