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洗わない

働き方が変化したせいか、手当たり次第に着た物を洗濯することへの疑問からか、「洗わない・あまり洗わない」という社会運動が英国で起きて注目されている。
2017年には既にファッション業界における持続可能性や社会進歩的な考え方を推進する英国発の非営利団体「ファッションレボリューション」が、家電メーカーAEGの協力で14人のデザイナーと共に「Don’t Overwash(洗いすぎないで)」というタグを衣類1万8200アイテムに付ける運動を開始していた。
このプロジェクトは現行の洗濯表示が時代遅れだと主張することに狙いがあったが、半世紀も前から付けられている衣類のタグ表示は、メーカーが洗濯によって衣類が傷む責任から逃れる方便にしかなっていないと指摘する。
ステラ・マッカートニーも以前から洗濯機の使用を避けるよう呼びかけ、「汚れは乾かしてブラシで落とせばいい」と主張している。またポリエステルやアクリルといった合成素材を使った大量生産の安いFast Fashionほど、環境への負荷が大きいという。「洗濯するたびに平均9億個ものマイクロファイバーが環境に流れ出す」ことを消費者は知った方がよさそうだ。
2016年創業の米国のスタートアップ「アンバウンド・メリノ(Unbound Merino)」は、数週間は洗濯不要で着ることができる“メリノウール”素材の服を作っている。また2018年創設の「パンゲア(Pangaia)」は海藻繊維からつくったTシャツを作っているが、これはペパーミントオイル加工によって洗いたてのフレッシュな感じが持続する優れものだ。一着85ドルと決して安くないが、メーカー試算ではコットンTシャツと比べライフサイクルで平均3000リットル(3トン)の節水につながるという。
洗濯機で使う水は家庭用水の約17%、換算すると衣類のライフサイクルを通して排出されるカーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)の4分の1に相当するとか。AEGの推定によれば、毎日洗濯している衣類の90%は洗濯機に入れなければならないほど汚れてはいないという。日本でも売れている汗臭さを防ぐリフレッシュスプレーは節水に非常に有効だ。
梅雨真っ只中の今、高温多湿なアジア諸国は生乾き臭に頭を痛める。特に日本人は世界から見ると異常なほど消臭・除菌・漂白に拘っており、「洗わない」という声は当然聞こえてこない。
「洗わない」というメッセージは日本のメーカーが世界に発信してこそインパクトがあるのだろう。

| 23.07.14

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