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さとり世代

1月13日に全国で成人式が行われた。かつては主催者である自治体に反抗する荒れた式典が多く見られたが、昨今はその手のニュースは全くなく “荒れない成人式”に戻ったようだ。鬱積する不満すら呑み込む「さとり世代」ともいうべき若者像がそこにある。
1987年から2003年生まれが現在16歳から32歳ぐらい、競争させないゆとり教育で育った世代だ。その完成された姿が今年から二十歳を迎え始めた「さとり世代」なのだろう。
日本経済が縮小し厭世的雰囲気の中で育てられた「さとり世代」の特徴は、総じて「欲がない」ことだ。
低欲望社会では、恋人を欲しがらない、車を欲しがらない、結婚しない、海外旅行に行かない、ましてや留学などしたくない、贅沢しない節約生活を良しとする。
従って人間関係もあまり広げたがらず、なによりも「安定」を望む徴候がある。2013年には、言葉としての「さとり世代」が新語・流行語大賞にノミネートされたぐらいだ。
「さとり世代」は、反面教師としてのゆとり教育の失敗をも身近に見てきている。そのため全ての欲から開放され”さとりの境地“に到達した高僧のように見えるが、よく見るとポジティブな側面も大いにある。これは面白い現象だ。
バブル世代の彼らの親たちは、「もっと稼ぎたい」、「こんな仕事をしたい」、「あんな生活をしたい」という気持ちがドライビングフォースになり、世界人口が激増する中、気がついたら温暖化が進む地球環境を作り出してしまったというところか。
ここ数年、日本の田舎のいたるところが「限界集落」となって、古くから人が住んできた村が捨てられつつある。これは日本だけでなく、世界中のあらゆる田舎から人々は都市に向かっている。
一方、進化し続けるビッグデータとAIによって構築されるグローバル世界は、そもそも人間を時間や労働から解放することを目指していたはずだ。しかし結果として「さとり世代」を生み出し、彼らは今手元にある物を大切にするサステイナブルな考えを強烈に支持している。環境活動家グレダ・トゥンベリがその代表だ。
「さとり世代」の目には、800万軒とも言われる日本の空き家も限界集落も宝の山に見えているかもしれない。「バブル世代」が残した廃棄物の中に、彼らは自然と共に豊かに生きる生活の場としての未来を見出しているのではないだろうか。
日本の現在の姿は、世界の国の未来だ。「さとり世代」こそが地球の救世主かもしれない。だとするとトランプは、もう少しグレダを大事にした方がいいだろう。

| 20.01.24

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