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読解力

大学入試改革が騒動になっている中、OECDが『PISA(加盟国の学習到達度調査)』という世界79の国と地域の私立・公立に通う15歳生徒の読解力や、数学、科学の学力調査の結果を公表した。
中国やアジア各国が台頭する一方で、米国と日本の凋落という傾向が見えた。
米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、PISAは国の未来における経済競争力のバロメーターであるとしてアメリカの惨憺たる結果を憂い、「アメリカの10代は他国に追いつけない状態で、アジア諸国の後塵を拝している。」と自国の将来を危惧するコラムを掲載している。( https://gratefulamericanfoundation.com/us-students/ )
日本は「読解力Readingsが15位」、「数学Mathematics が6位」、「科学Science が5位」だった。主要紙は「読解力」のランキング低下を「急落」と騒ぎ立てている。
PISAで言うところの「読解力」は、「論文中の真意を読み取り、それに対する自分の意見を理論的にまとめ、発表する力」だそうで、単なる「理解力」にとどまらない。
米紙「ワシントン・ポスト」は、「中国がPISAでナンバーワン!中国のスコアが信じられない理由」という記事を掲載し、過去の同調査でも中国は試験を受ける地域や人を選別していると伝えている。これは的外れのやっかみなのか?
高度教育の浸透は地域の経済力によって影響を受ける。中国は世界第2位の経済大国とはいえ一人当たりGDPは未だに低い。全国平均のテスト結果では先進国に対抗できないため、裕福な都市に絞って戦略的にPISAを受けさせている。
中国は、共産党一党独裁の下、指導者を全国から平等に生み出すつもりはない。最初から選ばれた人々を対象にエリート教育をしている国だ。
建前上すべての子供にチャンスが与えられる自由主義諸国がこれに対抗するのであれば、全国押し並べてレベルを上げる努力をするしかない。
またシンガポールやマカオ、香港といった都市国家も上位に位置し、人口が一億人を超える日本や米国がこうした裕福な小都市国家に平均値で勝つためには、更なる相当な努力が必要とされる。
そうしたハンディキャップを勘案すると、日本のランキングは健闘している方だと言えよう。しかし大学入試でも問題になっている「理論的に自分の考えを述べる力」が、世界の指導者にとって最も重要な能力であることに変わりはない。
世界の政治・経済・文化・技術の場では個人の指導力が意味を持つのであって、集団の平均値ではないからだ。
日本の政治家が世界の舞台で個人として優れているとは言い難い現象が日々見られる中、真剣に「読解力」を磨かないと我が国に将来はない。

| 19.12.13

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