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スピーク・ナウ

約5年ぶりとなるテイラー・スウィフトのコンサートが東京ドームで、2月7日から10日まで4日連続で行われた。翌11日のラスベガスでのスーパーボウル観戦を望む彼女の気持ちを知った在米日本大使館は、公式のX(旧ツイッター)に英語とスペイン語で「コンサートの夜に東京を発てばスーパーボウルに間に合うと自信を持って『スピーク・ナウ(曲名)』します」と粋な投稿をして反響を呼んだ。普段はお堅い大使館の異例の声明に関心が集まり、米メディアが「日本大使館はファンの不安を和らげようとしている」(CNN)と紹介、“いいね”が4万件を超えたそうだ。
今回のコンサートは昨年3月からの世界ツアー「The Eras Tour」の一環だ。今年の米グラミー賞で女性アーティストとして史上初4回目の最優秀アルバム賞に輝いた彼女の、受賞後初のコンサートが東京だったのだ。受賞作「ミッドナイツ」の収録曲や、人気曲「私たちは絶対にヨリを戻したりしない」など計45曲を歌い観客を沸かせた。
テイラー・スウィフトは1989年12月13日ペンシルベニア生まれの34歳。グラミー賞で最も栄誉ある「年間最優秀アルバム賞」を最年少(当時20歳)で受賞し、アルバム総売上枚数は1億4千万枚超え。タイム誌の「パーソン・オブ・ザ・イヤー 2023」にもバービーや英チャールズ国王を抑えて選ばれている。「現在地球上で、彼女以上に人々を感動させる人物はいない」というのが選出理由だ。
同誌は、外交にも影響を与える米国の「ソフトパワー」の権化とまで讃えている。インスタグラムのフォロワー数は2億8,000万人を超え、あのドナルド・トランプも自身のSNSで「バイデンを支持しないで」とメッセージを送ったほどだ。女性の権利を擁護して白人至上主義に反対し、またLGBTQコミュニティの権利擁護も掲げている。歌手であって、政治に関心が薄い浮動票への最も強いインフルエンサーなのだ。
彼女の音楽のルーツは意外にもカントリー・ミュージック。米国の西部開拓時代から続く草の根のアメリカ開拓魂を揺さぶり、今はその枠を飛び出してさまざまな音楽ジャンルのエッセンスを取り入れた楽曲を発表している。原盤権をめぐる著作権の戦いを曲名にするなど、変化を恐れず私生活をもさらけ出す、現代のアメリカを代表するアーティストだと言える。
日本は政治を諦めている有権者が5割を超える浮動票の国だ。テイラー・スウィフトの日本での人気は「スピーク・ナウ」する日本人アーティストが見当たらないからかも知れない。

| 24.03.01

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