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ミス日本

一般社団法人「ミス日本協会(Miss Japan Association)」主催で毎年開催される「ミス日本(Miss Nippon)コンテスト」は、現存する日本のミスコンで最も長い歴史を持つ。1950年に始まり、途中中断を経て1967年に美容研究団体の和田研究所によって復活している。「日本らしい美しさ」を掲げて「将来日本に活力をもたらすような人物が輩出されることを願い、選抜や育成を行う」としている。
1月22日の「第56回ミス日本コンテスト」で、両親がウクライナ人の椎野カロリーナさんがグランプリに選ばれた。在日20年を超えるものの、2年前に帰化したばかりでグランプリに輝いたことがマスコミを賑わすことになる。「日本の美を象徴するのは今やウクライナ生まれのモデルなのか」と、コンテスト審査員らの判断に対し、日本人の文化的アイデンティティを巡って議論を巻き起こしているのだ。
(社)ミス日本協会の公式サイトでは「ミス日本の美しさとは見た目の容姿だけでなく、心の持ちようや社交性など幅広い人間性が問われる」と記され、日本国内において完結するものとして世界4大ミスコンの日本代表選出とは一線を画している。
コロナ禍直前の2019年、在留外国人は293万人(法務省出入国管理庁)、訪日外国人は3188万人(日本政府観光局)を記録している。コロナ禍で訪日外国人数は激減したが、2021年6月時点の在留外国人は約282万人とわずか4%の減少に止まった。そして日本人出生数が減少する中、2020年の外国人出生数は過去最高の1万8797人を記録している。英語圏や中国語圏、更には韓国、ベトナム、ネパール、インドネシアなど多国籍化し多言語化している。OECD調べでは、今や日本は世界第4位の移民大国なのだ。
大半の人が思う日本人像とはいつ作られたものなのだろうか。17世紀の初めから1854年の日米和親条約締結までの約210年間の鎖国時代に熟成した江戸の町民文化はその一つだろう。今回のミス日本グランプリに違和感を持った人は、江戸時代に醸成された古い日本人のイメージに拘り、世界第4位の移民大国となった現在の日本を直視していない。2018年に米調査機関ピュー・リサーチ・センターが実施した調査では、実際に移民が国を強くするとの見方を示した日本人は回答者の59%にも上っていたそうだ。
椎野カロリーナ問題は日本人の意識を短期間に国際化する好機である。その意味で今回(社)ミス日本協会は日本人の将来を拓く素晴らしい仕事をしたと言えよう。

| 24.02.02

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