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ローソン

2月6日、KDDIはTOBをかけてローソンの株式を入手し、現大株主の三菱商事と50%ずつ保有する「共同経営」体制へ移行すると発表した。KDDIにとって過去最大規模のM&Aであるが、高橋誠社長が言う投資理由「時代の変革期なので、思い切った投資を決断した」だけでは説得力に乏しく、翌日KDDIの株価は大きく値を下げた。
それまで2%の株主だったKDDIが突如5000億円を投じて50%の株主になる理由は何か?その背景は明快に示されず、単に利益剰余金が約5.4兆円にまで積み上っていたからではないかと揶揄する声もあった。ローソンの23年度純利益は500億円で、コンビニ事業への純投資なのかと疑う向きも・・・競合の通信キャリアからも「驚いている」(ソフトバンク宮川潤一社長)との声が上がっている。
ローソンは当時の親会社ダイエーが、米国ローソンミルク社のFCで1975年に大阪府豊中市に開店した「桜塚店」が1号店だ。日本のコンビニは1970年代初頭に、大手小売業のドミナント戦略で地域に密着する形で出店を競い合い発展してきた。しかし業界の規模が5兆円を超える頃から激しいエリア競合による疲弊から統合の時代に入り、「セブンイレブン」「ファミリーマート」「ローソン」の3社に集約されて来た経緯がある。
売上利益で他の2社を大きく引き離す最大手セブンイレブンだが、日本国内の店舗数は2020年2月の約22,500店をピークに伸び悩んでいる。一方海外店舗数は若い成長市場に支えられて国内の約2倍の50,000店に達した。ファミリーマートは2021年1月に国内16,658店 海外8,316店、ローソンは国内14,524店 海外3,586店で、2社は純利益でセブンイレブンに4倍以上もの大差をつけられているのだ。
人口減少に入った日本は小売業としてのコンビニ事業に将来性があるとは言えない。片や通信業としてのKDDIはau携帯のシェアが現在27%である。ローソンを訪れる顧客の4人に1人はauユーザーだとも言える。auユーザーのエリア動向というビッグデータを近隣ローソンに提供し、auペイでポイント5%還元を実現できれば、顧客の囲い込みでKDDIにもメリットがある。DXによるau経済圏の構築には未知なる可能性が広がるだろう。
丸の内に本社を構える三菱商事と大手町のKDDI。その2社が派遣する役員に、泥くさく地を這いつくばるドミナント戦略で勝ち抜ける人材は残念ながら期待できない。「AI決済機能」に優れる第3のパートナーが必要だ。いずれにしても漁夫の利を得たのは三菱商事だろう。

| 24.02.16

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