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プライベートブラウジング

昨年1月、Googleがブラウザ上のユーザー閲覧履歴を追跡するサードパーティクッキーの使用を段階的に禁止すると発表し、そのことがじわじわと波紋を呼んでいる。
ウェブ閲覧をより安全にする措置だというが、Googleのウェブ広告は長年に亘ってクッキー(Cookie)に依存してきた訳で、ビジネスモデルを根底からひっくり返す発表は驚きだ。
サードパーティクッキーは訪問しているサイトのドメインが発行するファーストパーティクッキーとは異なり、複数のサイトにまたがって訪問者の履歴を収集する。そのため一歩間違えればユーザーのプライバシー侵害にも繋がりかねない。
クッキー技術を開発したのは米国のIT業界で90年代に大活躍したルー・モントゥリ(Lou Montulli)だ。MITの「Innovators under 35」にも選ばれた人物で、1994年にネットスケープ社のエンジニアとなり商用ウェブアプリケーションの開発で一世を風靡した。
開発当初のモチベーションは単純で、ネットスケープのウェブサイトを訪れたユーザー情報を分析することでユーザビリティを向上させて好みに合った広告を配信するためだった。しかしその後Googleや複数の広告モデルを持つブラウザが登場するに至り、サイトをまたいで履歴情報を取得分析するサードパーティクッキーが登場した。
ChromeやSafariといったブラウザではAIが介在し、何気なく読むニュースやショッピング情報も気がつくとユーザー好みにカスタマイズされている。広告には全て個別のバイアスがかかり、ユーザーは次第にAIに誘導されることになる。
「ウェブ広告が鬱陶しい」とか「勝手に閲覧履歴を追跡されているようで不快だ」という意見をよく聞くようになったが、サードパーティクッキーのやり過ぎが原因だ。
最近はDuckDuckGo や Braveと呼ばれるプライベートブラウザの評判が高い。
プライベートブラウザはプライバシーモードと呼ばれるブラウジングセッションでウェブ履歴を保存しない。ユーザーの独立性を守りながら好みを分析するという優れものだ。
プライベートブラウザはネットショッピング時のリコメンデーションが弱いという欠点はあるものの、ユーザーには概ね好評らしい。
AIをポジティブに受け止めAIに管理される方が楽だという中国のユーザーがいる一方、AIからの解放を求めるユーザーも多い。世界のネットシーンはユーザビリティを選択するフェーズに入ってきているのだ。
それにしてもいくらワクチン接種が急がれるといっても、セキュリティ機能を飛ばしてリテラシーのない老人にネット予約を強要する日本国政府、その恐るべきネット後進性が露呈した。
遅れているだけでなく悪びれることもないところが恐ろしい。

| 21.05.21

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