trendseye

蜘蛛の糸

総務省統計局が発表した3月1日現在の日本の総人口は1億2342万人だそうだ。前年同月比58万3千人(0.48%)の減少ということだが、その内訳は日本国籍を持つ人が93万7千人減少し、外国人居住者(国内滞在期間が3か月を超える外国人を含む)が35万4千人増え、その結果少子高齢化が進む中で人口減少は58万3千人に止まったという事のようだ。

外国人居住者は377万人と過去最高らしいが、総人口に占める割合は未だ約3%だ。移民大国英国(約14%)やアメリカ(約15%)、ドイツ(約20%)に比べるとまだまだ低い。にも拘わらず最近「日本人ファースト」が多くの支持を集めるのは何故なのだろうか?

フランスの社会学者スビ・トマは「移民に一番厳しいのは、実は移民出身の政治家たちだ」と語っている。例えばサルコジ元フランス大統領はハンガリー出身の移民2世だが、「新たにフランス国籍を取得した者が罪を犯した場合、その国籍を剥奪する」という法律を通し、「滞在許可書なしで居留する外国人の国外追放目標数を掲げ、それを厳格に達成する」と非常に厳しい移民政策を推進した。またオランド大統領の社会党政権下で移民問題を担当したマニュエル・ヴァルス内相は自身も移民で、20歳でフランス国籍を取得した苦労人だ。しかし2012年に彼が国外退去させた不法移民の数は過去最高の3万8200人と言われ、その内の2万7千人は強制退去させているのだ。

彼らの行動は、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の小説に似たところがある。お釈迦さまは地獄におちたカンダタを見て、彼がかつて積んだ一つの徳に免じて救ってやろうと地獄に一本の蜘蛛の糸を垂らす。カンダタは必死に糸をつかみ極楽に上ろうとするが、すがってくる他の亡者たちを振り払おうとしたことでお釈迦さまの逆鱗に触れ、糸は切られ再び地獄に落ちてしまうという話だ。

ユーラシア大陸の東の端に位置する日本列島や、アメリカ大陸のように住む人がごく少数だった新大陸に於いては、国民は一部の先住民を除いてほぼ移民ルーツだと言ってもいい。日本人の祖先については「三系統説」が有力だ。縄文人(先住民)、弥生人(大陸からの移住者)、古墳人(東アジア系で朝鮮半島からの移住者)により構成されている。現代の発達したDNA鑑定によると、現代日本人には古墳人の血が25%以上入っていると言われる。

世界的には低い移民比率3%でも外国人居住者の増加が気になるのは、「蜘蛛の糸」ではないが、日本が実は移民大国であることを証明しているということだろう。

| 25.08.29

RECENT ENTRYS

CATEGORY

  • BOOM
  • FOOD&RESTAURANT
  • LIVING&INTERIOR
  • SCIENCE&TECH
  • TRAVEL
  • TREND SPACE

ARCHIVES


1990年9月~2006年7月までの
TRENDS EYEの閲覧をご希望の方は
こちらへお問い合わせください。
ART BOX CORP.