みなしメイド・イン・USA
トランプ大統領の無茶振り関税交渉により世界各国は貿易戦略でパニックに陥っている。特に米中間では100%を超える追加関税の掛け合いで貿易戦争の様相を呈している。しかし、つい最近アメリカは中国から輸入するApple製品を追加関税から除外すると発表した。この例外的措置の裏にトランプ大統領の目指す関税交渉の落とし処が隠れているのではないだろうか。
iPhoneの背面には「Designed by Apple in California. Assembled in China」とある。この表記はモノ作りの巧みな「メイド・イン・USA」化なのだ。その本当の意味の理解が日本の関税交渉のポイントになりそうだ。
Apple製品はアメリカに膨大なデジタルサービス収入をもたらしている。アメリカは貿易(モノ)収支の赤字解消を各国に要請する裏で、デジタルサービス(ソフト)収支の膨大な黒字に関しては声を潜めている。
少し古い話だが、1959年にマテル社から発売されて世界的ヒットとなったバービー人形は、共同創業者のルース・ハンドラーが当時その高い技術力に比べて人件費が安かった日本での製造を思いつき、“日本製”のバービー人形をアメリカはじめ世界中で売りまくることで大きな収益を上げた。今でいうところの「Designed by Matel in USA. Assembled in Japan」という発想だ。アメリカが「メイド・イン・USA」を利益のために放棄した初期の事例だ。
1970年以降日本のモノづくりの中心は玩具や繊維から自動車にシフトし、商品企画やデザインも次第に日本独自のものとなっていく。並行して日米貿易摩擦を生み出してきたと言える。品質が良くメンテナンスフリーの日本車が、アメリカの利益のためではなく日本企業発の独自商品としてアメリカ市場を席巻することになったのだ。
今や車の価値はデジタルサービスにあると言っても過言ではない。車のハードウェア自体は安い国で作ればいいが、それに載せるOSとコネクティッドなシステムが車の価値を生むからだ。StarlinkやGAFAMのクラウドサービスがなければ、車も動かなければドローンで戦争も出来ない時代だ。
ここに日米合作の大いなる可能性が潜んでいる。トランプ大統領が日本を最初の関税交渉国に選んだのは、アメリカという世界最大の消費マーケットで商売をしたければ、日米合作で「みなしメイド・イン・USA」の雛形を作って欲しい、という願望が込められているのかも知れない。
| 25.04.25