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大阪万博50年

日本は1968年にGDPで世界第2位に上り詰め、その勢いで1970年に「人類の進歩と調和」をテーマに国の総力を挙げて大阪万博を開催し大成功に導いた。そして想像だにしなかった6420万人以上を動員し、世界の万博史上初めて事業収益をあげている。
それから半世紀、コロナ禍をなんとか乗り切った大阪は、再び2025年の大阪・関西万博を目指している。日本経済がダウントレンドの中「いのち輝く未来世界のデザイン」という今回のテーマはインパクトが無く、博覧会協会の来場者数目標も2820万人と前回の半分である。この半世紀に世界人口が80億人と倍増していることを考えると、実質4分の1の動員に止まる。そこへ来て資材高騰に会場である夢洲の地理的「悪条件」も加わり、参加153カ国地域のパビリオンのほとんどが未だに未着工という異常事態を招いている。
1970年の大阪万博は、モダニズムの巨匠・建築家の丹下健三をプロデューサーに指名し「人類の進歩と調和」という時代を俯瞰したテーマを設定した。そこに岡本太郎の太陽の塔の提案が保守的な政府の姿勢を打ち破り、技術文明の進歩を示すだけでなく、進歩が同時に自然や人間性を損ない様々なひずみをもたらすことを示した。更にはこの問題をどう解決して「調和」のある「進歩」を実現するかが重要だと問いただして割り込んできたのだ。
残念ながら2025年の大阪・関西万博は、プロデューサーの問題意識の提起(=テーマ)とメッセージ性に欠け、発信力が足りない。世界博覧会の成否は開催国の政治・経済の状況にも左右されるが、全人類が直面する困難に対する洞察力と問題解決へのリーダーシップが問われているのだが・・・
未だにゼネコンを利用した金のばらまきを繰り返しているのでは、先進国の地位を失う可能性が高い。この10年間に一人当たりGDPで英独仏に抜かれ、つい最近はイタリアにも抜かれ、いまや日本はG7の最下位だ。その間にアメリカの一人当たりGDPは日本の2.1倍(8万9546ドル)になっているのだ。
アベノミクス・異次元金融緩和が何ももたらさなかったことがこれほどはっきりしていても、まだ同じことをやり続けるのだろうか?これでは万博はその使命を終えた「オワコン」同然だ。
世界に恥を晒す前に、隈研吾の「負ける建築」的なアンチテーゼでも下敷きに、ネット社会が進化して情報も技術も瞬時に共有できる世の中で、物理的建設工事のいらない「AR/VR万博」を提唱してみてはどうだろう。

| 23.10.13

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