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ムーンショット計画

新年2023年は、戦争と感染症、そしてインフレを恐れる不安定な世界経済のもとで迎えた。そのような中では、総務省が停滞する日本経済に喝を入れる策として2018年に発表した「ムーンショット計画」なるものを覚えている人は少ないだろう。しかしその内容は意外とアグレッシブで新時代を切り開くヒントになりそうだ。
まず2030年までに「急進的イノベーションで少子高齢化時代を切り拓き、100歳まで健康不安なく人生を楽しめる社会を実現する」ことを目標に、「1つのタスクに対して1人で10体以上のアバターを超高速・高精度で操作できる技術を開発し、その運用に必要な基盤を構築する」としている。更には2050年までに「望む人の身体的能力、認知能力及び知覚能力をトップレベルまで拡張させ、新しい生活様式を普及させる」と謳っている。
政府の施策で国民が実生活でアバター(身代わり)を使うことを想定し、しかもそれらをコントロールする超高速ネットワークの構築を目指すと言うのは画期的かつ具体的な目標設定だ。その先の未来には、先月公開されたジェームズ・キャメロンの「アバター2」のような世界が待っていると言わんばかりだ。
「ムーンショット計画」の名は、Appleの元CEOであるジョン・スカリーの2016年の著書「ムーンショット」から来ている。ケネディ大統領が1961年に提唱した月面着陸プロジェクト(アポロ計画)のように、スカリー氏が言うところの「将来を描く、斬新で困難だが実現によって大きなインパクトがもたらされる壮大な目標と挑戦」に倣っている。
ところで近年米軍のUFOに関する機密資料が相次いで開示され、“宇宙人探し” が活況を挺している。兵庫県立大学 西はりま天文台の天文学者鳴沢真也研究員を中心とした「地球外知的生命体探査(SETI)」もその一つだ。
膨大な数の星が存在するこの広大な宇宙の中に、高度文明を持つ生命体は「いて当然」と彼は語る。ただし「高度文明を持つ異星人がこの広い宇宙を乗り物に乗って地球へ飛来することはない」、知性をデータ化して転送してくるのではないかと。まずは「UFO=宇宙(異星)人の乗り物」という考えはやめるべきだと提言している。英国ノッティンガム大学の研究チームも「超高速通信技術を獲得した知的生命体による文明は、天の川銀河だけでも36以上はある」と言う。
宇宙の知的生命は肉体から解放され、知的データとして送り込まれ、寄生先のアバターの中で生き続けるのだろうか。
まるでサントリーの缶コーヒーのCMのようだ。

| 23.01.06

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