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コ・イ・ヌール

英国王室が国王チャールズ3世の戴冠式を来年5月6日に執り行うと発表した。戴冠式でカミラ王妃が着用すると噂される王冠の由来がさっそく話題になっているそうだ。王妃の王冠にはかつて世界最大といわれたインド産のダイヤ「コ・イ・ヌール(Koh-i-Noor)」がリセットされることになっているからだ。
「コ・イ・ヌール」とは、12世紀頃インドで発掘されたといわれる当時世界最大のダイヤは「コ・イ・ヌール」、ヒンズー語で”光の山”を意味する。歴代のムガル帝国の皇帝をはじめイランやアフガニスタンの王族が所有していたこともある「支配の象徴」とされてきたものだ。19世紀に南アフリカがダイヤ産出地の中心になるまで、インドは世界一のダイヤ産出国でもあった。
ヴィクトリア女王(1837-1901)の時代に植民地化が進んだインドは、1877年遂に英国領インド帝国となり、女王は初代インド皇帝となる。そして「コ・イ・ヌール 」も英国東インド会社を通じて皇帝ヴィクトリアに献上されたのだ。
ヴィクトリア女王が逝去しエドワード7世が王位に就いた1901年、「コ・イ・ヌール 」はその妻アレクサンドラの王冠にリセットされて戴冠式でお披露目された。その後は歴代の王妃の王冠にリセットされるのがしきたりとなり、現在はエリザベス皇太后の王冠の宝石としてロンドン塔に展示されているそうだ。
インドのムルム大統領はエリザベス2世の逝去に際し、「70年にわたる在位の間、1947年に独立したインドと英国の関係は大きく発展し強化された」と称えた。しかしインド国内のTwitterでは「コ・イ・ヌール」がトレンド入りし、「インドから略奪された」「早く返還を」との声が高まっている。
このダイヤをめぐっては1947年の独立時からインドとパキスタンがたびたび返還を求めてきたが、英国政府は後ろ向きだった。2010年に返還について問われた当時のキャメロン首相は、「一つのものに応じれば、大英博物館は空っぽになるだろう」と答えている。今回の戴冠式で「コ・イ・ヌール」を巡る問題が再燃する恐れがあり、「政治的緊張感も大幅に高まっている」と報道される。
その渦中、なんと英国憲政史上初のインド系宰相が誕生した。当然インド国民はリシ・スナク首相誕生に歓喜し、インド最大の英字紙タイムズ・オブ・インディアは「誇り高きヒンズー教徒がイギリスの新首相に就任」と報じた。
果たして今「コ・イ・ヌール」の返還をインドから正式に要請されたら、スナク首相は何と答えるだろう?そして、カミラ王妃はどうする?

| 22.11.04

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