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祖国脱出

中国共産党第20回党大会で異例の3期目就任を狙う習近平総書記だが、中国ではゼロコロナ政策などへの不信感から、その先のリスク回避のために「祖国脱出」を考える人が増えているらしい。こうした国外脱出を政治的難民と一緒には語れないが、反体制的な気持ちを背景に、息が詰まる祖国の現状を見限って新天地を求めているのは明らかだ。
中国4000年の歴史を振り返ると、新しい王朝が国を統一拡大する過程で小国は周辺へ追いやられ、その一部は国外へ移住(脱出)することを繰り返してきた。それが世界最大の移民「華僑」となり、世界中に中国人の存在感を示してきたとも言える。
祖国の政治経済的現状を肯定できず国外移住を考えるのはどの国でも同じだ。米レミトリー社がグーグルの中国以外での検索結果を基に、人気の移住先をはじき出した調査結果を発表している。調査対象になった101か国のうち30か国が希望移住先1位に挙げたのはカナダだった。2位は日本、3位はスペイン、4位ドイツ、5位カタールと続く。
この調査はグーグルの協力で2020年度に出されたレポートなので、グーグル検索が利用できない中国は当然調査対象に含まれていない。しかし中国の動画サイト「西瓜視頻」が、この結果は中国人の人気移住先とほぼ一緒だと認めているそうだ。
日本が世界の移住希望者にとって2位の人気国というのは、当の日本人には実感がわかないかもしれない。出入国在留管理庁のデータによると、正式に日本に在留する中国人の場合、2012年の65万人から2019年には81万人に増加、その後はコロナで減ったものの確実に増えてきているそうだ。
留学生も手続きを踏むことで日本の国民皆保険の恩恵に浴することができる。社会保険が未整備の国から見たら垂涎の的だ。日本語学校への留学は移民への第一ステップなのだ。昨今は円安傾向が追い風となり、注目度はうなぎ登りだとか。レミトリー社のレポートに中国を加えると、世界ではカナダと日本が移民先人気国の双璧になっていることが分かる。
日本は数千年前から、アメリカのように移民(渡来人)が帰化して作り上げてきた国だ。今後「祖国脱出」組が日本に帰化し、角界、芸能界、スポーツ選手、実業家や政治家・役人となって新しい日本を創っても不思議ではない。
日本は日本人が気付かないうちに、「祖国脱出」してきた新日本人が活躍する人気移住国なのだ。

| 22.09.09

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