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デブ幻想

世界保健機関は体格指数(BMI=体重kg÷身長mの2乗)が18.5未満を(痩せ)、18.5から30を(適正)、30以上を(肥満)としている。一方日本肥満学会は25以上を(肥満)としている。その結果日本では世界平均で見て(適正)であっても、自分が(肥満)と感じる「デブ幻想」を持つ人が多い。
厚生労働省の2017年「国民健康・栄養調査」では、20代女性の5人に1人が痩せすぎという結果が出た。自分はデブだという「デブ幻想」に取り憑かれ、しなくてもよいダイエットに走る結果だろう。同調査によると現代日本の20代女性の平均摂取カロリーは、終戦直後よりも低いのだとか…
世界的にファッションショーで痩せすぎのモデルを使うことへの批判が高まる中、セクシー路線まっしぐらだった下着メーカー、ヴィクトリアズ・シークレットのマネキンが最近ふっくらしてきた。
寝室では悪戯でセクシーな女性にという男性の願望?から1977年に生まれたブランドは、1982年小売業界の億万長者、リミテッドのレスリー・ウェクスナーに買収され、セクシー路線がさらに強まっていた。
しかしユーロモニター・インターナショナル社の最近の市場調査によると、アメリカの女性下着市場におけるヴィクトリアズ・シークレットのシェアは、2016年の34%から2018年は25%へと下落。2020年にはニューヨーク・タイムズ紙に、性差別、体型差別、年齢差別を含む女性蔑視、いじめ、ハラスメントが蔓延する企業文化を報道されていた。そうした厳しい批判を受け、ふっくらマネキンやモデルの採用でイメージ回復を狙ったようだ。
一方ナイキは2019年からプラスサイズモデルのマネキンをロンドンの店舗に導入、世界最大級のECストアでの「ナイキ」「プラスサイズ」の検索が387%増加という驚くべき数字をたたき出した。ありのままの自分のカラダを受け入れようという「ボディポジティブ」のムーブメントが背景にある。
アディダスも今年2月、新たなブランドアンバサダーとして渡辺直美を起用、キャンペーンに合わせて女性の多様なニーズに応える新商品を順次販売する予定だ。
日本の肥満学会は統計的に最も病気になりにくい体重(標準体重)をBMI22とし、これが「デブ幻想」を作り出してきた。世界標準から乖離したこの数字で、どれだけ美容医療業界を潤わせ不必要な医薬品の市場規模を上げてきたことか!?
日本人は、そろそろ気がついてもよいのではないだろうか。

| 22.09.16

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